見出し画像

コストを最小限にしてオンデマンドで出版する① リスクと費用を抑えた本作りを目指す

これまでの連載の中で「POD(プリント・オン・デマンド)での出版を探る② 本の設定価格が高くならざるをえない」というテーマで記事を書いたが、その文末を以下のような文章で締め括った。

アマゾンが提供する「Kindle ダイレクト・パブリッシング(KDP)」では電子書籍の出版に加えて、紙の書籍を無料でセルフ出版できるようになった。2021年10月から紙の書籍の出版サービスを開始。(中略)ただ、書店での販売はできない。小説を出版することができても、書店の店頭に並ばないのは、昭和生まれの世代には寂しい気がする。Kindle ダイレクト・パブリッシング(KDP)の詳細に触れる前に、次回は自費出版の可能性を検討してみたい。

その後、5回に渡って自費出版の可能性を探った。出版社の編集者のアドバイスや、商業出版と同水準の校正・校閲も魅力的だが、費用対効果を考えると、自費出版での本の販売は止めようと考えた。

ここで、改めてアマゾンの「Kindle ダイレクト・パブリッシング(KDP)」について、触れてみたい。ホームページで、出版の方法、利用する際の注意点などを懇切丁寧に説明している。

「Amazon Kindle ダイレクト・パブリッシング(KDP)」を、これ以降、キンドル出版と表記する。キンドル出版に関する単行本が数多く出版されているし、キンドル出版で本を出した経験やノウハウをインターネットにアップしている記事も多い。 

キンドル出版は、電子書籍の電子版と、プリント・オン・デマンドで印刷する紙版があるが、特にペーパーバックの紙版(現在、ハードカバーは取り扱っていない)は、本文などが印刷される版面はんづらの設定や、ページ数によって背表紙の厚みが変わり、表紙デザインにも影響することを知って、本作りの作業が大変だなと思い知った。

キンドル出版をサポートする有料サービスを提供している会社があり、お任せしようかと、ぐうたらな性分が出てきた。調べてみると、校正とセットになっているなど、料金もそれなりの価格であった。何ごとも経験と考え直して、自らチャレンジすることにした。

アマゾンのマニュアルは、さまざまな項目にページ移動して、より詳しい情報にたどり着けるように工夫されているが、なるべくシンプルで、分かりやすいガイドがいい。それに当てはまるのが、アマゾンが提供する「KDP ジャンプスタート」だった。このガイドに基づいて、キンドル出版に向けた作業を紹介したい。

7つのステップで本の作成と販売に導く


「KDP ジャンプスタート」では、原稿が完成して、本を出版するまでに必要な手順を、4 つのフロー(流れ)と、7つのステップで解説している。
4つのフローは、
初期設定本の詳細情報原稿と表紙権利と価格
7つのステップは、
初期設定: 著者名、印税などの振込先金融機関、税に関する情報を入力してKDP アカウントを設定する。
ステップ1 アカウントを設定する(米国以外の出版者)。
本の詳細情報:本のタイトルや著者名、内容紹介など、読者に本を見つけてもらうための情報を入力する。
ステップ2 本の内容紹介の入力する。
ステップ3 読者に本を見つけてもらいやすいようにカテゴリーとキーワードを設定する。
ステップ4 タイトル、著者名、内容紹介など詳細ページを作成。入力した情報の多くは、アマゾンのサイトの本の紹介欄に表示される。
原稿と表紙: 原稿を出版用ファイルに変換し、読者の関心を引くような表紙を作成する。
ステップ5 本や本文のデザインの概要を決め、原稿と表紙デザインを作成する。
ステップ6 原稿ファイルをアップロードし、著作権、ルール違反などの問題がないかなどの審査を受ける。ペーパーバックを出版する場合、インク、用紙、判型、表紙仕上げを指定する。
権利と価格:本の販売地域と販売価格を決める。
ステップ7 電子書籍(ペーパーバックを含む)の権利と価格、出版地域やロイヤリティ プランの選択し、希望小売価格を決める。

ステップ1のアカウントの設定で戸惑うのが「税務情報に関するインタビュー」で、納税者番号(TIN)を入力する欄があること。日本のマイナンバーを入力すると、アメリカでの売上げにかかる30%の税が免除され、税率ゼロと表示される。

「本の内容」「著者の紹介」を書く欄があるが、これがアマゾンのホームページに記載される文章になるので、作品を書くエネルギーと同等の情熱を投入すべきだろう。読者との接点はここが中心となる。

「シリーズ情報」を書き込む欄があるので、ビジネスの世界、出版業界を扱った小説なので「ビジネス ノベルズ」とした。これもネットで表示される。アマゾンだけの販売にしようと思うので、「無料のKDP ISBNを取得」を選択すると、KDP ISBN が割り当てられた。このKDP ISBNと、出版社名の Independently published(個人出版)を本の奥付に記載した。

I SBN(国際標準図書番号)はInternational Standard Book Number の略で、図書(書籍)や資料の識別用に割り振られた国際規格コード。アラビア数字で表されるが、発行する書籍に付けなければならないという法的な拘束力はない。だが「どこの国の本か」「出版社はどこか」「タイトル名は何か」が特定されるので、本の取引や図書目録の編纂に活用され、一度、付与されたISBNコードは絶版になっても残る。

出版する本の原稿を提出すると、アマゾンは機械学習、自動化、調査担当者の専門チームで品質審査を行う。違法なコンテンツや権利侵害があるなど、コンテンツの品質ガイドに適合していないときは、ファイルは却下される。

判型は四六判に近い「127×188㎜」を選択した。ペーパーバックは、固定レイアウトなので、全体のサイズや余白(マージン)などを正確に合わせる必要があるため、キンドル出版が提供する原稿用のテンプレートを利用した。

文章作成ソフトのワードで作成していたので、ワードの機能を使って1行に入れる文字数や行数を設定。原稿が完成したら、「ファイルの種類」でPDFを選んで、PDF形式で保存し、アップロードする。

ペーパーバックでの価格設定は「印刷コストおよびロイヤリティ計算ツール」を利用する。ペーパーバックは、60%の固定ロイヤリティ レートが適用され、本のロイヤリティは、希望小売価格の60%から印刷コストを差し引いた金額になるが、希望する項目にチェックを入れれば「計算ツール」が自動的に算出してくれる。
ロイヤリティ= 希望小売価格 ✕ 60% ー 印刷コスト

印刷コストは用紙、判型、ページ数によって決まるが、大きな違いが出るのはページ数。これ以下の価格設定ができないのが「最低希望小売価格」で、ページ数が多いと、手頃な価格での値付けが難しい。(敬称略)

アマゾンのキンドル出版で、2023年8月、ペーパーバックと電子書籍の小説が発売されました。「権力は腐敗する」「権力の横暴や不正を許さない」をテーマにしており、お時間のある方はお読みください。
『黒い糸とマンティスの斧』 前原進之介著

この連載記事は、以下のような流れになっています。
1 小説を書きたいと思い立った「いきさつ」
2 どうしたら小説が書けるようになるの?
3 小説を上手く書くために小説講座を探そう 
4 どの文学賞を受賞すると作家になれるの?
5 文学賞に落選。心機一転再スタートを切る
6 多くの人が小説家を名乗れる時代になった
7 POD(プリント・オン・デマンド)での出版を探る
8 自費出版で小説を出すときの費用と注意点
9 コストを最小限にしてオンデマンドで出版する







この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?