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Mリーグ2023-24ドラフト会議 指名予想答え合わせと所感(前編)

前回のnoteが自分史上最大の反響を呼び、名だたるnoteの先輩の皆様からも反応をいただけたのは嬉しい限りでした。

プロ野球もそうですけど、ドラフトで誰が選ばれるのかをあれこれ考えるのはやっぱり楽しいもので、
それを突き詰めたような内容になったからこそ、前回のnoteはあれだけの反響になったのかなと思っております。

で、ドラフトが終わってみての率直な気持ちとしては、指名されたプロがどこまでやれるのかという期待感と、あまり予想が当たらなかったことの空虚感が同居しております😅

なお、はじめに断っておきますが、今回の各チームのドラフト指名結果に対して、
「なんで○○pなんて選ぶんだ」とか「どうして○○pが選ばれないんだ」とか、とやかく文句を言うつもりはさらさらございません。
ファンや世間の声を受けて指名するということもあるにはありますが、
やはりチーム・監督が指名したいと思う人を指名するのが本来のドラフトというものなので、
今回指名された7人というのが、各チームが求めている人材ということは間違いありません。
ただ、各チームが何を軸として指名を考えるのかはそれこそ内部の人間でもない限りわからないわけで、
だから指名予想って難しいんですよね…(と言い訳をしてみる😓)


というわけで、ここからは今回のドラフトの各チームの指名結果について、予想との答え合わせ、所感、そして自分なりの考察を書かせていただきたいのですが、
実は元々は1本で纏める予定だったにも関わらず、BEASTJapanext(以下BEAST)が終わった時点で早くも14000文字を突破したため、今回は前編・後編に分けさせていただくことにしました。

今回の前編ではBEASTについて書かせていただきます。
セガサミーフェニックス(以下フェニックス)、赤坂ドリブンズ(以下ドリブンズ)については後編にて書かせていただきます。
後編も出来る限り早く投稿するようにいたしますので宜しくお願い致します。



BEAST:リークを曲げない指名

ドラフト前に騒がれたのが、BEASTの指名プロの情報のリークだった。
結果的にオーディション優勝の菅原千瑛p以外の3人はリーク通りの顔触れとなった。
この結果に対し「リーク通りで興醒めした」「つまらなすぎる」という意見があちこちで見られた。

こういった意見が出てくる背景としては、
オーディションファイナルがあまりに話題を呼びすぎて、オーディションファイナルで敗れた3人の評価が爆上がりしすぎて、
もうファイナルで闘った4人でチーム組めばいいのにといった声まで出たことへの反動というのも大きいような気がする。
あれだけ筋書きのないようなドラマを生み出した後での筋書きどおりの指名結果なわけだから、さすがに興醒めしてしまうのも仕方ないといえば仕方ない。

かく言う自分はというと、リークについては知ってはいたのだが、リーク通りの指名結果には失望も興醒めも特になく、むしろ「よく(リークを)曲げなかったな」というのが率直な感想だった。
少なくとも自分はこれだけ情報が漏れたならば、さすがに1人は顔触れを変えたいと思ってしまうのだが、それをしてこないところにチーム・監督の意思の強さ、思い入れの強さが見えた気がした。

BEAST:1位指名は思い入れの証

BEASTの指名結果と予想の答え合わせは以下の通り。

【指名結果】
1位指名:猿川真寿p
2位指名:菅原千瑛p
3位指名:鈴木大介p
4位指名:中田花奈p

【予想】
1位指名:鈴木大介p → △
2位指名:HIRO柴田p
3位指名:仲田加南p
4位指名:菅原千瑛p → △
(○:順位まで的中、△:指名のみ的中)

新規参戦のBEASTは、どの要素に重きを置くのかでドラフトの顔触れがガラッと変わってくる。
自分の予想では、話題性のインパクトは持ちつつも、チームとして結果を残すことを軸として考えると見ていた。

1位予想の鈴木大介pは最強位という実績に加えて「二刀流」のインパクトがあり、他チームの「ドラ1」と並んでも遜色ないからこそチームの顔として相応しいと見ていた。

2位予想のHIRO柴田p、3位予想の仲田加南pは、ともに早い段階からMリーガー候補として名前が挙がり続け、今年の上半期にてMリーガーと決勝を闘ってタイトルを獲得しており、
特に直近での対Mリーガーの実績があることで、Mリーグで結果を残すイメージが湧きやすく、安定した成績を残す上で欲しいところではないかと思っていた。

