いち岡田紗佳選手ファンが見届けたMリーグ2021-22
はじめに
元々、書きたいことがあったら書こうと思って開設したnote。
しかし、手持ちPCが故障し、スマホかタブレットでしか文が書けない面倒臭さから、
いつしか何も投稿しないまま月日が過ぎた。
2022年4月26日、Mリーグ2021-22にてKADOKAWAサクラナイツ(以下サクラナイツ)が初優勝を決めた。
桜騎士団(サクラナイツファンの呼称)の一員である自分にとって歓喜の瞬間であった。
その後、サクラナイツ優勝に関連する熱量のこもったnoteが次々に上がってきた。
特に、こちらのぺやんぐさんのnoteは、サクラナイツ関係者を始め、
他チームのMリーガーやMリーグの藤田晋チェアマンも引用リツイートで取り上げるなど、多方面から反響が寄せられている。
こういったnoteの数々に触発され、遂に自分も重い腰を上げた、という次第である。
当初はサクラナイツの今シーズン全体をテーマに書こうかと考えたが、
あれこれ拾いすぎて膨大な文章量になりそうだったので、
ここは敢えて視点を絞って書くことにした。
表題にもあるように、自分は元々、岡田紗佳pのファンである。(p = プロ)
自分が桜騎士団となったのも、岡田pがサクラナイツ入りしたからこそである。
どうして岡田pのファンになったかまで書くとなると、やはり膨大な文章量になりそうなので、
これについてはまた別の機会ができたら書くことにする。
入団当時から現在まで最年少Mリーガーの肩書を持ち、
この度、遂に最年少優勝メンバー(20代でのMリーグ優勝は史上初)となった岡田p。
そんな岡田pの今シーズンの軌跡を辿りながら、Mリーグ2021-22を振り返っていくことにする。
なお、ここからは普段どおりの感じにするために、
岡田pの呼称は愛称の「おかぴー」で統一させていただく。
本編を読み始める前に(注意事項)
ある程度絞らせていただいたとはいえ、今回の投稿は明らかに膨大な文章量になったため、全てを読み切るにはおそらく相当な時間を要します。
一気に読み切ろうと思う際は、十分な時間の確保をお勧めいたします。
筆者はある程度の麻雀の知識を持ち、普段からそのように書いていることもあり、
立直(リーチ)や断么九(タンヤオ)など、麻雀に関する用語の一部は漢字で表記しております。
その1つ1つに読み仮名は振りませんので、読めない方は各自で読み仮名を検索いただければ幸いです。
文中に出てくる「m」は萬子、「p」は筒子、「s」は索子を表します。
例:1m→一萬 2p→二筒 3s→三索
以上のことを踏まえた上で、続きを読まれる方はこの先の本編へお進みください。
開幕戦起用
2021年10月4日、Mリーグ2021-22の開幕日に、チームとしての開幕戦を迎えたサクラナイツ。
Mリーグに限らず、シーズンの開幕戦というのは特別な雰囲気がある。
他の試合よりも緊張の度合いが高くなるのは必然だ。
過去2シーズン、サクラナイツの開幕戦を託されたのは「ドラ1」内川幸太郎選手であった。
間違いなく重圧のかかる舞台を託せる選手であり、今期も当然のように開幕戦起用だと思っていた。
だからこそ、おかぴーの開幕戦起用を知った時は、まず率直に驚いた。
そして湧いてきた感情は、遂にここで使われるようになったかという嬉しさが半分、
ここで酷い結果になったら結構引きずりそうだなという不安が半分だった。
カードは奇しくも前期のファイナルと同じ。
初代王者・赤坂ドリブンズ(以下ドリブンズ)からは「ドラ1」園田賢選手。
前期王者・EX風林火山(以下風林火山)からは新メンバーオーディションを勝ち上がっての新規参戦となった松ヶ瀨隆弥選手、
悲願の初優勝を目指す渋谷ABEMAS(以下ABEMAS)からは男性Mリーガー最年少の松本吉弘選手。
まさに多種多様な顔触れの中におかぴーが飛び込んでいく。
そして始まる、今期初の入場シーン。
おかぴーの入場に度肝を抜かされた。
エキシビションマッチならまだしも、大事なシーズン開幕戦である。
緊張してないことなど有り得ない場面であのパフォーマンスである。
さすが数々のランウェイを経験しているだけのことはある。
ただ、見ていて素直にカッコいいと思えた反面、一抹の不安も頭をよぎった。
これでラスとか引いたらあまりにカッコ悪すぎるなと。
続く第2試合に出場した堀慎吾選手も3着に終わり、サクラナイツは暫定最下位スタートとなってしまう。
チームもおかぴーも苦しい船出となったものの、まだこの時の自分はポジティブな方だった。
チームは折角ならここから首位までの全順位を経験してしまおうと思ったし(実際にそうなる)、
おかぴーもどこかでサクッとトップを獲ってくれるものと思っていた。
そう、この時はまだ微塵も感じてはいなかったのだ。
ここからおかぴー今期初トップまでの道程が途方もなく長いものになるということを。
想像を絶する長い冬
開幕から1ヶ月、2ヶ月と進み、着々と積み上げられていく試合数。
今期から新規参戦した5選手を始め、1人、また1人と今期初トップを獲っていく中、
おかぴーは依然としてトップが獲れていなかった。
そして12月17日、ABEMAS・日向藍子選手が今期初トップを獲得したことで、
遂におかぴーは全32人のMリーガーで唯一の今期未勝利の選手として取り残されることとなった。
正直に書くと、開幕からおかぴー初トップまでの期間の記憶はほとんど残っていない。
というより、あまりに辛すぎて半ば消してしまった感もある。
個々の試合を見ていけば課題も見えるのかもしれないけれど、
自分がそれを見つけたところで結果がどうなるというものでもなく、
結局は現実から一時的に目を背けて、おかぴーの試合が終わる度に気持ちを切り替えるしかなかった。
そして、少しでも明るい未来を考えるようにした。
そうでもしなければ、試合を見られる精神状態が保てなかったのである。
過去3期のMリーグにおける今期初トップの最遅記録は、
前期のTEAM 雷電(以下雷電)・萩原聖人選手の12月24日。
これを過ぎると最遅記録更新、そして史上初となる未勝利での越年が見えてくる。
ただ、この時の自分はまだそうなることは考えなかったし、
さすがにそれはないだろうと自分に刷り込ませていたところもあった。
とにかくポジティブに考えることしか、自分に出来る術はなかったのだ。
そして、おかぴー未勝利のまま、12月24日を迎えた。
ここでトップが獲れなければ今期初トップの最遅記録を更新、
そして、年内の残り日数を考えれば、未勝利での越年はほぼ確定することになる。
試合中は、ただひたすらに手牌が進むこと、和了れることを画面の前から願い続けた。
結局、年内の登板はこれが最後となり、おかぴーはMリーグ史上初となる未勝利での越年となった。
既にこの段階で、自分の精神状態はかなりやられていた。
ポジティブ思考もだいぶ疲弊していた。
決して仕事に支障が出るレベルではなかったものの、
