麻雀嫌いだった私が、1年後に麻雀で大号泣させられた話。

「ねえいい加減麻雀見るのやめてくれない。バラエティ見たいんだけど」

2020年12月、私が同棲している彼氏に吐き捨てたセリフ。
毎日毎日、彼氏が流す訳もわからない麻雀の試合映像に嫌気がさしていた。

私はありとあらゆる賭け事が嫌いで、彼が付き合う時にやめてもらったパチンコを再開しようものならおそらく我が家は戦争が起こる。

私の中では麻雀はその賭け事のくくりだった。だから毛嫌いしていた。

彼が見ていた麻雀も同じ類と感じており、小さい頃母の恋人が家で万札片手に寝ながらボートレースを見ていた時と同じ嫌悪感を覚えた。

毎日毎日、うざいなあ。なぜそんなに毎日毎日同じような映像を見るのか。と感じていた。


1年半後には、その同じ映像で涙で前が見えなくなるくらい感動することも知らずに。

Mリーグに、ハマる。


転機が訪れたのは、2021年の1月2日だった。
正月の親戚挨拶を終え自宅に戻ると、彼氏はまた凝りもせずテレビをつけた。



ーーーーあーあ、またMリーグか。



いつも彼氏が見ている映像はMリーグという麻雀のトーナメントであることはなんとなく音声を聞いて知っていた。
それでも全く興味は湧かなかった。見ようともしなかった。

私は正月特有のお笑いネタ番組を見たかったが、チャンネルジャンケンに敗北し、今日はなにをして暇を潰そうかと考えていた。

ところが聞こえてきた音声で、なにやら実況者が大興奮している。

役満?初日の出?

意味はわからなかったが、どうやらすごいことはわかった。少しだけ気になり、テレビに目をやるとすぐに



「16000は16100オール」



お世辞にもタイプの男性とは言い難い(後で大ファンになる堀慎吾選手、大変失礼な発言お許しください)選手が、なにかを成し遂げていた。



なにを成し遂げていたのかは、全くわからなかった。


だけれど、その所作に。
その凜とした、佇まいに。


なぜだか息を飲まされてしまった。


美しかった、とにかくなぜだか美しかった。


その夜、私はその動画を何度も繰り返し見た。
Mリーグを放映しているAbema TVは、過去の配信がプライム会員にならないと見れない。なので、すぐに契約した。

現在はYouTubeでも名シーンとして上がっているので、ぜひ見てほしい。


次第になんだか興奮して寝れなくなって、他の動画も見始めた。
するとさまざまな動画が心が熱くし、フツフツと自分の中でくすぶっていたものが刺激されるような感覚に陥る。



話は変わるが、私は音楽のライブとM-1が大好きだ。

フェスには毎年足を運ぶし、好きなパンクバンドが思い出の曲を演奏しようものなら途端に涙腺が壊れる。
コロナ禍前はライブで知り合った友達とそのまま飲み行き、年末イベントでは知らないおじさんと肩を組んで歌いながらカウントダウンをした。

M-1は毎年勝者の予想をするため予選を観戦することもあれば、ひとたびその年のM-1の話になれば、朝まで話が止まらない。
酔っ払って出会い酒場で知り合った男と、朝までM-1について語り合った後なぜか付き合っていたこともある。(その後数日ですぐ破局)

要はたぎるのが好きなのだ。
誰かが刹那のその瞬間に一生をかける、その瞬間が。
その時だけのために、命をかけ一生をかけ、成し遂げる時間が。

しかしコロナという未曾有の事態で、私の中の「たぎりたい願望」がくすぶりにくすぶっていた。




その「たぎりたい願望」が一気に解放されたのが、Mリーグの動画だった。中でも特に刺激されたのは、明け方に発掘したこの動画。

何度もいうが、私はこの時点でルールも何も全くわからない。

ただ、誰かが負けたことはわかった。そして負け顔が美しかった。
たった一度の何かで、大の大人が思いっきり感情を露わにして悔しそうに顔を歪める。
顔を惜しげもなくくっしゃくしゃにし、ガクリ、と肩を落としている。




その姿にとにかくたぎった。ただただたぎった。




夜中に布団の中でうおおおおおと叫びたい気分だった。
なぜだかわからないが4時に日本酒を開けた。



ーーーー麻雀ってすごい面白いのかもしれない。



それからはあまり時間はかからなかった。

まずは「Mリーグ」とディグる。
すると私の元来のイメージだった「賭け事」としての麻雀ではないことはすぐにわかった。
むしろそのイメージを払拭する目的で、開催されていることを知った。