結果としては大介pのみ指名予想が当たったが1位指名ではなかった。
仮にリーク通りになるのだとしても1位指名は大介pだと思っていたので、猿川pの1位指名にはさすがに驚かされた。

ドラフト後の囲み取材にて、BEASTの高橋暁監督は猿川pの指名についてこう語っている。

BEAST Japanextのチームカラーは攻撃的な麻雀ということを、オーディションのときからお伝えしていました。そこに合致する一番のプロ雀士かなということで決めました。私としては「モンキーマジック」と呼ばれる、意外なところから高打点を狙っていくような試合運び、魅せる麻雀というところと、攻撃的に、常に前に前にとやっているところがいいなと思いました。

また、指名順に関してはこう語っている。

最初はドラフト1位ということで、猿川プロを指名させていただきました。菅原プロは皆さんご存じで、ちまたではいろいろ予想はされていましたが、鈴木プロや中田プロという、少しざわつくかも、という方を3位・4位に持ってきたところがあります。

大介p中田pはともに異業種からプロとなったプロ雀士であり、実際に今回指名されただけでもなかなかに周囲をざわつかせている中で、
そこからさらに上位指名となれば、少しどころかだいぶ周囲をざわつかせることになるのは想像に難くない。

個人的には中田pにはさすがに重荷だろうと思う一方で、最強位の経験がある大介pにはそれを背負えるだけのものはあると踏んでいたのだが、
高橋監督としては、大介pには何かと注目を浴びていく「ドラ1」を背負わせるよりは、伸び伸びと闘える立場を与えた方がよいと考えたということなのだろう。
そして、指名した4人の中で圧倒的にプロ歴が長い猿川p(プロ23年目)を1位指名とした。
つまり、高橋監督は話題性よりも麻雀への信頼を「ドラ1」に求めたということだ。



名誉あるMリーグ9人目の「ドラ1」となった猿川pは、2008年に第17期麻雀マスターズで優勝。
ABEMAで放送されていたRTDリーグには2017シーズンから参加していたことで、Mリーグドラフトでは初年度の2018シーズンから指名候補として名前が挙がってはいた。
しかし、Mリーグ開幕以降でのビッグタイトル獲得はなく、目立った成績といえば麻雀最強戦でのファイナル進出ぐらいだが、決勝卓には2017年を最後に進めておらず、
Mリーガーになるような印象はそこまで強く感じてはいなかった。

もちろん人によって麻雀の強さや実力をどこに感じるかはそれぞれだと思うし、そこに明確な答えなどはないと思っている。
ただ、自分の感覚からすれば、たとえそれが「上振れ」の極みだったとしても、大きな舞台でタイトルを勝ちきれるようなプロは、
他のプロよりも強いと感じられて然るべきであり、Mリーグで闘うことも相応しいと思っている。
実際、多井隆晴選手瀬戸熊直樹選手佐々木寿人選手白鳥翔選手などはMリーガーになってからもタイトルを獲っている。
女性選手なら魚谷侑未選手二階堂瑠美選手などもそうだ。

猿川pは長らく第一線で闘っているだけにベースとしての強さについては疑いがないのだが、大舞台で結果を残すような、いわゆる「突き抜けた強さ」というものは感じられない。
今回のドラフトでも、リーク情報に挙がっていたこともあってか、直近でタイトルを獲得したプロと比べると、予想の盛り上がりは乏しかったように感じる。
では、そんな猿川pがどうして指名されたのか。
その理由として辿り着くのは、結局は高橋監督の思い入れの強さということだと思うのだ。

高橋監督についてネット上でいろいろ調べてみたのだが、監督就任からまだ間がないこともあってか、個人の人となりについてはほとんどわからなかった。
ただ見た感じからして、年齢はおそらく50歳前後ではないかと見ている。

高橋監督が若かりし頃の麻雀界は、まだMリーグはおろかABEMAすらなく、最強戦とモンド杯が放送対局の中心だった。(芸能人同士が闘う「われポン」は除く)

菅原千瑛pが優勝したオーディションに山井弘p宮内こずえpが参加したことで「モンド杯」というワードが一時的に盛り上がりを見せたが、
この2人がオーディションに呼ばれた理由の1つとして、当時のモンド杯・女流モンド杯で2人の闘牌を見ていた高橋監督が、
2人がMリーグ入りを懸けて闘う姿を見たいという想いもあったのではないかと感じ始めるようになった。