今までのようにMリーグを楽しんで見られる感じではなくなっていた。
そんな自分を唯一繋ぎ止めていたのが、
「年が変われば何かが変わるのではないか」という精一杯のポジティブ思考だった。
年明け初戦でトップを獲って、2021年の分を一気に取り返す2022年になるんだ、
そんな期待と願いを胸に抱きながらの越年だった。
心が折れる音
年が明けた2022年1月3日、おかぴーの年明け初戦が早くもやってきた。
実を言うと、試合が始まる前から、その顔ぶれに少し嫌な印象は受けていた。
年内での未勝利脱出を果たし、一時の不振を脱した感があったABEMAS・日向選手に、
KONAMI麻雀格闘倶楽部(以下格闘倶楽部)の伊達朱里紗選手、セガサミーフェニックス(以下フェニックス)の東城りお選手という、
既に堂々たる活躍を見せていた新規参戦選手の2人。
目に見える勢いだけで言えば、明らかにおかぴーの分が悪かった。
それでも、この3人を相手にトップが獲れれば、一気に3人分の勢いをつけて、
怒涛の大逆襲が始まることになると信じて、ただひたすらに画面の前で桜援し続けた。
4人の終局の挨拶の直後、ここまでハッキリと聞こえるかと思うほどに、
自分の心が折れる音がハッキリと聞こえたような気がした。
この日を境に、自分の中での桜援のスタンスは大きく変わってしまった。
それまではおかぴーの登板を常に待ち望んでいた自分が、
今後のおかぴーがレギュラーシーズンで1度も登板しない世界線を、割と真剣に考えるようになってしまった。
これが個人戦ならば、もう少し我儘でもいられたかもしれない。
しかし、Mリーグはあくまでもチーム戦だ。
チームのセミファイナル進出を第一に考えるならば、成績の悪い選手の登板機会が減る、
もしくは登板自体がなくなることは得てして仕方ないことだと思うようになったのだ。
実際のところは、森井巧監督も他のチームメイトもおかぴーがいずれトップを獲ってくれるものと信じていて、
登板機会も引き続き与えられていくことになるのだけれど、
この時の自分はもはや、おかぴーがトップを獲る画すら浮かばなくなってしまっていた。
仮に不運なのだとしたらあまりに長すぎるし、
ここまで長い不運が一気に開けるような気もしなかった。
そして、いくら桜援したところで手牌も進められなければ和了も生み出してやれない、
冷静に考えればごく当たり前のことでさえ、自分の無力さとして捉えるようになっていた。
それまで頻繁に顔を出していた森井監督のスペースにも顔を出さなくなった。
あまりに合わせる顔がないというのがあったし、参加したところで肩身の狭さしか感じられなさそうというのもあったからだ。
果たして今後、おかぴーにトップ獲得のチャンスは訪れるのか、それ以前に登板の機会は訪れるのか。
そんな疑問を抱きながら、悶々とした日々は過ぎていく。
雪割桜
「雪割桜」という言葉がある。
唱歌「青い山脈」の歌詞に出てくる言葉で、椿寒桜の異名である。
椿寒桜は早い地域では1月末頃から濃いピンク色の花を咲かせるといい、
枝に積もった雪を割って咲くように見えることから「雪割桜」の異名がついたといわれている。
雪割桜が開花に向けて蕾を膨らませ始める1月14日、
おかぴーに個人13戦目の登板の機会が訪れる。
この日、自分は残業があって、リアルタイムでは試合が見られなかった。
終業したのがたしか19:30頃だったはずだ。
退社後、帰宅は後回しにしてスマホからABEMAを起動し、追っかけ視聴を始める。
開幕戦を皮切りに、松ヶ瀨選手にはただただやられっ放しだった。
頼むから対風林火山戦で起用しないでほしいと思ったことすらあった。
それでも風林火山は嘲笑うかのように松ヶ瀨選手を当ててくる。
もはやこれは、その先の成長のための高い壁なのかもしれない。
ただ、その壁を本当に乗り越えられるのだろうか。
様々な感情が押し寄せる中、追っかけ視聴は進んでいく。
東場で誰かに大きく突き抜けられ、捲れないまま南場が終わる。
そんな試合をもう何回見てきただろうか。
この試合もまさにそんな展開だった。
松ヶ瀨選手と雷電・瀬戸熊直樹選手が素点を伸ばし、
おかぴーは南場の親を迎えた時点で3着の格闘倶楽部・高宮まり選手とは微差ながらのラス。
このままあっさり親が流れれば、またトップの可能性は遠ざかる。
さすがに今回も厳しいのか、そう思っていた矢先であった。
立直からのツモまで漕ぎつけられれば、立直ツモ断么九ドラドラ赤の6000オール(親跳満)まで見えてくる。
6000オール和了なら、一気に松ヶ瀨選手に急接近する。
出来ることなら早く仕上げて立直まで行ってしまいたい、
丁度この辺りで追っかけ視聴から追いついてのリアルタイム観戦に変わっていた自分、
気がつけば寒空の下で必死に手牌の進行を祈り続けていた。
すると、おかぴーの手牌はこちらの想像を遥かに超える伸びを見せていく。
第一ツモの4pに始まり、4s、2pと次々に押し寄せる有効牌。
そして3sを引いて仕上がった聴牌形は、立直で高目ツモなら234の三色がついて、
立直ツモ断么九三色ドラドラ赤の8000オール(親倍満)まで見える25s待ちとなった。
しかも、この時点で25sは8枚全てが山の中。
ツモなら50%の確率で8000オールになる。
この時、自分はふとこう思っていた。
(もしこの試合でおかぴーがトップを獲るならば、8000オールで和了れるはずだろう)
その刹那だった。
2sをツモったその瞬間、思わず「8000オール!」と叫んでしまっていた。(周囲に人がいなくて本当によかったと思っている😓)
それまで心の奥底に積もり続けていた雪が少しずつ溶けていく感覚がそこにはあった。
しかし、局面はまだ南2局である。
2着の松ヶ瀨選手とは僅差だし、3着の瀬戸熊選手のラス親も残されている。
はやる気持ちをなだめながら、眼前の1局1局を見守り続ける。
松ヶ瀨選手の聴牌は明らかに見えていても、ここで退いてツモられてもトップは奪われる。
和了ればトップのおかぴー、当然のように1牌、また1牌と押し続けていく。
そう、この局面で最も押しづらいと思われるあの牌でさえも。
松ヶ瀨選手は發中をポンしている。
白は河には1枚も見えていない(=生牌)。
もし松ヶ瀨選手が白ともう一種のシャンポン待ちにしていたら、役満の大三元、32000の放銃である。
また、白単騎待ちなら小三元發中で8000以上が確定の手に放銃である。
トップどころか3着落ちまで見える放銃がチラつく中でもおかぴーは振り切ってみせた。
終局後のインタビューで、この時の白の打牌についておかぴーは、
松ヶ瀨選手が高打点を必要としないトップ条件の中で、
わざわざ他家から出づらい白で待たないだろうという読みを入れていたことを明かしている。
あの状況下でも冷静な場況読みができていたからこその決断の一打であった。
迎えた最終手番、松ヶ瀨選手、おかぴーと聴牌を取りきり、海底の瀬戸熊選手の手番。
着順アップがなくなった瀬戸熊選手としては、まず河底撈魚の放銃は避けたい。
