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メキシコ生活記録③ ー週末のお買い物

まだ買うための勇気が貯まらない大きすぎるスイカ

 生活記録と言いながら、これまでの記事は私の心情報告ばかりだったので、今回はちょっとそれっぽい感じのことをだらだら書いていこう。

 メキシコには、お金さえ支払えば運転免許が取得できる所もあるそうだが、私たちの住む街は幸か不幸か、がっつり試験(筆記と実技)がある。夫はこれをクリアして車に乗っている。が、彼は車通勤なので、日中の私たちには自転車しか足がない。それはつまり、週末にしか買い物に行けないということを意味する。私たちはやや郊外に住んでいるので、自転車で行ける距離にスーパーマーケットもショッピングモールもないのだ。
 この週末爆買いシステムは、ちょっと楽しい。日本にいるときは平日も自由に動けたので、買いだめをする習慣が私にはなかったから。ただ、ちょっとリスキーでもある。なぜなら、平日に自分で買い足しに行くことができないからだ。だから「買いだめ」がするりと「爆買い」になってしまう。そして、家から車でほど近いところに、なんとコストコがあるのだ。
 こちらの食材で驚いたのが、肉だ。スーパーマーケットで売られている肉類は、ラインナップこそ牛、豚、鶏と日本と変わらないが、においが強い。何というか、肉のにおいがすごくする。傷んでいるとかではないし、くさいというわけでもない。強い。日本のお肉はどうしてあんなに無臭なの?でもね、コストコのお肉はわりとにおわない。鶏肉以外。
 それから、肉といえば骨付きが多い。日本で「骨付き」と言うとあえて骨を付けて売るスタイルですよっていう響きがあるけど、そうじゃない。「肉なんだから骨くらい付いてるでしょ」っていう「骨付き」。強いよね。メキシコの肉は強い。お肉じゃない。肉。だから、私にも手なずけられそうな肉を扱うコストコに行きたくなってしまう。だって、1週間ずっと強面の肉を相手にしたくないじゃない。
 それに、私はコストコがもともと大好き。魚介類も冷凍の方が安心な気がするし、コストコはユーザーが多いから、ネットであらかじめおすすめ商品を探しておくこともできる。それで、この週末、リサーチ済の冷凍小籠包をさっそくコストコへ買いに行った。

噂の小籠包

 「あった!これこれ!」と私は意気揚々と件の小籠包をカートに入れた。コストコの商品はいつもあるとは限らないので、出会えてうれしかったのだ。すると、隣にいたメキシコ人がおもむろに小籠包を手に取り、じっと裏面を読み込んでいる。そうだよね。分かる。私だってイタリア人がテンション高めにカートインしてる冷凍パスタがあったら買おうかなって思うもん。たとえそれが見たことのない謎パスタでも。結局メキシコ人の彼は、小籠包をお買い上げされた。「私らも今日初めて買うから、おいしいかどうか知らないよ」っていうやさしい目線を彼の背中に送った。(帰って食べてみたらリピート確定レベルでおいしかったので、ひと安心した。)

 週末爆買いのデメリットといえば、もう1つある。それは、家族で一緒に買い物するしかないことだ。今はまだ平日動けないので、私個人の化粧品や服を1人でささっと買いに行くことができない。何を買うにも家族と一緒に週末のショッピングモールへ行かなければならないので、各メンバーの見たいものが違う時も、互いに付き合わなければならない。私や夫、13歳の1号はまだ合わせられる。だが、9歳の2号を興味のない店に入れると、5分ともたずになぜだか疲労困憊してしまう(本人曰く「5分はもつ」そう)。日本にいるときには、この癖を克服すべくトレーニングを重ねていたのだが、異国に来てすぐの今は少し甘やかしてあげたい。となると、ゆっくり服や雑貨を見る時間を自制しなければならなくて、私はけっこう焦ってしまう。
 この週末も、私はどうしてもヘアオイルが欲しかった。こちらが硬水なのもあって、もともとパサつきがちな髪がパサつき放題になってきている。日本から持参したオイルが底をつく前に何とかこちらでも見つけたい。すると、ショッピングモールの通路に屋台的な?露店的な?感じて出店しているヘアアイロンのお店の店員がオイルの試供をすすめてきた。付けてみると悪くない。1号も「いい女の香りがする」と言う。これはいいかも、と思って足を止めると、ここへ座ってと促された。座ってみると、女性店員がストレートアイロンをかけてくれ、左半分の髪がサラサラになった。これいいかも、いいよね、と1号とキャッキャ話していると、すでに魂が抜けてうずくまっている2号が目に入った。もうダメか。私はとにかくヘアオイルだけ買ってしまおうと思って店員さんに「これください」と、オイルの瓶を持ってジェスチャーした。
 ここメキシコはほとんど英語が通じない。英語が話せる人は「すごいね」って感じらしい。なので、露店の店員さんはずっとスペイン語で接客してくれている。「I will take this one」も分からない様子で、私のジェスチャーにも困り顔をしている。私は私で、一緒にシャンプー・リンスもすすめてきた彼女に、とにかくこのヘアオイルだけが欲しいんだと早急に伝えたい。すると、彼女は携帯のグーグル翻訳を出してきた。以下、彼女とのやり取り。

私「このヘアオイルだけが欲しいのですが」
店員「これは売れません」
私(やっぱりシャンプーとセットじゃないとダメなのかな…)
店員「これはサンプルです」
私「ん?」
店員「新しいものを用意したいのですが、それでもいいですか?」

いいに決まってるよね。残り1/10くらいになってるヘアオイルを誰が600ペソも出して買うと思ってんの。つまり、彼女は私がサンプルをよこせと言っていると思って困っていたのだ。どんなクレーマーだよ。彼女は「I will take this one」くらい分かっていた。分かったうえで、分かっていなかったわけ。確かに「this one」は何をさしていますか、と問われれば答えは「このサンプル」だ。私が「Do you have a new one?」って付け加えればよかったんだろうけど、そんなん言わんでも分かると思うやん?コミュニケーションっておもしろいよね。
 こんなふうにメキシコ人の店員さんたちは基本、みんな親切。サンプルを売ってあげられなくてごめんなさいってなっちゃうほど親切。だからこそいつもたくさんのスペイン語で対応してくれるんだけど、1歳児レベルのスペイン語しか分からない私は、それでよけいに混乱してしまう。彼らの親切に笑顔で応えられるようになりたい。少なくとも、サンプルよこせクレーマーじゃないことくらいはスペイン語で伝えられるようになりたい。そんな週末のお買い物だった。

追記:
 やっと見つけた子供用の不織布マスクを2号に装着させたら小さすぎて、男塾の卍丸みたいになっていることも重要な生活記録として報告しておきます。メリダで卍丸を見かけたらそれはうちの2号です。

参考資料


 



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