どのジャンルにおいても、自分と世代が近い存在にはどこか特別な想いを抱くものである。
自分はダルビッシュ有選手と同世代であり、今年のWBCでの闘いにはやはり特別なものを感じながら応援していた。

高橋監督はきっと、自身と世代が近く、最強戦で長く活躍を続けてきた猿川pに相当特別な想いがあるに違いない。
もしかしたら、猿川pの存在がなければBEASTというチームすら誕生していなかったのかもしれない。
そう考えれば、猿川pの1位指名にも十分な相応しさというのがあると言えるのではないだろうか。

ちなみにチーム名のBEASTは英語で「野獣」「獣」という意味。
これが名前に「猿」がつく猿川pを意識してつけたというのであれば、より思い入れの強さを表すエピソードになりそうだ。



高橋監督の想いを背負ってMリーグに飛び込む猿川p、より大きな舞台でその真価をどこまで発揮できるのか。

1つ楽しみな点があるとすれば、最強戦でも度々見せている高打点の和了、高橋監督も言及していた「モンキーマジック」だろう。

6回目のファイナル進出を決めた今年の麻雀最強戦予選「最高勝率決戦」でも予選卓の東1局にいきなりの倍満を決めている。
和了った立直ツモ七対子ドラドラ裏裏は倍満の基本形ともいえる形なのだが、
鳴いてのホンイツやトイトイ、鳴かずの四暗刻も見えた手牌から七対子ドラ待ち聴牌即立直という見切りの速さから和了をものにしている。

Mリーグ視聴者ならご存知の通りだが、Mリーグルールは一発裏ドラ槓ドラに加えて赤ドラありというインフレルールであり、
他のルールと比べてもかなり打点が作りやすい。
それ故に立直が他のルール以上に効果を発揮したり、追い込まれたところからの逆転劇が起こりやすい。

赤ドラなしルールの最強戦でも過去に倍満ツモ条件を満たして逆転での勝ち上がりを決めるなど、高打点の手作りで実績を残し続けている猿川pだけに、
赤ドラありのMリーグルールはむしろ他のルールよりも闘いやすいまであるのかもしれない。
過去に黒沢咲選手近藤誠一選手(現監督)が見せてきたオーラスでの大逆転を、1度に留まらず何度も見せてくれるのではないか、そんな期待を抱かせてくれる選手といえるだろう。


BEAST:「二刀流」の未知なる挑戦

BEASTの1位指名予想の鈴木大介pは3位での指名となった。
高橋監督が「ドラ1」を背負わせなかったことでより伸び伸びと闘いやすくはなるだろうし、
史上初となる将棋プロ棋士とMリーガーの「二刀流」もしやすくなったのではないかと思われる。

大介pについてはドラフト予想のnoteでも散々書いているので詳細については省くが、概略を書くとこんな感じだ。

・麻雀最強戦2019優勝(最強位) 
・麻雀最強戦4年連続ファイナル進出
・今年5月に日本プロ麻雀連盟(以下連盟)入会
・プロ入り後にTwitterアカウント、YouTubeチャンネル開設

プロ入りとSNS関連については、Mリーガーになるという道筋がなければわざわざこのタイミングでする必要性はないわけで、
こういった動きの背景にはMリーグがあると目されていたが、まさにその通りになった。

上の記事にて大介pは指名に対してこのようにコメントしている。

光栄の極みではございますが、将棋対局や所属団体リーグ戦などのスケジュール調整が一番の課題となりますので、それぞれの所属団体と相談させて頂いた上で結論を出させて頂きたいと存じます

ただ言わせてもらうと、プロ雀士として所属する連盟、プロ棋士として所属する日本将棋連盟という2つの「連盟」に対して、BEASTが何の根回しもしていないとは到底考えづらい。
根回しも何もない中で指名となれば2つの「連盟」、特に日本将棋連盟が混乱に陥るのは容易に想像できるだけに、
大企業をオーナーに持つBEASTがきちんとその辺りの筋を通していることはまず間違いないと見ていいし、
2つの「連盟」が「二刀流」にゴーサインを出したからこそ「Mリーガー・鈴木大介」が日の目を見ることができたのだと言ってもいいだろう。




大介pは近年の麻雀界では珍しい部類に入る感覚派と言っていい打ち筋で、最近の言葉で言えばMリーグ・最強戦実況の日吉辰哉pが命名した「ボディ麻雀」の使い手ともいえる。
優勝した麻雀最強戦2019ファイナルでは、理論派の雄の1人で現サクラナイツの堀慎吾選手と激闘を演じた。