ただ、松ヶ瀨選手とおかぴーが2人とも聴牌と読んだとき、両者の共通安全牌は1枚もない。
4sは松ヶ瀨選手には通るが、おかぴーに147sが全くの無スジ。
萬子はどれも2人には切りづらい。
となると、残りは6pと7pしかない。
7pは松ヶ瀨選手の当たり牌、放銃なら河底撈魚發中ドラで8000の和了となり、おかぴーの初トップは幻となる。
オーラスの海底の打牌をここまで熱を入れて見たことは、
内川選手のあの四暗刻単騎放銃の時以来だったと思う。
ただ、あの時とは違い、今度はサクラナイツが、そしておかぴーが報われるかどうかが決まる。
見ている側も、その瞬間をただ待つことしかできない。
そして、瀬戸熊選手の手が動く。
深い溜息をつき手牌を伏せる瀬戸熊選手。
それに続くように、おかぴーからも深い溜息が漏れる。
心の奥底に積もっていた雪はもうすっかり溶けていた。
そして、溶け切った雪の中から現れたのは、満開の花をつけた雪割桜であった。
4ヶ月越しの想い
開幕から約3ヶ月半、前期最後のトップから数えれば実に約9ヶ月、
久々に訪れたトップインタビューの時。
その口から出てきたのは、桜騎士団の優しさと桜援への感謝の言葉だった。
SNSとかで、サポーターの皆さんの言葉が、もう、何だろうな、批判が一切ないっていうか。
次こそ大丈夫だよとか、本当にそういう言葉をたくさんいただいて。
トップの獲れない12回は辛かったけど、本当に何だろう、桜援されているんだなっていうのを感じました。
おかぴーがトップが獲れない間、自分は肩身の狭さしか感じられていなかった。
それでも桜騎士団の同志たちは、おかぴーに厳しい言葉をかけることなく、ずっと桜援を続けてくれていた。
このまま終わるわけがない、きっと皆そう思っていたのだ。
たとえどんなに辛くても、これだけ支えてくれる人たちがいる。
そんな人たちのためにも、自分も今一度桜援に奮い立たねばならない。
おかぴーが初トップを獲ったことで肩身の狭さも消えた。
そして、ここからおかぴーが勝ちまくってチームを上昇気流に押し上げるのだと、ポジティブ思考もここに復活したのであった。
トップインタビューが終わった後、すぐに向かったのがサクラナイツのオンラインパブリックビューイング(以下オンラインPV)であった。
開幕前から決めていたことを、4ヶ月越しで実行に移す時が来たからだ。
スーパーチャット(以下スパチャ)とは、You Tubeでの配信において、
チャット欄にて自分のメッセージを目立たせるための権利を購入する機能である。
配信者(今回の場合はサクラナイツ)は、スパチャの金額の何割かを収益として得ることができる。
スパチャの色は金額により異なり、10000円以上ならば赤となる。
自分が開幕前から決めていたこととは、
おかぴーが今期初トップを獲った時に、人生初のスパチャを赤で投げるということだった。
過去2シーズン、ABEMAでの中継を見てサクラナイツの桜援をしてきた。
そして、その闘牌から元気や希望を数多くいただいた。
ただ、前期終了後、ふと我に返ってみて気づいた。
自分はサクラナイツに何か恩返しが出来ているのだろうか?
過去2シーズン、サクラナイツが優勝できずにいたのは、そういった一押しが足りなかったというのもあるのではないのか?
その後、自分はあの時に感じた想いを次々と行動に移していった。
サクラナイツのオフィシャルサポーターとなり、DMMのオンラインサロンにも入った。
Twitterアカウントも新規で作成し、桜騎士団の皆様をフォローしていった。
そして、その集大成として決めたのがスパチャだったのだ。
それまでオンラインPVは幾度も視聴し、スパチャが飛び交う瞬間も数多く見てきていたものの、
自分がスパチャを投げるという行動には移れなかった。
突き詰めれば身銭を切ることだけに、どこか消極的になってしまっていたのだ。
しかし、よくよく考えてみれば、サクラナイツに還元するという意味では、
スパチャが最も目に見えて分かりやすいものではある。
何より、監督や選手が直接見ることができる。
それならば、投げる方も投げがいがあるというものだろう。
自分が赤スパチャを投げてチームに感謝の想いが伝わればいい、
何よりおかぴーが喜んでくれる画が見たい、そんな想いが自分を突き動かしていた。
控室での各選手の反応は嬉しい限りだった。
内川選手はわざわざカメラ目線で驚いてくれたし、
おかぴーは心の底から嬉しがっていたように感じた。
スパチャ読み上げ後の堀選手の嫉妬めいた発言は何度聞き返しても面白かったりする。
あの時の赤スパチャには、おかぴー初トップへの祝福とともに、
今まで支えてくれた監督やチームメイト、そして桜騎士団への感謝、
そして、ここから自分はもう1度、桜騎士団として熱意をもって桜援をやっていくという決意も込められていた。
ある意味、この日が自分にとっての開幕の日であったのだ。
結果として、おかぴーのレギュラーシーズンでのトップは1回のみに終わる。
あの時のトップがなかったらと思うと、今でもゾッとするものがある。
ただ、あのトップがあったからこそ、自分は最後まで希望を捨てずに桜援を続けられたのだ。
あのトップには、ただの1勝分では終わらない価値があったと自分は今でも思っている。
ダブルピース
雷電が歴史に残る大不振となり、ドリブンズも終盤で徐々にポイントを下げていき、
割と早い段階でセミファイナル進出の6チームは固まった感があった。
あとはセミファイナル最終日に試合ができる4位以内に入れるかどうかが焦点となっていく。
結果としてサクラナイツは6位に終わり、セミファイナル最終日での抜け番が決まる。
ただ、レギュラーシーズンの最終ポイントを半減させて始まるセミファイナルになれば、
4位・風林火山、5位・フェニックスとの差はほぼなくなり、
首位のU-NEXT Pirates(以下Pirates)ですら約100pの差になる。
このセミファイナルの間にポイントを伸ばし、全試合消化時点でかなりの上位につけていれば、
最終日はハラハラせずに見られるかもしれない。
過去2シーズンでのサクラナイツのセミファイナルでの活躍を知る身としては、
その可能性は十分にあるものと思っていた。
開幕戦は内川選手、2戦目はレギュラーシーズンでMVP争いを繰り広げた沢崎誠選手が登板、
いずれも2着という上々の滑り出しとなったサクラナイツ。
続く3戦目(3月24日第1試合)、おかぴーにセミファイナル初登板が回ってくる。
過去2シーズンにおいて、おかぴーはいずれもセミファイナルに1トップを獲得している。
そして、それとともに名物となったものがある。
そう、対局室入口前のカメラの前で見せるダブルピースだ。
今期もセミファイナルでトップを獲って、渾身のダブルピースが炸裂するのか。
チームのファイナル進出のためには、間違いなくおかぴーのトップは必要だと思っていたし、
必ずや獲ってくれるものと信じていた。
松ヶ瀨選手に放銃してラスに落ちても、かつて程の悲壮感はそこにはなかった。
