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本気モードと省エネモードの話



私は昔から要領がよかった。

本気でやらねばならないときと、そうでないときを見極めてモードを切り替える。



その能力はそろばんの授業で開花した。





「1から100まで順番に弾いて、できたら手をあげてください」

先生から御達しが出た。




開始の合図があり私はそろばんを1〜5まで弾いた。


『(ん?これ100までやるの?)』




周りのみんな楽しそうにパチパチそろばんの玉を弾いている。




(う〜ん・・・


これはやってられない!)』
(やれ)




この瞬間に私は
“いまは本気でやらなくてもいいときだ”と判断し、省エネモードにスイッチを切り替えた。





やってるふりを見せながら一番早い子からちょっとずらして飛び級の100の玉を弾き、天高く手をあげ見事なドヤ顔をみせた。




これが私の省エネモードの始まりだ。




いま思うとかなりのマセガキだったと思う。

何に対しても“これなんでやるの?”
“大人になって、どこで使うの?”
“そんなのより、これ使えば良くない?”



と屁理屈ばかり頭の中で考えていた。
しかし、そんなことは口に出さなかった。

口に出したところで大人に言いくるめられることはなんとなく分かっていた。


ここでも省エネモードで要領よく生きてきた。




他にも、計算問題の宿題は考えている時間がもったいないと感じ、電卓を使って提出していた。(コラ)



“なんで電卓があるのに自分で計算しないといけないの?”
“計算式が分かっていればいいんでしょ?”
“時間がもったいなくない?”


と思ったからだ。(コラ)




そのせいで大人になった今でも計算問題が苦手だ。答えを出すのにとてつもなく時間がかかる。

暗算というすご技はまったく使えない。



暗算が得意な友達は
「頭の中でそろばんを弾くんだよ」と
口を揃えて言うが、




そろばんは将来的に使わないと判断していたため、まともに授業は聞いていなかった。
そして、使えない。







両親は共働きで、一緒に過ごす時間は祖父母とのほうが長かった。



両親は一度も私に勉強をしなさいと言ったことがない。


母は、良い点数のテスト結果をみせると、べた褒めし悪い点数をみせると
「難しい問題だねー。お母さんも分かんないけど生きてるからいいんだ!」
という感じだった。


そんな母にいい点数をみせて褒めてもらいたくて、勉強を頑張ろう!と


思わなかった。
(思え)




勉強をするのは
「両親を安心させるため」
「褒めてもらうため」と心得ていた私は

それなら高得点のテストを見せればいい!と考えた。


そして返却されたテストを気づかれないように高得点に変えるほうが効率がいいと考えた。



たとえば68点のテスト結果だとしたら6を変形させて88点にしたり
72点のテストだったら7を変形させて92点にしていた。


(親に見せるだけだからご勘弁いただきたい。)




母は天然なので、そういう小細工には全く気が付かなかった。

一番困ったのは40点代のテストだ。
4はどうやっても変形できない。
そんなときはテスト自体を抹消した
(ゴミ箱行き)





そんな順調そうにみえる私の小学生ライフには強敵が存在した。






祖母だ。

うちには強敵の祖母がいる。



祖母の目は誰も誤魔化せなかった。
特性・おみとおしってやつだ。



テストが返却されたと知ると、どういう採点をしてるのかくまなく見る。

そして私によって改ざんされたテストの点数を見抜く。



算数の宿題も、電卓を使っていたことを見抜いた。
長時間、ガミガミミサイル(説教)とシビレ技・でんじは(正座)を食らわせられたこともある。



ゴミ箱に捨てたはずのテストが祖母の手元に引きつけられるという邪悪な魔法も披露してきた。

そしてまた、かみなり(激怒)を食らわせられた。




算数の出来は一番悪かったのでめちゃくちゃに指導された。
祖母は駄菓子屋を経営しているため商売人の血が騒ぐのだろう。


祖母の目は絶対に誤魔化せなかった。

素早さの低い私は、あの黒いまなざしから逃れられなかった。




その時ばかりは本気モードでやらなければ命はなかった。




間違えたところを一緒に計算するときの、そろばんの弾き方も尋常じゃなかった。



「〜なーり!〜なーり!」と最大呪文を出してきたときにはもう、身ぐるみを剥がされたような気分になる。



“もう・・・ダメだ。”




祖母には誰もかなわないのだ。





祖母はねずみ年なので所々モルペコに例えさせてもらったが、もちろんこんなに可愛くない。
(ご想像にお任せします)


ポケットモンスターオフィシャルサイト










大人になったいま要領よく生きるのもいいが、先々を考えずにコツコツと遠回りしながら「いま」を楽しんでいきたいと思う。




そして、未だに暗算ができない私は
「あ〜、そろばんの授業ちゃんと受けておけば良かったなぁ」と思い耽りながら、電卓に頼る人生を送らざるを得ない。





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