上の動画では、自身が大きなトップ目で迎えた南2局の親番にて、
ラス目の堀選手からの立直に対して立直宣言牌の8mをポンしてタンヤオのみ、それも4p片和了の聴牌を入れて和了をものにしている。

他三者とは20000点以上離してのトップ目、ラス目からの立直、捨て牌は三段目という状況。
このまま流局で親を流しても優位な状況が残る一方で、堀選手の立直に放銃すれば堀選手を含む他三者の追い上げを楽にしてしまいかねない。
しかも自身はタンヤオのみ、かつ4p片和了となる手。
既にカン6mを仕掛けているとはいえ、理論として考えるとほぼオリでいいところだ。
立直宣言牌の8mは自身が対子で持っていて3pと發も現物なので4巡は凌げるし、流局には相当持っていけそうなところだ。
それでも大介pは8mをポンして片和了の聴牌を入れて和了をものにしたのだ。

果たして、今のMリーガーのうちの何人がこれと同じ選択を取れるのだろうか。
まさに「ボディ麻雀」の片鱗が見えたといえる1局だ。


麻雀最強戦ファイナルでの激闘から約1年後、
当時の最強位の大介p(当時はアマチュア)とサクラナイツ入団後の堀選手が麻雀について徹底的に討論する企画が最強戦チャンネルにて配信されている。
自身の理論を持つ堀選手と「ボディ麻雀」の大介pだけに、当然のように討論は白熱することとなった。

堀選手は麻雀界屈指の将棋好きとして知られているが、こと麻雀においては大介pに負けられないという矜持があるだろうし、
いよいよ同じMリーガーとなったことで、さらにその意識は高まっていくものと思われる。

他にも園田賢選手小林剛選手勝又健志選手など、自身の理論で武装したMリーガーは数多くいる。
そんなMリーガーたちと大介pが相対する画が今までよりもさらに見られるようになるのは楽しみでしかないし、きっとMリーグでも数々の名勝負を生み出してくれるはずだ。




その「ボディ麻雀」と独自の言動もあり、大介pのMリーグ入りには否定的な意見も多い。
プロ棋士とMリーガーの「二刀流」についても、そもそも出来るのかという声もあったりする。
ただ、「二刀流」に関しては2つの「連盟」の協力もあるだろうし、そこまで苦労はしないものと思っている。

自分は藤井聡太七冠をキッカケに将棋好き、特に「観る将」となった経緯があり、将棋界についてそれなりの知識がある上で言わせていただくのだが、
実際のところ大介pはいわゆる「トップ棋士」のカテゴリではなく、近年ではタイトル挑戦権争いに殆ど絡んでいない。
リーグ戦である順位戦(A級1位が名人挑戦)を除けば、将棋の主要タイトルの大半はトーナメント戦で、基本は1回敗れた時点で敗退となる。
それ故、各タイトル戦で挑戦権争いに絡むような「トップ棋士」は年間50局以上を指すこともあるのだが、
前年度の大介pの対局数は33局(15勝18敗)、今年度は6月30日時点でまだ3局(1勝2敗)である。

リーグ戦である順位戦の日程との調整は確かに必要だが、既に40代後半、かつ若い有望な棋士が次々に出てきている中で、
今後のプロ棋士としての対局がスケジュールを圧迫するとは到底考えづらく、むしろこれからは麻雀の方が比率が大きくなっていくのではとすら思っている。

それに加え、Mリーグは週4回開催(チーム数増加に伴うレギュレーション変更の可能性はあり)であり、1日2回登板の連闘も効くだけに、十分に「二刀流」は可能であると見ている。


思えば大谷翔平選手も日本で「二刀流」を始めた頃はかなり否定的な意見が多かったし、
かく言う自分もどちらかに絞った方がより成績が出るのではと懐疑的ではあった。
しかし、今となってはその「二刀流」が「ベーブルース以来」の記録を次々に生み出してメジャーリーグの歴史を変え続け、WBCでは日本を3大会ぶりの世界一にまで押し上げた。
大谷選手は自らの結果をもって周囲の雑音を封じてみせたのだ。