あの時みたいにまた捲り返してしまえばいい、今のおかぴーならそれができると。
迎えた東3局の親番、おかぴーに大きな和了がやってくる。
上家の格闘倶楽部・滝沢和典選手が絞りにいく中、手牌は仕上がっていく。
解説に入っていた現發王・仲林圭pからも「御見逸れしましたね」の御言葉をいただく程の見事な和了だった。
特にセミファイナル以降に感じたことであるが、今期のおかぴーは、立直でガンガンというよりは、
高打点が見える手なら積極的に副露して和了を取りにいく姿勢が多く見られる気がした。
この辺には、チームメイトの沢崎選手や堀選手のイズムが見てとれる気がした。
まだまだ経験の面では浅いおかぴーにとって、あの2人から得られるものはきっと、
こちらの想像を遥かに超える程に多いのかもしれない。
その後も副露と立直で親番での3局連続和了を決め、
リードを保って迎えた南2局、この試合最大の山場がやってくる。
この捲り合いを制すればグッとトップは近づいてくる。
ただ、おかぴーの当たり牌の1つの4mは立直の日向選手に暗刻の牌。
果たして、どこまで勝ち目があるものなのか。
そう思っていた矢先だった。
長期戦も覚悟した捲り合いがこんなに一瞬で決まろうとは想像だにしていなかった。
これはあくまでも体感の話だが、今期レギュラーシーズンのおかぴーは、
捲り合いに勝てているイメージがほとんどなかった。
そんなおかぴーが一発ツモで三者による捲り合いを制したのだ。
この時、自分の中では、おかぴーの何かが変わり始めているように感じられたのだ。
聴牌までの手組みには技術が大いに関係するものの、そこから和了が生まれるかどうかについては、
当たり牌がツモれるか、もしくは打ち出されるかという運の面が大きく関わってくる。
人読み、山読みという技術もあるにはあるが、それもあくまでも読みでしかない。
たとえ山に4枚残りでもツモれない時はツモれないし、反対にラス1をツモれる時だってある。
そういった運は時として、特定の人にだけ固まって訪れることがあったりする。
歴代のMリーグのMVP獲得者にしても、そのシーズンに固まって訪れてきた運を技術でしっかりと拾い上げられたからこそ、
MVPという結果を得られているのだと自分は思っている。
そういった運が固まって訪れることを、自分は「風」と定義している。
そう、日吉pが実況で多用しているあの「風」だ。
今期レギュラーシーズンのおかぴーには、風を感じられる時期はほとんどなかった。
しかし、舞台がセミファイナルに変わって迎えた初戦、あの時のおかぴーには間違いなく風が吹いていた。
そして、それを立直一発ツモ平和赤の満貫という結果で見事に拾い上げてみせたのだ。
風を感じられる者としては、風を感じることに喜びを感じないわけなどないのだ。
レギュラーシーズン唯一のトップと比べると、実にあっさりとした勝ち方であった。
ただ、こういう勝ち方が頻繁にできる選手こそが強い選手だとも思う。
目に見えて感じた技術、心の中で感じた風。
今後の闘牌にさらなる希望を抱かせる、そんなトップであった。
そして、今期もお待ちかねのあの瞬間がやってきた。
時の發王すら骨抜きにする(?)会心のダブルピース。
やっぱりセミファイナルはこれを見なけりゃ始まらない。
セミファイナルでのチーム初トップをもたらしたおかぴーに続き、
堀選手もトップを獲得してのデイリーダブル(同日連勝)となったサクラナイツはこの日、
順位をスタート時の6位から2位にまで押し上げることとなった。
さらにその翌日、首位だった格闘倶楽部がポイントを減らしたことで、遂にサクラナイツは首位へと躍り出ることになる。
おかぴーに吹いてきた風はやがてチーム全体にも吹き始め、いつしか桜旋風へと変わっていったのであった。
その後、おかぴーにはセミファイナルで2度の登板機会が訪れる。
3月29日第2試合では、あの例の件でトップを逃した感はあったものの、それでもしっかりと2着確保。
そして、4月4日の第1試合では自身初となる1シーズンでのセミファイナル2勝目を手にする。
相手は、前期ファイナルでサクラナイツが苦しめられた風林火山・勝又健志選手、
今期レギュラーシーズンで沢崎選手との争いを制してMVPとなったPirates・瑞原明奈選手、
そして、とある理由でおかぴーとは因縁(?)があるABEMAS・白鳥翔選手。
三者三様、それぞれ負けたくないと思う理由がある3人を相手に、おかぴーはトップを獲ってくれたのだ。
展開としては、途中まではかなり苦しかった。
南1局2本場では白鳥選手に満貫を親被りさせられてラス落ち。
親番がなくなり、かつ四者はかなりの接戦。
スピード勝負になれば一気に分が悪くなる。
そんな状況の中で決め手となったのが南3局2本場、
白鳥選手、勝又選手との三者による捲り合いを制しての満貫ツモだった。
この和了については、Mリーグの公式You Tubeに切り抜き動画が上がっているので、詳細はそちらを参照いただきたい。
この和了でラスから一気にトップに浮上してオーラス南4局へ。
途中まではラス回避さえしてくれればと思う程の展開だっただけに、
少ないチャンスをものにしての逆転トップは実に爽快だった。
チームにとってもファイナル進出をグッと手繰り寄せるトップとなった。
セミファイナルで好調だったおかぴーとは対照的に、
セミファイナルで出場した3戦全てでラスとなってしまったのが今期MVPのPirates・瑞原選手だった。
レギャラーシーズンでは驚異の連対率85%(18/21)、ラス回避率90%(19/21)をマーク。
おかぴーは12月13日第1試合、1月27日第1試合、2月21日第1試合で対戦、いずれも瑞原選手に先着を許している。
レギュラーシーズンを首位で通過したPirates、下位陣との差は決して大きくなかったとはいえ、
元々ラス回避率が高いことで知られるチームだけに、ポイントを大きく減らすことは考えづらかった。
中でも瑞原選手はレギュラーシーズンでのあの連対率とラス回避率があるだけに、
いくらステージが変わるとはいっても、そこまで大崩れするとはとても考えづらく、
むしろ直接対決時にどこまで獲得ポイントを抑えられるかの勝負だと思っていた。
3月21日第1試合、瑞原選手はチーム開幕戦を任される。
和了ればトップがグッと近づくとはいえ、待ちは立直に無スジのドラ側のカン6s。
立直の白鳥選手は筒子を1枚も切っていない。
もし2pを切って一発をつけて親満貫以上に放銃なら、トップから一気にラスまで落ちる。
仮に白鳥選手に親満貫をツモられても、トップとは4400点差の2着で最低残り2局なら再逆転トップは十分可能。
親跳満以上をツモられても3着とは8000点差の2着で連対はかなり取れそう。
オリようと思えば現物(=立直に当たらない牌)は7sや8mがあり、単騎にしか当たらない中も相当通りそう。
解説の土田浩翔pも言っていたが、ここはさすがにオリだと自分も思っていた。
