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クロッキー小説

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テーマと時間を決めて、即興で書く小説。書いて出しなので誤字脱字ストーリーの破綻はしょっちゅうです。ご了承ください。
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記事一覧

【クロッキー小説#2】朔

【クロッキー小説#2】朔

本文

 そこにいるはずだ。俺の声が聞こえるはずだ。それなのにどうしてだ。どうして。
 痛い。痛い。いたい。

 俺が他の”普通”の奴らとどうやら少し違うらしいと気が付いたのは、4つか5つの時だったと思う。蔵の隅でうずくまっている小さな女の子を見つけた。歳の頃は俺と同じだったと思う。声をかけると驚いた顔をした。どうして私が見えるのかと、そう問われた。その問いかけの意味も分からずに、一緒に遊ぼうと手

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【クロッキー小説#1】銀竹

【クロッキー小説#1】銀竹

※センシティブな表現を含みます。ご注意ください。

本文

「一緒に飛んであげようか。」
 後ろから響いた場違いに晴れやかな声にびくりと肩が跳ねる。濡れたコンクリは滑りやすく、思わず後ろの柵にしがみついた。
 ―滑稽だ。
 そう思った。バクバクと跳ねる心臓が、本心に気づいてしまった自分にさらに言い聞かせてくる。うるさい。わかっている。俺は、
「佑太。」
 今度は真後ろで声がした。もう、背中に体温を

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