日本人メジャーリーガーがいなかった時代にメジャーリーグに挑戦し、新人王獲得やノーヒットノーランといった実績を残した野茂英雄選手もそうだったが、
誰も無し得ていないことに挑むパイオニアには、常に保守的な立場から否定的な意見が出てくるものである。
今回の大介pの「二刀流」も、トップクラスの麻雀プロのファンであるとか、理論派こそ全てと思う麻雀ファンからすれば恰好の攻撃の的ではある。
ただ、その辺はチームも本人も織り込み済みだろうし、それができるという自信があるからこそBEASTは指名しているものと見ている。

将棋と比べると自身の知識が結果に直結しにくい麻雀の世界で、大介pはいかにして道を切り拓き、周囲の雑音を封じ込ませるのか。
今年49歳を迎えるオールド・ルーキーの未知なる挑戦が幕を開けようとしている。


BEAST:決意と覚悟のMリーグ挑戦

最初に断らせていただきたいのだが、自分は中田花奈pが2021年にプロ入りした当初から、彼女がMリーグで闘う日は必ずや来るものと思っていたし、
実力・実績に比重を置かないで考えるのであれば、Mリーガーとして選ばれるだけの存在感・訴求力は十分あるだけに、いずれどこかでMリーガーになるものと思っていた。

ただ、元々彼女はEX風林火山(以下風林火山)が好きだと公言し、2021年に行われた風林火山オーディションに参加したり、勝又健志選手から師事を受けていたということもあり、
自分はてっきり風林火山に入りたいものだと思っていて、風林火山以外からのラブコールは全て断るものだとばかり思っていた。
それだけに(リーク通りとはいえ)風林火山と闘うことになる今回のBEAST指名には驚かされたのだ。

Mリーグ2022-23シーズンでは、ファイナル進出できなければ、規定により選手入れ替えを余儀なくされていた風林火山。
それを見越して「IKUSA」を開催したのだが、結果としてはファイナル進出で向こう2年は選手入れ替えの必要はなくなった。
今や勝又健志選手松ヶ瀬隆弥選手、そして「るみあき」の存在感が堅いだけに、今後も選手入れ替え規定に引っかからない限りは相当メンバー交代はなさそうに思える。
中田pもそれを感じていたのかは定かではないが、今回の「IKUSA」に中田pはエントリーしていなかった。
当初は自身が経営している麻雀カフェ「Chun.」との兼ね合いとかなのかと思っていたが、思えばこの時点でBEASTから声が掛かっていたということなのかもしれない。



プロ3年目の中田pにはまだビッグタイトル獲得の経験はない。
しかしながら、「元乃木坂46」の肩書をもってプロ入りしただけに、プロ入り直後から所属先の連盟の扱いは手厚かった。
プロ1年目の2021年に単独での麻雀格闘倶楽部への新規参戦を果たし、
その年の投票選抜戦ではKONAMI麻雀格闘倶楽部(以下格闘倶楽部)の高宮まり選手が長く続けていた連覇を止める1位となった。

昨年の投票選抜戦では連覇とはならなかったものの、魚谷侑未選手や「るみあき」を上回っての6位(36人中)と上位につけており、
「元乃木坂46」としての人気の地盤の堅さを改めて示す形となった。

投票選抜戦で上位に入るほどの訴求力を持つ中田pということもあり、大小様々な放送対局にも呼ばれ続けていった。

2021年に行われたRTD Girls Tournament 2021では、大会開催中に格闘倶楽部からドラフト指名された伊達朱里紗選手、奇しくもBEASTでチームメイトとなる菅原千瑛pなどと激闘を繰り広げた(最終順位は4位)。

また、2021年には麻雀最強戦のアシスタントを務め、その放送内では、
「教官」の渋川難波p(現サクラナイツ)を始めとする様々なトッププロたちから様々な教えを請う「かなりん試練の道」というコーナーも作られた。

そして、アシスタントを務めた翌年からは2年続けて最強戦予選に登場。
いずれもファイナル進出は果たせずも決勝卓までは勝ち上がっている。

今年の最強戦予選「最強&インフルエンサー決戦」決勝卓では、東1局に役なし黙聴からロンの誤発声でチョンボとなり、いきなり12000点を減らす苦しい展開を自ら作り出してしまう。
いくら麻雀を打ち慣れている人でも心が折れそうになる展開の中、やり直しとなった2回目の東1局でチョンボの分を一気に取り返す倍満を決めてみせた。