押し切って勝てれば相当価値があるとはいえ、一発放銃のリスクがあまりに大きすぎる。
首位スタートで迎えた開幕戦、ここでラスになってしまえば、
ただでさえ差のない下位陣をより楽にさせてしまうことにもなりかねない。
レギュラーシーズンでは悉く捲り合いに勝ってきたイメージのある瑞原選手でも、
さすがにここはリスクを避けるものと思っていた。
試合後のインタビューで、この時の2p切りは「自分のバランスとして(ある)」と瑞原選手は語っていたが、
もしこれがレギュラーシーズンの中盤戦あたりで同じ場面を迎えていたら、果たして同じ選択になっていたのかどうか。
まだまだ素人の自分はそんな疑問を抱いてしまうのであった。
この瑞原選手のラスから、Piratesは4試合連続逆連対と一気に苦しみ始める。
3月25日第1試合では瑞原選手がセミファイナル個人2戦目に臨むも、
東2局1本場でのペン7s立直から、回りながらも2副露で聴牌を入れたフェニックス・魚谷侑未選手に河底撈魚で親満貫を放銃する不運もあり、
個人は2試合連続ラス、チームは5試合連続逆連対で、遂にボーダーを下回る5位にまで順位を下げた。
Mリーグで最も風を信じないチームに対して書くのも忍びないが、
この時のPiratesには、サクラナイツとは逆の風を感じずにはいられなかった。
何せ、あれだけレギュラーシーズンで安定した成績を残していたチームが5戦で3ラスしているのである。
しかも、そのうちの2回がMVPの瑞原選手である。
Piratesファンではない立場ではあるものの、あの時のPiratesは見ていて本当に辛いものがあった。
その後、船長・小林剛選手がチームにセミファイナル初トップをもたらし、連続逆連対を5で止めてからは、
石橋伸洋選手、小林選手のトップでジワジワと3位まで浮上してきたPirates。
さらなる上位進出へ、トンネルを抜け出したい瑞原選手のセミファイナル個人3戦目となったのが、
おかぴーがセミファイナル個人2勝目を挙げたあの試合だったのだ。
この時のダブルピースは、瑞原選手の退場前に行われたものだ。
この後に、やや辛そうな顔をして瑞原選手が退場していく。
前回のダブルピースよりもいや増してかわいくなってると思う反面、
タイミング的には少し印象を悪くしてしまうかなと懸念したところもあった。
その後、ある一部の人たちから、あのダブルピースが瑞原選手を煽っている、挑発行為だという声が挙がったという。
(それが瑞原選手のファンからかどうかについては憶測の域を出ないので断定はしないでおく)
瑞原選手ファンの立場になって考えると、そう思いたくなるのも仕方ないと思う。
3連続ラスを引いた後にあの笑顔のダブルピースを見せられたら、
そりゃ多少なりともイラッとすることもあるかもしれないなと。
ただ、おかぴーファンとして肩を持つ格好にはなってしまうが、あの時のダブルピースは断じて挑発行為なんかではない。
本当に挑発する意図があるならば、瑞原選手に向かって直接見せつけるものだろうと自分は思うからだ。
あの時、おかぴーがダブルピースを向けたのは、カメラの向こうで心待ちにしている桜騎士団(自分含む)である。
ファンの期待に応える姿はMリーガーとして素晴らしいと思うし、
トップを獲った喜びをより分かりやすく伝えられることは、
熱狂を外へ伝えるという点においても非常に大事なことだと思っている。
もし、次に瑞原選手がトップを獲ったら、カメラの前で笑顔でPiratesポーズ(敬礼)をやってほしいと思っていたし、
それを実際に目の当たりにしたら、少し泣いてしまうかもなとも思っていた。
結局、瑞原選手は以降のセミファイナルには出場せず、その機会は訪れなかったのだけれども。
沢崎選手が不振に陥ったものの、堀選手の3トップ、おかぴーの2トップ、内川選手の1トップで大きくポイントを伸ばしたサクラナイツは、
フェニックスとともに一足早くセミファイナルを闘い終えた時点で暫定首位。
最終日で闘う4チーム全てがサクラナイツを上回ることは有り得ないため、サクラナイツのファイナル進出は確定。
あとは、ファイナルの顔触れがどうなるかを見守るのみとなった。
セミファイナル開幕時には、Piratesと風林火山がここまで落ちることは想定していなかったものの、
この展開になったからには、何とかここでPiratesと風林火山を振り切れないだろうかと自分は思っていた。
2019-20ではPiratesに、2020-21では風林火山に、サクラナイツはいずれも目の前で優勝を攫われている。
しかも、両チームともファイナルはギリギリで進出を決めての4位スタートだった。
もしPiratesか風林火山が逆転でファイナル進出を決めようものなら、
あの時の再現は十分に起こり得ると思っといたし、
だからこそ、そうさせたくないという想いがあったのだ。
結果、風林火山はデイリーダブルとなったものの、必要な素点に大きく届かず。
風林火山よりもファイナル進出条件が軽かったPiratesは連続逆連対で、最終順位を6位に下げて終戦。
これにより、ファイナル進出は上位からサクラナイツ、格闘倶楽部、ABEMAS、フェニックスとなった。
また、Piratesは同一の選手構成で2期連続でファイナル進出を逃したため、
規定により来期はチーム編成の変更(選手入替え)を行わなければならなくなった。
一部ではレギュラーシーズン1位にも関わらず選手入替えとなることに対し、
規定が厳しすぎるとの声も上がっていたが、
自分としては、どこかで捲り合いを避けていたり、押す場面を減らしていたりしたら、
Piratesはファイナル進出できていたのではないかと今でも思っている。
もちろん、風とかそんなものには流されないチームだけに、今まで通りにやった結果なのかもしれないけれど、
よりオリの頻度を増やして、余計な着落ちや失点を避けにいく世界線も見てみたかったと思っている。
大魔神との激闘
かくして、ファイナル進出チームが出揃った。
4期連続のABEMAS、2期ぶりのフェニックス、3期ぶりの格闘倶楽部、そして3期連続のサクラナイツ、どこが勝っても初のMリーグ制覇。
自分の中では歴代ファイナルの中でも最高ともいえるカードになった。
四者四様、過去のファイナルでは悔しい思いをしている。
果たして、どこがその悔しさを晴らせるのか。
レギュラーシーズンに続き、このファイナルでも、おかぴーは開幕戦を託された。
格闘倶楽部からは、チーム内で唯一前期ファイナルを闘っている滝沢選手、
ABEMASからは、おかぴーとともに2期連続でのファイナル開幕戦出場となった松本選手、
フェニックスからは、セミファイナル2勝で復活の兆しを見せる近藤誠一選手が出場。
中でも特に怖く感じていたのが近藤選手だった。
2019-20のファイナル、このシーズンで4着回避率のタイトルを獲得した近藤選手は、
MVP・最高スコアの二冠を獲得した魚谷選手とともに主軸としての活躍が期待された。
しかし、結果は3戦出場して2着1回、4着2回とチーム内で唯一トップが獲れなかった。