そんなリーグとしての想いや、選手ひとりひとりのヒストリー、1試合1試合の重みや刹那を見れば見るほどハマった。

Mリーグは毎試合が、まるでスポーツの名試合のよう。
たった1回の行動が命取りとなり、負けてしまうこともあれば、逆に勝つ要因にもなったりする。
たった1度のトライに全力をかけているのをひしひしと感じた。
目まぐるしく動く試合展開に。毎度息を呑んだ。


しかも煩雑に見えたルールも、一度表面的にでもわかれば、どう勝敗がつくのかぐらいまでは容易にわかる。

かつ実況解説は数人の固定メンバーでまとめられている。
このメンバーがまたすごく、初心者でも聞いてもある程度わかるように工夫を凝らして実況解説してくれている。

ルールがわからなくても、声だけ実況だけを聞いていれば、なんとなく概要は掴めた。

サクラナイツに、更にハマる。


そしてMリーグを見ていくうちに、特にハマったチームができた。
それが「KADOKAWA サクラナイツ」だ。

「KADOKAWA サクラナイツ」、通称サクラナイツは内川幸太郎選手、岡田紗佳選手、沢崎誠選手、堀慎吾選手の4人からなるチーム。


そもそもMリーグとは、1チーム4人計8チームが、約半年ほどかけて優勝の座を争う、リーグ戦形式をとった麻雀リーグ。

まず世の中にいる数多くの麻雀プロのなか、Mリーガになることが至難の業(約32人限定の狭き門)だ。

そんな選ばれた麻雀プロだけが選手として、半年間プロ野球のように週4日試合を行う。

そして

全8チームでレギュラーシーズン
上位6チームがセミファイナルシーズン
上位4チームがファイナルシーズン

と絞っていき、チャンピオンを決めるのだ。
1度チャンピオンとなれば、賞金はなんと5000万円。

ただM-1でも誰かが言っていた。
「欲しいのは賞金じゃない、そのタイトルだ」

Mリーグは、各選手から同じような気概を感じた。

そんな熱い集団のMリーグの中でもサクラナイツは、一層目を引いた。
その理由は選手の個性にある。


まるでヒロインのように可愛くて、それでいてどう見ても強そうな強面の選手やベテランそうな選手にも果敢に立ち向かい、勝利を収める岡田紗佳選手。

普段はどうみても好々爺。だけれど麻雀卓につけば、まるで未来予知でもしているかのように予測もつかないゲーム展開を繰り広げ他を圧倒する沢崎誠選手。

通り名は小さな天才。プライベートでは遅刻魔で予定の管理も一人ではできない。だけれど麻雀だけは天才的。打ち方は所作が本当に美しく、ひたすらに強くて、強い堀慎吾選手。
ちなみに冒頭の2021年1月2日の対局で、役満四暗刻を上がった選手でもある。

そして最後に、内川幸太郎選手。主人公じみたその整ったルックスに負けず劣らずの整ったお手本のような試合展開。かつ、要所ではヒヤヒヤさせるようなハイリスクハイリターンを勝ち切る。王道主人公。
2つ目に紹介した動画で、悔しさに顔を歪めていた選手である。

年齢も個性もバラバラな4人だが、度々配信される楽屋映像では、驚くほど仲が良い。

プライベートは仲が良いけど、いざ戦場に行けば各々がめちゃくちゃ強くて勝ちぬいていく。時には負けもして、涙を流す。
それを、繰り返す。




私は思った。



ただの漫画やん。




サクラナイツは、現代社会に現れた、王道少年漫画の主人公パーティーなのだ。


DRAGON BALLでONE PIECEやん。


そうやって、見事にサクラナイツにもハマった。


ちなみに本記事はサクラナイツに完全にフォーカスしているが、他の7チームもそれぞれチームカラーがあり本当に面白い。
いつかそれぞれのチームカラーも、初めて見る人用にまとめてみたいと思っている。

Mリーグ2021-2022シーズンで、沼に落ちる


私は結局2021-2022年シーズン、毎日Mリーグのために家に帰るようになった。
ある程度重要でない夜の予定は、中日である水曜日に設定し、他の曜日は観戦に当てるほどの熱狂ぶりだった。