中が暗刻、自風の西が対子、ドラで場風の東が対子の配牌は「もってる」という言葉で片付けられるかもしれないが、
打ち出された1枚目の西から積極的にポンで仕掛けていったことが功を奏し、ドラの東を引き入れて役牌3種ドラ3の跳満聴牌(ペン7m待ち)。
そこからさらに雀頭だった7pをツモって、役牌3種ドラ3にトイトイ三暗刻までついた倍満確定の9m単騎へ。
最後は自身の目から7m、8mとも3枚見えで勝負手を入れていた白銀紗希p(現女流桜花)から9mを出和了となった。

今回のnote執筆にあたり改めて動画を見返したのだが、印象的だったのはペン7m待ちから対子の7pをツモっての9m単騎への受け替え選択の速さだった。
チョンボ直後の大物手、和了り逃せば優勝の可能性がぐっと減る場面だけに慎重になってもおかしくないところだったが、まるで事前に決めていたかのようなスムーズさだった。
結果的に打ち出した8mがポンされたことで9mがワンチャンス(リャンメン待ちに当たりづらい牌)となったことも大きかったように感じる。

見る人が見れば称賛のハードルが低いのかもしれないが、
たとえアマチュアの自分でも有り得ない放銃をしたりすればメンタルがやられるし、そんな中で冷静な判断をすることが難しいのもわかる。
だからこそ、この中田pの和了には「弱い」と言われながらもたまに見える真のメンタルの強さというものを感じるのだ。
その背景にはもちろん乃木坂46時代の経験もあるだろうが、やはり放送対局の機会を多く与えられてきたことも少なからず影響しているのではないかと思っている。


そして、今年放送された「天空麻雀24」では女流プロ大会で優勝を果たし、遂に放送対局での初優勝を掴み取った。
しかも決勝の相手は、格闘倶楽部の高宮まり選手、TEAM雷電(以下雷電)の黒沢咲選手、そして自身が好きだと公言している風林火山の二階堂瑠美選手と全員がMリーガーだった。

それまでもMリーガーとしてのラブコールはあったそうだが、自身の実力がまだ備わっていないとして断ってきていたという話もある中田p
その中田pが遂に一歩を踏み出すキッカケとなったのが、この天空麻雀での優勝なのではないかと思っている。
Mリーグを席巻する先輩たちを相手に勝ちきったことはきっと相当な自信に繋がったはずだ。

そして、その中田pに対してBEASTはドラフト指名を行った。
4位指名という1番の下位での指名としたのは、上位指名による本人への重圧と周囲からの雑音を少しでも消したいという意図が見てとれる。

個人的には、各大会で勝ちきれなかったり、最強戦でのチョンボがあったことで、Mリーガーとして起用することを躊躇われるのではないかと思うところがあったのだが、
BEASTにはそんな迷いなど微塵もなかったということだ。

中田pの指名についての高橋監督のコメントはこうだ。

元乃木坂46のメンバーということで、大舞台も経験されていますし、そこで活躍してパフォーマンスを発揮してきた、芯の強さもあります。
実力はまだ荒削りな部分もあるかもしれませんが、チーム全体のバランスを見たときに、猿川プロや菅原プロ、鈴木プロと一緒に戦っていく中で、またさらに進化してくれるのではないかと期待しています。

決して実力ありきでの指名ではなく、その将来性を高く買われているのだということがよくわかる。



中田pは今回28歳でのドラフト指名となったが、Mリーグの歴史において20代でドラフト指名を受けたのは中田pの前には4人しかいない。(年齢非公表の雷電・黒沢咲選手は除く)
2018年に指名された格闘倶楽部・高宮まり選手(当時29歳)、渋谷ABEMAS・松本吉弘選手(当時26歳)、
2019年に指名されたKADOKAWAサクラナイツ・岡田紗佳選手(当時25歳)、ドリブンズ・丸山奏子選手(当時26歳)だ。

このうち、松本選手には發王位獲得の実績があったが、他の女性3選手にはビッグタイトルの経験はなかった。
しかし、高宮選手には麻雀格闘倶楽部の投票選抜戦での不動のNo.1という人気があり、
岡田選手には芸能人との「二刀流」という話題性、そして数々の放送対局での優勝に「われポン」での九蓮宝燈和了といった「もってる」活躍があった。
丸山選手に関しては詳しく書くと複雑なので簡略に書くと、その将来性を見込まれての指名となった。