また、最終日の第1試合ではPirates・石橋選手にトップラスを決められ、
最終戦を前にしてPiratesに首位を明け渡し、そのままPiratesに逃げ切られてしまった。
鉄壁と思われた防波堤は完全に崩壊してしまったのだ。
最終戦での魚谷選手の悔しそうな顔の印象があまりにも強いかもしれないが、
それ以上に近藤選手が悔しい思いをしていたであろうことは想像に難くない。
今回はそれ以来のファイナル、ましてセミファイナルから復調気配である。
ここでトップを獲られようものなら、一気に流れがフェニックスに傾き、
3期連続で4位スタートのチームの優勝ということになるかもしれない、そんな怖さを抱えていたのだ。
試合開始直後、起家のおかぴーに早速大きな手が入る。
気持ちのいい連続ツモ和了で他家とは20000点以上の差に。
このままサイレンススズカ並に楽に逃げ切れればなんて思っていたが、そうは問屋が卸さなかった。
有名および人気の雀士には皆「通り名(キャッチフレーズ)」というものがある。
おかぴーなら「完全武装アフロディーテ」、内川選手なら「手順マエストロ」、堀選手なら「小さな天才」、沢崎選手なら「マムシ」だ。
近藤選手の通り名といえば「麻雀ジェントルマン」、そして「大魔神の系譜」。
ここでいう「大魔神」とは、かつて最高位戦プロ麻雀協会(以下最高位戦)に所属していた伝説の雀士、故・飯田正人pのことを指す。
飯田pは最高位戦のリーグ戦の頂点である最高位を実に10回獲得し、唯一の永世最高位となっている。
その次に最高位の獲得数が多いのが金子正輝pと近藤選手の4回であり、
特に近藤選手は2012年に1回目の最高位を獲得してから僅か6年で4回目を獲得したことで、
いつしか「大魔神の系譜」という通り名をつけられるようになったのである。
やや話は逸れるが、自分の世代で「大魔神」といえば、「ハマの大魔神」こと佐々木主浩・元投手である。
時に打たれることこそあるにせよ、リードを奪われたまま9回のマウンドに上がられた時には、
対戦する前の段階から、その威圧感に恐れ慄いたものである。
あの時の近藤選手にも「ハマの大魔神」バリの威圧感があった。
2年前の悔しさを晴らしにいかんとするその闘牌にはただただ恐怖しか感じなかった。
迎えた南2局3本場(供託2)、近藤選手とおかぴーが36700点持ちでキレイに横一線の状況。
ここで和了ることができればおかぴーのトップが見えてくる中、立直の発声が飛んでくる。
配牌時にはここまでの手になるとは想像だにしていなかったのだが、
ここまで仕上げられることこそが、近藤誠一という雀士の真骨頂ともいえるところだ。
セミファイナル開幕戦の瑞原選手の姿がダブって見えた。
あの時と状況はだいぶ酷似している。
和了ればトップは大きく近づく。
しかし、一発放銃ならばトップが大きく離れるどころか、倍満以上なら3着落ちまである。
しかも立直したのはMリーグ屈指の打点力を誇る近藤選手である(実際に手は高い)。
もちろん、近藤選手と捲り合って勝てるなら理想だが、自信のない待ちならば近藤選手も立直は打たないはず。
もしここで3着以下になれば、ただでさえ短期決戦の中で、他のチームを楽にさせてしまうことにもなりかねない。
あの時の瑞原選手の姿がダブっていただけに、自分としてはオリられるものならオリてほしいと思っていた。
ただ、たとえ一発で放銃することになったとしても、絶対に責めないと決めていた。
それが勝つための選択ならば、自分はおかぴーの選択に納得するまでのことだ。
どの選択をしたとしても、その結末を完全に読める者など誰もいないはずなのだから。
想定しうる最悪の事態は免れた。
残り巡目は少ない。
このまま流局して次局持ち越しならまだまだトップの可能性は残される。
そんなことを考えていた矢先だった。
大魔神の恐ろしさをまざまざと見せつけられた瞬間だった。
その後、南3局にも満貫をツモ和了り、トップをほぼ確定させた近藤選手。
フェニックスは4位スタートだけに、南4局のラス親で近藤選手がさらなる素点稼ぎにいくのは明白。
他三者としては出来る限り早く食い止めておきたい中、おかぴーが和了へ向かう。
結果、この試合では2着に終わる。
ただ、もし南2局3本場で近藤選手に一発放銃していれば、
あるいは南4局で近藤選手にさらなる加点を許していれば、
最終戦でのサクラナイツの優勝条件はより厳しいものになっていたはずである。
だからこそ、結果は2着であるものの、この試合もサクラナイツ優勝に大きく繋がった試合なのだと、
自分はやや過大ともとられかねない解釈をしているのである。
歓喜の涙
初めて全8チームが4人の選手を擁して始まった2021-22シーズン。
しかし、そのファイナルの舞台にサクラナイツは3人で臨むこととなった。
沢崎選手が病気療養のため、ファイナルを欠場することとなったからだ。
その沢崎選手に代わって獅子奮迅の活躍を見せたのが、
レギュラーシーズン、セミファイナルと活躍を続けていた堀選手だった。
開幕日の第2試合から2日目の第2試合まで、堀選手は怒涛の3連闘となった。
特に2日目は、内川選手が所属団体の日本プロ麻雀連盟のA2リーグ出場のために不在で、
堀選手とおかぴーの2人しかいない中での連闘となった。
実を言うと、その事情を知る自分としては、2日目のおかぴーの登板に期待していた節があった。
堀選手の連闘を知った時には、ほんの少しだけガッカリもした。
もちろん、ここまでの堀選手の活躍を見れば、軸として多用されるのは当然だとは思ってはいたものの、
おかぴーはおかぴーでセミファイナル以降は4戦2トップ4連対と堂々たる結果を出している。
今のおかぴーなら今まで叶わなかったファイナル初トップもきっと獲れる、そんな妙な自信があったのだ。
やっと巡ってきたファイナル個人2戦目の登板は4日目の第1試合だった。
現状はサクラナイツとフェニックスの2強体制。
首位のサクラナイツはフェニックスを突き放せるのか。
フェニックスはサクラナイツに追いつけるのか。
ABEMASと格闘倶楽部は1つでも多くのトップを獲って次に繋げたいところ。
これぞトップへの執念のぶつかり合いか、試合は全和了の9回中7回が放銃決着という壮絶な闘いとなる。
その後、どうにか食らいついて迎えた南4局、
跳満ならどこから和了っても逆転トップという条件の中、おかぴーが逆転の手を仕上げる。
もしオリることがあれば、単騎にしか当たらず、うまくいけば3巡凌げる中が打たれる可能性もあったが、
トップ獲りの執念に燃える日向選手は最後まで押し通してみせた。
結果は親立直の近藤選手、日向選手、おかぴーの3人聴牌で流局。
供託2の1本場となったことで、今度は満貫ツモへトップ条件が緩和された中、再び逆転の手が仕上がる。
しかし、立直の時点で待ち牌は山に3m1枚のみ。
その1枚の3mも王牌の中で深い眠りについていた。
遂におかぴーの連続連対が終わった。