私の推しチーム・サクラナイツは、順調にMリーグを勝ち抜いていった。

リーグのMVP(リーグ戦のレギュラーシーズンの最も得点をとった選手に贈られる賞)を決める試合では特に熱狂した。
サクラナイツの屋台骨・沢崎選手とU-NEXT Pirates・瑞原明奈選手の真剣なぶつかり合いがものすごく手の握る展開だったからだ。
是非とも1度、見て欲しい。


しかし順調に見えたサクラナイツに試練は突然訪れる。

その沢崎選手の入院だ。
MVPまで争った超主力選手の欠場。


選手の士気は大丈夫か、と不安になるも


「沢崎さんに優勝を贈りたい」

そんなこれまた漫画のような言葉通り、サクラナイツは強かった。
そして有言実行するサクラナイツにますます熱狂した。


残り2日、4試合を残した時点で僅差の2位。
3人で丁寧に丁寧にバトンを繋いだ結果だ。
十分すぎるほど優勝が狙える位置だった。



しかし、試練は続く。

Mリーグでの選手入場はある意味花形に近い。

そのシーンを控えるほどの怪我…。SNS上では「痛風か?」などの憶測もあったが、実はこの時足の骨を折る重傷だったらしい。
あえて怪我の具合を公表しなかったのは、おそらくサポーターにに余計な心配やバイアスをかけさせないという配慮の上だったのであろう。

しかし足から下をカメラワークで隠してはいたが、堀選手の顔色は明らかに悪く脂汗が滲んでいた。



それでも戦うのは、なぜなのだろうか。
賞金?名誉?どちらでもない気がする。


なぜだかは選手本人に聞いてみないとわからない。


だけど、足はきっと激痛だっただろう。
それでも戦う堀選手の一挙手一投足が、とにかくかっこいい。



冒頭で絶望的なハンデを負ってもそれでも戦う、そのシーンはただの王道漫画そのものだった。
漫画のようなチームに、漫画のような展開が訪れていた。


誰も予想し得なかったシチュエーションに、展開に、熱狂した。


とにかくたぎった。馬鹿みたいにたぎった。

堀選手は2試合を戦いぬき、サクラナイツはたった2.6ポイント差の首位へ。


ちなみにこの2試合も、普通ではありえないような逆転に次ぐ逆転が起こるゲームメイク。
選手それぞれの戦術と、思惑と、そして意地が激しくぶつかり合う試合展開なので是非とも見て欲しい。
(Abemaのプレミアム会員ならすぐに、Mリーグの公式YouTubeでもそのうち切り抜き動画が上がるので見れる、かも)

この時点で、まだ4チーム中3チームに優勝の可能性が残されていた。
稀に見る接戦も接戦だ。

そして遂に迎えた最終日。

ここでドラマは起きる。

1試合目を終え、内川選手が堅実な大健闘。
サクラナイツは1位に。まだ3チームに優勝の可能性は残っていたが、一番優勝に近い位置にいた。


つまり逃げ切れば、優勝。


麻雀は1試合おおよそ8ゲーム(正しい単位は1局、2局だが、わかりやすいように1ゲーム、2ゲームとする)。
親番次第で実際に行うゲーム数は前後するが、この8ゲームに選手は半年間約200以上の試合の結論を出す。

