見出し画像

給与体系のトリレンマ

デフレが終わりインフレ時代に入るとき、給与体系について考える

流動性の罠

ここではベンチャーっぽい会社を想定する。会社で働くある社員について

  • パフォーマンスが悪いため給与を下げたい

  • ただし、その社員の給与が給与テーブルの下限近くに張り付いている

こういう場合にどうするか。例えば「3万円下げたいが3万円下げると等級レンジに収まらない。等級を下げたいわけではない」。こういうことはある。上げたい場合にも同じことはおきるが、上げる場合のほうが取れる選択肢が多い。実際にどう対応するかは会社によって異なるだろう。

これは別のある問題に似ていることに気づく。

おお、我が国よ。金利がゼロに近づくとき、金融政策は機能しなくなる。

給与から離れて金融について考えよう。

金融のトリレンマ

金融における概念

以下の3つは同時に実現することができず、同時に2つしか実現できない。

  • 自由な資本移動

  • 固定相場制

  • 独立した金融政策

そのまま引用すると

たとえば、中国においては「為替の安定(管理フロート)」、「中央銀行(中国人民銀行)による金融政策の自由度」を確保するかわりに外国との資本移動に制限を加えてきた。

日本やアメリカ合衆国では「自由な資本移動」と「中銀(日本銀行・連邦準備制度)による独立した金融政策」のかわりに為替の安定を表向き放棄している(変動相場制)。

一方、欧州連合(ユーロ圏)においては「資本移動(国境・関税などの経済的障壁の撤廃)」と「単一通貨(ユーロ)の流通(複数国による固定相場制導入と事実上同義)」を両立させているが、金融政策は欧州中央銀行(ECB)に握られており、加盟各国が個別の政策を採ることはできない。

ここから転じて、「政治経済のトリレンマ」は

  • グローバル化

  • 民主主義

  • 国家主権

これ、給与も同じだ。

給与のトリレンマ

普通、給与体系を考えるとき次の3つを考える。

  • 等級

  • 評価

  • 報酬

ただし、これは外的な要因を考慮していない。転職(退職と中途採用)を考慮したとき

  • 転職による報酬の変化

  • 個人の成果に対する報酬の変化

  • 会社の業績に連動する報酬の変化

これら全てを同時に満たすのは無理である。もう少し具体的に表現すると

  • 人材市場とのギャップ

  • 固定された等級表

  • 会社の業績に連動するインセンティブ

会社の要求と個人の成果に整合をもたせれば、なにを行うべきかが明確になる。ただし、市場とのギャップは大きくなりやすいだろう。多くの評価制度はだいたいこれを前提にしているように思う。

市場とのギャップを小さくしつつ会社の業績に連動させるようにすれば、多くの人にとってフェアな給与になるだろう。ただし、どのようにすれば個人が成長できるのかはわかりにくいかもしれない。

市場とのギャップを小さくしつつ個人の成果に重きを置けば、その個人にとってフェアな給与になるだろう。ただし、チームの状況と整合性がとれないかもしれない。

実際には苦労しながら調整するが、原則として全てを同時に満たすのは無理だということだけは覚えておくと良い。

おわりに

ところで

金利がゼロに近づくとき、金融政策は機能しなくなる

これが起きるのはデフレの状態だからでインフレの状態では起こらない。

最近のニュースだと次の3つがトリレンマになる。

  • ドルと円の自由な交換

  • ドルと円のレートの安定

  • (日本のための)金融政策(インフレさせたいという意味で)

給与についても同じような現象を見ることがある。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?