それも2度逆転の手を入れながらの和了れずでの終局である。
まだファイナル初トップ獲得は果たされていない、出来ることならもう1戦くらい出てきてほしい。
ただ、自分の中ではこの時、1つの覚悟ができていた。
これが今期のおかぴーの打ち納めになるんだろうな、と。
既にファイナルは4日目、これが終われば残りは2日しかない。
この後の5日目と最終日は各チームにとって、優勝へ向けてのより厳しい闘いになる。
そんな大事なときにおかぴーが下手な結果を出して、それがサクラナイツの優勝を逃すことに繋がれば、
たとえ監督やチームメイトや桜騎士団が責めずとも、そこにはとてつもない重責がのしかかってくる。
今のおかぴーにそれが背負えるかといえば、とてもそうは思えなかった。
これがもし連対が続いているようだったら、まだどこかで期待したところもあったかもしれないが、
連対も止まった今となっては、もうわざわざ出ていく必要もないと感じたのだった。
実際にこの試合がおかぴーの今期の打ち納めとなった。
終わってみればトップは全体で3回のみだったが、
開幕から3ヶ月半未勝利だったことを考えれば、よく持ち直した方だと思っているし、
あのセミファイナルでの2トップは間違いなくチームに勢いをつけたと思っている。
やれるだけのことは全てやった。
後は頼れるエースと天才に優勝の命運を託すのみ。
ファイナル5日目。
前日の夜に(ほぼほぼ己の不注意が原因で)足を怪我した堀選手。(ファイナル終了後に骨折と判明)
それでも、本人の強盛なまでの打ちたい欲と森井監督の信頼により連闘。
1戦目は3着も2戦目にトップを持ち帰り、サクラナイツは初めてファイナル最終日を首位で迎えることとなった。
迎えたファイナル最終日。
サクラナイツ、フェニックス、ABEMASに優勝の可能性が高く残る中、
微かなる一筋の光に懸ける格闘倶楽部・伊達選手が第1試合でトップ獲得。
サクラナイツの内川選手は終始苦しみながらも、フェニックス・近藤選手を着順で上回るという最低限の狙いを達成して3着。
これにより、サクラナイツは首位のまま最終戦を迎えた。
そして、118/118となる最終戦。
連闘となったフェニックス・近藤選手に最後まで逆転優勝条件を作られながらも、
堀選手がラス親での連続和了でフェニックスを突き放し、遂にゴールテープを切った。
例年通りなら、優勝を決めて退場していく選手の元に監督と他の選手が集まってくる。
しかし、今回はそうはいかない。
何故なら堀選手が自力で動けないからだ。
となれば、座っている堀選手のところに集まってくるしかない。
きっとおかぴーは嬉し泣きしながら入ってくるんだろうな。
そんなことを考えながら、その時を待つ。
Mリーグ1年目の2019-20シーズン、自身のMリーグ初トップの時のインタビューにて、
親友でもあるリポーターのまつかよ(松本圭世)さんの声を聞いた途端に、安堵から涙を流したなんてことがあった。
おそらく、Mリーグでおかぴーの涙を見たのはその時以来だと思う。
ただ、あの時の涙とはまた意味合いが違う。
優勝という最高の結果、最終戦を闘った堀選手への感謝、沢崎選手に優勝という結果を届けられたことへの安堵、
他にも様々な想いが、あの涙には詰め込まれていたと思う。
事情を知らない人が見たら、怪我している人の背中を強打するとか危ないだろと思われかねないが、
元々、試合前の景気づけとしておかぴーの背中をバシーンし続けてきたのが堀選手だった。
しかも、それが何かの恨みを晴らしにいってるのかと思う程に毎回強いのだ。
後におかぴーはあの時の背中バシーンについて「今までの分をやり返しにいってる」と話しているが、
きっとあの瞬間には、それ以外の想いも込められているものと自分は密かに思っていたりする。
そして、画面の前でこの瞬間を見届けた沢崎選手へ呼びかける。
サクラナイツ優勝を伝えた一部メディアでは、この時の「ガラス」を、優勝シャーレのことを言い間違えていると報じていた。
ただ、そうなってしまうのも無理はない。
何故なら、この動画を見なければ、ここでの「ガラス」の持つ言葉の意味など知るはずもないからである。
2半荘の合計点が最も高い選手が超豪華弁当をゲットできるというサクラナイツ内での個人戦の動画が、
セミファイナル期間中にサクラナイツの公式You Tubeにて公開された。
実況に日吉p、解説に渋川難波pというMリーグさながらの陣容で、結構な真剣勝負になるのかと思いきや、
チームメイト同士でのエキシビションマッチということもあってか、
いつしかトラッシュトークの応酬(内川選手を除く)に発展。
そして、動画では1:33:00〜1:34:00頃、おかぴーの立直の当たり牌をビタ止めして流局させた沢崎選手から、あの一言が出る。
ここでいう「ガラス」とは、立直の待ち牌が透けて見えるように分かる、
つまり、手の内は読めているということを暗に、かつ端的に表した言葉である。
実況の日吉p、解説の渋川pも絶賛し、動画を見た桜騎士団の中でも話題になり、
いつしか言動が予め読めることに派生して「ガラス」という言葉が使われるようになった。
例:堀選手がトップインタビューで「嬉しいです」と言うのはガラス
そしていつしか、「ガラス」という言葉自体が沢崎選手自身に結びつくようになっていったのである。
このシーンを見た時は、沢崎選手さすがだなと思う一方、
おかぴーファンとしては辛かったし、何なら瞬間的にはちょっとばかり傷ついたりもした。
そこまで言わなくていいじゃないと。
ただ、今になって振り返ってみれば、あの時の沢崎選手は、まだまだおかぴーが上手くなっていけるものと思っていて、
敢えて悔しいと思える「ガラス」という言葉を選んで、さらなる成長を促しにいった側面ももしかしたらあったのかなと。
ここでの経験がMリーグを始め、いろいろな舞台で結果として現れてくれればと思っていたかもしれないなと。
動画内では「ガラス」と言われてムカついているように見えたおかぴーだったが、
あの場面でわざわざ優勝シャーレのことを「ガラス」と置き換えて沢崎選手にメッセージを送ったのは、
チームをファイナルの舞台にまで引っ張ってきてくれたことに加えて、
あの「ガラス」に対しての感謝の意のようなものもあったのかもしれないと思っている。
今回のnoteの執筆にあたり、このシーンを何度も見返したのだが、
何度見返しても、おかぴーの涙する画を見るとグッときてしまう。
決して号泣まではいかないものの、目の奥にうっすらと込み上げてくるものを感じる。
普段は割とドライな方で、スポーツ中継やドラマを見て涙することがほとんどないのだが、
この泣き姿には心を動かされるものがある。
思い起こせば1年目から、差し込みミスで同点トップなんてことをやらかしてしまったこともあった。
大きな放銃をしたり、寸前でトップが逃げていったなんてことも数々あった。
今期だけを振り返っても、開幕から3ヶ月半トップ無しというあまりに長い冬の時期があった。
