飛鳥時代の人間はdisasterを天狗と翻訳するかもしれないという話

お久しぶりです、相川です。
およそ3年前からずっと続くコロナ禍。もう皆さん飽き飽きしていて、早く普通の生活に戻りたいと考えているのではないでしょうか。コロナ禍が終わった後の生活に思いを馳せる方もいらっしゃるかもしれません。
そんなコロナ禍ですが、昔にも同じように疫病、流行病というものはありました。
そして、古代中国において、そんな疫病が流行する前などにはあるものが空に現れるとされていました。
それが何かと言うと、

天狗

なのです。
皆さんは天狗と聞くと、何を思い浮かべますか?うちわを持ち、長い鼻を持つ修験僧の姿をした妖怪を思い浮かべると思います。
しかし、元来の天狗は、そんな妖怪を表す言葉ではありませんでした。

天体現象のひとつに、火球というものがあります。これを端的に説明すると、非常に明るい流れ星、ということになるでしょうか。2013年にはロシアで観測されたものが非常に大きく、明るいことで話題となったので、覚えていらっしゃる方もいるかもしれません。
ロシアのものもそうなのですが、火球には大気圏に突入し、落ちてくるまでの間で爆発し、大きな音を立てるものがあります。
それを古代中国では、吠えたてながら天から降りてくる犬に見立て、天狗と呼んだわけですね。
日本で天狗の記述が見られるのは7世紀、舒明天皇の頃になります。
轟音を立てて落ちてくる流星を見てある僧が「これは天狗だ」と言ったとのことです。
そして天狗が歴史に再登場するのは、平安時代も後期になった後。その頃の天狗は、我々に馴染み深い妖怪としての天狗となっていました。
そんな天狗と、疫病になんの関係があるのか?
天狗、もとい流星は凶兆、悪い事が起きる前触れだとされていたのです。
そしてそれは、日本や中国のみならず、遠く離れた西洋においても同じでした。

ここで話は変わりますが、disasterの意味は皆さんご存知かと思います。災害といったような意味ですよね。
では、語源はどうでしょうか。
disasterの直接の語源はイタリア語のdisastroに由来します。これはラテン語の否定などを表す接頭辞、dis-とギリシャ語のasterが結びついた単語で、asterはそのものずばり“星”という意味です。
ここからdisasterの元来の意味を考えるならば、「悪い星」などと言うような意味になるでしょうか。
それが「普段見ない星は悪い事が起きる前触れ」という迷信が無くなるにつれ、disasterに含まれていた「災い」の部分が強調され、遂には災いという意味のみを指すようになった訳ですね。
この流れは、「クラヴィチェンバロ・コル・ピアノ・エ・フォルテ」(大きい音も小さい音も出せるチェンバロという意味)と呼ばれていたピアノが、時代の変化につれてその意味が失われ、単にピアノと呼ばれるようになった事例と似ているなというのが、調べていて思った感想です。

ここまでをまとめると、天狗は元々流れ星のことで、悪い事の前兆であり、それはdisasterの本来の意味とも合致する。ということでした。
だから皆さんが飛鳥時代頃にタイムスリップした時は、学識ありそうな人を見つけてdisasterの本来の意味について教えてあげましょう。そうすればきっと、「それって天狗じゃない?」って言ってくれると思います。
それでは、また次の記事でお会いしましょう。お疲れ様でした。

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