『背高泡立草』古川真人【読書感想文】

「納屋の草は刈らねばならない」

あらすじ

 大村奈美の実家であり、敬子が暮らす長崎にある納屋。その納屋の草刈りに、親族らで向かうこととなる。奈美は敬子や伯父の話を聞き、吉川家と納屋が過ごした時間と人の話を知る。草木で堆くなった納屋を軸に過去と未来に想いを馳せるーー。

感想

 今年の芥川賞作品。一気に読みました。 正直な感想は「うーん、なるほど」です。福岡と長崎の方言が、各時代の方言の書き分けはなかなか細かく表現されていて、丁寧でした。(長崎出身の方には少し物足りないかもです) さらに、九州出身でない方はちょっと読みづらいかなと思います。
 内容は、同じ小説ながら全く別の小説を読まされているかのような感覚。恐らく構成が「草刈り時間軸」と「過去時間軸」が交互に章立てされていて時代が飛ぶせいもあってだと思います。
 「納屋」を起点に物語を展開させていく発想は非凡な印象でした。 そして、1番印象的だったのは、語られる人称視点が一見、謎なんですよね。読んでいくと「あ、ヒトじゃないのかな?」と気付きましたが、それもまた面白かったです。 月並みな考察かもしれませんが、「草刈り」は隠喩でその行為が結局、その時代や人々の物語を思い起こす作業として表現してあるのではないかと考えました。 

与太話

 古典以外の小説を久しぶりに読みましたが、面白いですね。ありふれているようで、その中にもやはり発見はアリ。 近年の芥川賞だと、村田沙耶香氏の「コンビニ人間」にものすごく感動した覚えがあります。 次回の芥川賞作品も楽しみですね。


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