結果、丸山選手はチームの期待に応えられなかった形で今期限りの契約満了となったが、残りの3選手のうち、
松本選手岡田選手はMリーグ優勝を経験し、松本選手高宮選手はMリーグでの役満和了を記録している。
通算での個人スコアには個人差はあるものの、いずれも相応しくないといえるような成績ではないと思っている。

20代で入団した選手たち、特に女性3選手は、当初は実績や経験の無さから不安視する声も挙がってはいたが、
結果として丸山選手以外はMリーグでしっかりと実績を残しているし、個人としても岡田選手の女流プロ麻雀日本シリーズ優勝など、各選手がMリーグ入り後も実績を残している。
そんな各選手の活躍を見ていて、自分が感じるのがこの言葉の重みだ。

大舞台が選手を育ててくれる。逆に言えば、大きな舞台を経験しないと、飛躍はない。

スワローズの黄金時代を築いた名将である故・野村克也氏の語録の1つだ。

入団1年目から戦力の一員としてMリーグの大舞台で使われ続けた高宮選手松本選手岡田選手は、Mリーグでもそれ以外の舞台でも活躍の幅を広げている。
一方で入団1年目から出場試合数を絞られていた丸山選手は目立った結果を残せぬままに契約満了となった。
当然そこには偶然の要素も絡んでくるとは思うのだが、少なくとも目に見える結果としてはこういったものが如実に現れているのである。


赤ありのインフレルール、限られた試合数ということもあり、Mリーグは麻雀の実力を図る上で相応しくないという人もいる。
確かにそうなのかもしれないが、Mリーグの主たる目的は決してそういうことではないと自分は思っている。
Mリーグに最も求められているもの、それは「熱狂を外へ」という言葉が表すように、
麻雀というコンテンツの面白さ、そして対局から生まれる様々なドラマの面白さを、麻雀を全く知らない層に伝えることだと思うのだ。

今やMリーグは日本、否、世界で最も見られている放送対局になった。
その舞台で闘うということは、その打牌選択の1打1打をより多くの人が共有することになる。
結果が出れば称賛される一方、不用意な打牌をすれば非難が集中することもある。
時にはその人間性を疑うようなコメントも飛ぶことがあるが、そういったものから得る悔しさや辛さもまた成長への糧になる。
Mリーグは麻雀のコンテンツの素晴らしさを伝えるとともに、そこで闘う選手たちをさらに磨かせる場所ともいえると思っている。


ドラフト指名直後から早くも否定的な声が飛び始めている中田p
Mリーグが開幕すれば、さらにそれが加速していくことは容易に想像できる。
中田pのファンからしてみれば胸が苦しいかもしれないが、中田pはそういったことも覚悟できたからこそMリーグを決意したわけであり、
BEASTが指名したのも、それを乗り越えることができるという自信があるが故の指名であるはずなのだ。
どれだけの試合数を経験するのかはまだわからないが、少なくとも必要最低出場試合数の10試合に留めることはしないと思っている。

高宮選手岡田選手のように、中田pもいずれは押しも押されもせぬスター雀士にならなければいけないと自分は思っている。
それが所属する連盟やMリーグ、さらには麻雀界全体のさらなる飛躍に向けての必要なピースだと思っている。
決して順風満帆にはいかないだろうし、様々な壁にもぶち当たるかもしれないが、そんな時でも後ろには乃木坂46時代からのファンがずっとついている。
そして、そんなファンたちの支えがあれば、乗り越えられない壁など決してないと思っている。

その決意と覚悟がMリーグの舞台で実を結び、Mリーグにさらなる熱狂をもたらすその日まで、
「雀卓のインフルエンサー」改め「Mリーグのインフルエンサー」の挑戦が始まる。


BEAST:菅原千瑛pに求められるもの

オーディション優勝の菅原千瑛pは2位指名となった。
指名されなかったらさすがに暴動必至だけにそれだけはないと思っていたが、
自分の予想では4位指名だっただけに、2位指名にはかなり驚いた。
ただ、改めてBEASTのドラフト指名順を振り返ると、この2位指名には納得がいくものはあった。

1位指名:猿川真寿p
2位指名:菅原千瑛p
3位指名:鈴木大介p
4位指名:中田花奈p

これがBEASTの指名順なのだが、先述のように菅原p以外の3人は早い段階で固まっていて、猿川pには高橋監督の思い入れがあり、
大介p中田pには上位指名で過度なプレッシャーをかけたくないという意図があるというのであれば、そもそもオーディションがいかなる結果になろうと、