2試合目は負傷中の堀選手。怪我をおしてのなおの勝負強さからの起用だろう。

ところが2試合目東4局(大体試合の半分、4ゲーム目くらい)事件が起こる。


ライバルチームであるセガサミーフェニックス近藤誠一選手が、一気に大逆転の大物手を和了(要は奇跡の大得点)したのである。

一気にこれで形勢が変わる。

正直この時点ではかなりの人数が、フェニックスの優勝を予感しただろう。

またもう1つのライバルチーム、渋谷Abemasの多井隆晴選手も驚異的な追い上げを見せた。

正直後半戦になった時点で、更なる奇跡でも起こさなければ優勝は難しい位置にいたのだが、何度でも諦めない。

何度も何度も、食らいつく。そして何度も何度も、奇跡の片鱗を掴む。
もしかしたら…を何度も想像させた。


試合途中多井選手が手を考えているときに、自身の頬をペチンと殴るシーンがある。
そのシーンは今後の麻雀史、いやスポーツ史の名シーンとして残るのではないだろうか。

それほどまでに、熱さを感じさせた。

多井選手の猛攻、さらにその後ろにはさらなるポイント追加をし、一気に突き放しを狙う近藤選手。

サクラナイツ堀選手は完全に間に挟まれていた。

サクラナイツももうここまでか、というところまで追い詰められた。



しかし、見せ場は突然訪れる。




堀選手はどれだけ窮地に追い込まれても、めげない。
絶対に、めげない。

そして、たった一縷のチャンスを、決めた。
再逆転となる大物手(大量得点)を。


その時の楽屋の瞬間がこちら。
「勝たなきゃ意味ないんだ」と呟き、覚悟を決めた目で見つめ続ける内川選手。

そして堀選手が点数を決めた瞬間、岡田選手は大粒の涙。サクラナイツチーム森井監督は声を上げて男泣き。

この楽屋の映像だけで漫画だ。ドラマだ。

ちなみに監督は興奮しすぎて、社会の窓が全開になっていることを後ほどファンに突っ込まれている。



そしてフェニックスとわずか1,000ポイントの差で、試合は最後の1局(ラスト1ゲーム)を迎える。
1,000ポイントというのは本当に僅かな差。

次のゲームでフェニックス、サクラナイツどんな状況でも次で少しでもポイントを重ねれば優勝なのだ。

陸上で言うと0.1秒差。
フィギュアスケートで言うと0.1ポイント差


漫画で言うとこんな感じ。ピッコロvs悟空。

スポーツで例えても漫画で例えても稀に見るような僅差で。




競り勝った。
チームメイトの入院にも、直前の大怪我にも負けず。

堀選手が、サクラナイツが、競り勝った。
たくさんの奇跡の積み重ねだった。




とにかく泣いた。メンバーも、ファンも、みんな泣いた。
SNSでは、ファンの喜びとメンバーへの労いで溢れた。
ファン同士で喜びを分かち合った。

たくさんのファンが優勝の余韻で、興奮して寝れない夜を過ごした。

私もその一人だった。
目が覚めては「サクラナイツ」でSNSを検索し、人々の感想を見た。
そして自分ごとのように嬉しくなった。


とにかく、熱狂したのだ。


なぜこんなにハマるのか


なぜこんなに、熱狂するのか。
なぜこんなに、価値観が変わるほど、はまったのか。
なぜこんなに、Mリーグは面白いのか。


優勝インタビューで内川幸太郎選手がこのように発言している。


「麻雀はたった1つ違うだけで結果が違う。そんな脆いものに全力をかけてやっている」


あの時のほんの少しの行動で。たった1秒の挙動で。
試合の結果は変わる。

だからその戦略を、そのスタイルを、その思考を。一生をかけて選手は磨くのだ。
そのぶつかり合いが、このMリーグなのである。




人の刹那が、感情が、半年間てんこ盛りで見れるのがMリーグなのである。

だからこそ、たぎる。見ているこちらが感情移入してしまう。



そうやって麻雀嫌いだった私は、たった1年で今や全世界にこの面白さを伝えたい熱狂的なファンと化したのだった。


この記事を書いた目的


最後に内川選手はインタビューでこうも発言している。
「この麻雀という競技を僕らは1人でも多くの人に見ていただき、実践してもらい、目標となる憧れとなる存在になれるように日々頑張っていきたい」


勝手に影響され、私は寝る間も惜しんでこの記事を書いている。
ここまでダラダラと綴ってしまったが、言いたいことはただ1つなのだ。






「Mリーグ面白いから本当にみんな見て!!!!!!」



賭け事というイメージ…
だよね、私もそうだった。


ルールが煩雑そうだから…
うんうん気持ちわかるよ。私も最初意味わかんなかった。


でもイメージするよりも全然低いハードル超えたら、
現実世界なのに、漫画よりアツい
そんな感動があなたを待っている。



ほんと来年一緒に見よう!!!!!!







最後に本当にMリーグに関わった皆様、お疲れ様でした。
選手・監督・スタッフ様はもちろん、たくさんのファンの皆様まで。


この半年さいっこうに楽しい時間を過ごせました。


駄文で、かつニュアンスだったりもろもろ文章的にも違う箇所多々あると思いますが、精一杯私の思いを吐き出したつもりです。

来年も楽しみだなぁMリーグ。




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