映画感想「最強のふたり」

堅実な身体障害者のフィリップと、野蛮な介護経験もない黒人のドリスの話。
面接に来た大半は、体のいいことを言ったりアピールする人たちだった。
ドリスはその中で「失業手当が欲しいから、不採用にしてくれ」と。採用されたのはドリスだった。
何となく、フィリップはドリスの思い通りになるのが嫌だったから、採用したのかなと思った。

ドリスは自分のペース。やりたくないことは「嫌だ」とはっきり言うし、チョコをくれと言ったフィリップに「健常者専用のチョコだ」とかブラックジョークかますし、一見失礼だけどある意味素直なのかな。

初めに心を通わせたのはフィリップが発作を起こした夜だったように思える。
過呼吸気味になったフィリップを落ち着かせて、夜の街へ連れ出した。
普段自力じゃ歩き回れないし、一人じゃ何もできないフィリップからすれば、夜の街やもらったたばこって特別だったんじゃないかな。
それこそ、きっと他の人じゃできなかった。ドリスにしかできなかったんじゃないかな。

ドリスはふらふらしていて、家族から歓迎されてなかった。でも、それは本当の親じゃなくて本当の兄弟じゃなかったから。きっと彼はこういう生き方しかできないんじゃなかったかな。
ドリスはある程度自由にさせてくれて、不自由があまりないから、フィリップの元で定着できたんだと思う。
フィリップは小言を言ったりしないし、厳しいブラックジョークを言われても「面白い」と言ってくれる。否定せずに受け入れてくれることが、ドリスの心を開かせることになったのかも。
逆に、ドリスは何でも思ったことを素直に言うし、気遣ったりしない。身体障害者だからって気を遣われることも多かっただろうし、敬われたりすることも多いだろうから、ドリスみたいに友達みたいな感覚で接してくれる人って周りになかなか居なかったんじゃないかな。

ひとつのテーマとして「ひとりじゃできないことがふたりだからできた」っていうのがあると思う。

フィリップが家族と向き合えって言ってくれたから、ドリスはのらりくらりの生活から離れることができた。ドリスがお節介をやいてくれたから、フィリップも想い人と対面することができた。
お互いが、お互いの生活を豊かにするきっかけになったんだな。素敵な話だった。

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