1位指名:猿川真寿p
2位指名:(オーディション優勝者)
3位指名:鈴木大介p
4位指名:中田花奈p

というのが規定事項だったのではないかと考えている。
仮にオーディション優勝者が新井啓文pでも浅井堂岐pでも内田みこpでも菅原p同様に2位指名となっていたのではないだろうか。

結果として菅原pが優勝したことで指名順が五十音順と全く同じになったのだが、これこそ単なる偶然の賜物だろうと思っている。


菅原pに対して高橋監督はこうコメントしている。

オーディション決勝の南4局の戦い方もそうですし、運も兼ね備えていると思っています。明るい性格で、チームのムードメーカーになってくれると思います。タイトルも持っていますし、ぜひ頑張っていただきたいと思います。

印象的なのは「ムードメーカー」という言葉だろう。
常に結果を出し続けることが難しい麻雀の世界で、いかに苦しい時でもチームのムードを沈ませない、そんな役割を期待されているのではないかと考えている。

思えば、オーディションで最後まで優勝を争った新井p浅井pにもムードメーカーという要素は色濃くあった。
特に新井pのファイナル終了後の振る舞いには称賛の声が溢れた。
そんな2人とファイナルを闘ったことで、菅原pのムードメーカーとしてのスキルもまた少しばかり磨かれたのではないのかなと自分は密かに思っている。



そして、もう1つ考えられる菅原pの役割が、中田pの精神的支柱になるということだ。
菅原pも決してキャリアが長い方ではないし、中田pとはMリーガーとしては同期になるのだが、
麻雀の大舞台を経験した数は中田pよりも間違いなく多いし、中田pがこれから味わう苦しさや辛さをチームの誰よりもわかってあげられる立場であるはずなのだ。

自分の指名予想では菅原pが1番年下になって妹的なポジションになるのかと思っていたのだが、実際は中田pのお姉ちゃんのような役割を担いそうである。
菅原p中田pとか、まさに画に描いたような美人姉妹ではなかろうか。
2人が一緒に映っている写真はまだそんなにないようだが、
晴れてチームメイトとなったことで、今後は2人のツーショットも増えていくものと思われる。

この2人の「姉妹」が、フェニックスの「三姉妹」、格闘倶楽部の高宮選手伊達選手に続く新たなキラーコンテンツとなるのか。
こういったところも今後のBEASTの楽しみの1つになりそうだ。



オーディション優勝で晴れてMリーガーとなった菅原p
オーディションで見せた勝負に対しての強い気持ち、高橋監督も言及していた大事な場面での運の巡り、そして長考の際にどうしても出てしまう困り顔と、
とにかく対局を見たいと思わせる要素がこれでもかと詰まった素晴らしい選手だと思っているし、
新井啓文pが期待を込めているように、必ずやMリーグの舞台でも活躍するものと思っている。


もちろんビジュアルの面でも大注目だ。
以前からその「自撮り力」が反則レベルだとは思っていたのだが、
Mリーグの舞台ではプロのメイクやヘアメイクがつくだけに、さらにブラッシュアップされた姿を見ることができる。
ナチュラル路線で行くのか、はたまた髪色がガラッと変わるようなことがあるのか、その出で立ちについても今から楽しみだし、きっとあの「黒○○」さんも楽しみにしているに違いない🤭

総括

リーク通りとなったことで失望の声も挙がったBEASTのドラフトであったが、
こうして指名されたメンバーを1人1人掘り下げてみると、

1.攻撃的な雀風のプロ
2.言葉で表現できるプロ
3.麻雀の面白さ・素晴らしさを広めたいプロ

というBEASTの選手像に4人それぞれが何かしら当てはまっていることがわかる。
特に3については麻雀1本のプロ雀士よりも他の業種の中でファンを持つ「二刀流」プロ雀士の方が遥かにその役割を担えるわけで、
大介p中田pに求められるのはまさにそういったところだろう。
ここに気持ちの強さで和了をとりにいく猿川p菅原pが加わることで、お互いがお互いに足りない要素を刺激し合う、まさに4人で成長していけるチームになると思っている。

すぐに結果を出すことができるかどうかは誰にもわからないところではあるが、
少なくともチームとしての面白さは存分にあるし、それがまた新たな熱狂を生み出してくれるものと確信している。

まずは7月5日の「BEAST ROAD」の初回放送で4人がどんな表情を見せるのかが非常に楽しみだ😊


(後編へ続く)


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