そこからやっと初トップを掴み取り、セミファイナルで躍動し、ファイナルでも白熱した闘牌を見せてくれた。
苦しい時も、それを乗り越えた時も全て知っているからこそ、
あの涙には特別なものを感じるのだと自分は思っている。
桜援を続けてきたおかぴー、チームメイトの沢崎選手、内川選手、堀選手、
各方面でサクラナイツとMリーグを盛り上げていただいた森井監督、
スパチャを投げる機会となったオンラインPV等の運営に尽力いただいた稲垣マネージャー、
この数ヶ月の間に知り合い、サクラナイツ優勝へ想いをともにしてきた桜騎士団の皆様、
そして、Mリーグを支えていただいた実況、解説、リポーター、審判、スタッフの皆様、
ならびにサクラナイツと激闘を繰り広げてきた7チームの選手、関係者、ファンの皆様、
素晴らしい闘牌、素晴らしいMリーグを作り上げていただき、本当にありがとうございました。
エピローグの前に
すみません、本来はもっと短くしたかったのですが、書いてるうちに次々と書きたいことが浮かんできて、
気がついたら20000文字(400字詰め原稿用紙50枚分)をゆうに超える長さになってしまいました😓
きっとここまで読まれた方の大半は、何回かに分けて読まれてきたものと思います。
ここまでお付き合いいただきありがとうございます。
あくまでベースはおかぴーの今シーズンと自分の桜騎士団としての今シーズンなのですが、
おかぴーが闘ってきた一部の選手についても書かせていただきました。
その闘牌を見て想ったことを素直に書かせてもらいました。
もしかしたら表現の面で至らない部分があるかもしれませんが、それに関しては自分の力量不足ですので、
もしご指摘等ありましたらコメントをいただければ都度修正させていただきます。
また、各種データにつきましても、間違い等を見つけられましたら、
ご指摘いただきましたら都度修正させていただきますので宜しくお願いいたします。
それでは、エピローグへまいりましょう。
エピローグ
サクラナイツ、そしておかぴーがMリーグに参戦して3年、
ずっと待ち焦がれた優勝シャーレを掲げる時が遂にやって来た。
しかし、舞台上で実際にシャーレを掲げるのは内川選手とおかぴーの2人だけだ。
沢崎選手は療養で入院のためファイナル欠場、表彰式不参加だから仕方ないとしても、
ファイナル開幕時にはピンピンしてた堀選手は完全なる自業自得である。
優勝メンバーであり、表彰式にも参加しながらシャーレを掲げられないのは堀選手が初だし、
おそらくこの後に続く人も出てこないような気がする。
何でこんな大事な時に怪我なんてするのかね…。
ま、ある意味で堀選手らしいといえばらしいのだけれど。
そんなことを考えているうちに司会者のアナウンスが入る。
「KADOKAWAサクラナイツ!内川幸太郎選手、岡田”サキ"選手…」
直接確認したわけではないけれど、きっと画面の前の自分も、こんな表情をしていたに違いない。
この件に関してもいろいろな反響があった。
中には司会者さんの酷さを指摘する声もあった。
確かにこういう舞台を任されるからには、チーム名、選手名はきちんと伝えるべきだし、
たとえ間違ったとしてもすぐに訂正すべきだとは思う。(実際は訂正が入らないまま進行)
ただ、この司会者さん、よくよく調べたら今期の開幕式も担当しており、
その時は最初の選手紹介できちんと「岡田紗佳選手」とアナウンスできているのだ。
結局のところ、あの時の間違いは表彰式という独特の緊張感に飲まれてのことで、
訂正が入らなかったのも、緊張で間違い自体に気付けなかったのだろうなと、今となっては思っている。
それでも、実際に間違って呼ばれた直後は、さすがにオイオイと思ってしまった。
せっかくの初優勝の表彰式なのに、まさか名前を間違われるなんてと。
しかしその直後、ふと冷静になった自分はこう思い返すのだった。
そうだよな、世間的にはおかぴーの知名度なんてまだまだ大したことないんだよな、と。
麻雀関係者には広く知られているとしても、麻雀の麻の字も知らない人たちからすれば、その名前を聞くことはほぼ皆無に等しい。
芸能人という肩書も持つものの、全国的な仕事を多数いただけているわけでもない。
裏を返せば、この岡田紗佳という素晴らしい雀士、素晴らしい女性の存在を、
より外に広げていけるだけの余地は十分にあるということなのだなと。
そんなことを考えているうちに、いよいよその瞬間がやってきた。
晴れてサクラナイツはMリーグ王者となった。
次はまだどのチームも果たせていない連覇への挑戦だ。
そして、桜騎士団は桜騎士団で、来期に向けて、この熱狂をもっと外へ広げる挑戦が待っている。
ここは1つのゴールであり、また新たなスタートでもある。
自分は自分でサクラナイツのために、そしておかぴーのために、自分ができることをやっていこう、そう決意させた瞬間であった。
ひと通りのセレモニーが終わった後、優勝メンバー1人1人にコメントの時間が与えられた。
何故か川淵三郎Mリーグ最高顧問の隣に陣取った堀選手が場内を沸かせた後、おかぴーに順番が回る。
なお、この時はきちんと「岡田紗佳選手」と紹介されている。
あの1件の後のコメントだけに、開口一番で何と言うのか実に興味があった。
きっと、会場にいた皆さんもそう思っていたことだろう。
果たして、その第一声とは。
場内に溢れる笑い。
さすがはおかぴー、この微妙な空気を一瞬でエンターテイメントへと手組みしたのであった。
今期のMリーグは幕を閉じた。
しかし、Mリーガーたちに休息の時はない。
Mリーグがオフシーズンに入っても、各選手が自団体のリーグ戦や麻雀最強戦などの大会等で対局に臨む日は続いていく。
萩原選手や伊達選手はその合間を縫って、それぞれの表現活動に勤しむ時間もある。
おかぴーもまた、いただいたお仕事1つ1つを大切にしていきながら、
対局に、そして芸能活動にと東奔西走する日々が続いていく。
きっと桜騎士団にとっても、Mリーグのオフシーズンは休息の時ではない。
時にはリーグ戦や各大会を闘うサクラナイツの選手たちを桜援し、時に雀力を磨き、
時にサクラナイツと選手たちの魅力を外へ発信し、とやることがたくさんあるからだ。(もちろん仕事がある人は仕事が大前提の上で)
自分としても、来期の開幕までにはより桜騎士団の輪を広げ、自身の雀力を磨き、
そして何より、サクラナイツというチーム、岡田紗佳という雀士の存在をより外へ広げていこうと考えている。
今回のnoteがその一助になっているのであれば有り難い限りだ。
まあ、手っ取り早く名前を覚えてもらうには、Mリーグの視聴者をさらに増やして、
そのMリーグでおかぴーがいっぱい活躍して、たくさん名前を呼ばれるのが1番なんですけどね。
というわけで森井監督(もし見てたらですが)、
来期のレギュラーシーズンは、おかぴーを出来れば20戦以上は使っていただけませんかね?🙏
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