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新聞記者


望月衣塑子著、渡辺道人監督の「新聞記者」を見ていて思ったことを少し残しておこうと思う。

この映画の中で個人的に一番印象的だったのは、エリートとは全くかけ離れた場所にいる私が知る由もない、官僚の働きぶりというのか、実際に彼らがどのような仕事をしているのか、という点を垣間見ることができたことかもしれない。

官僚の知り合いなんて1人もいない私には、この映画で描かれていたように、情報を操作するためにマスコミにデマを流したり、挙げ句の果てに普段エリートと呼ばれる彼らが必死になってツイッターに嘘の情報を投稿したりという光景を目にしても、それが現実でも行われていることなのか、あくまでも物語を盛り上げるための過剰な演出なのか判断ができないでいる。

なのでこれからの話は、あくまでこの物語で語られている官僚の働き方が、たとえほんの一部の人間だけであっても事実であれば。という仮定で残していこうと思う。


偏差値の高い中二病

この物語に登場する官僚の俺たちが「この国を守っているんだ」「秩序を正しているんだ」という極端な考えからの不正であったり、悪質なデマを流したりという

「俺たちは正しい。だから何をやっても良い。」

的な考えを持ち、行動している様子を見て、陰謀論的に自分の側に正義があると信じ、時にはテロを起こし、関係のない人々に危害を加える人々と根本的に何が違うのかがわからなくなった。

彼らの側にはそのコミュニティーの中での大きな権力が付いていて、その権力を全力で守るために働き、その代償に自分たちの地位を守ってもらう。

しまいには「俺たちは秩序を保っている」なんてそれっぽいことをいうわけだから、エリートもこうなっては救いようがないのでは、と見ていて思った人は多いのではないかと思う。

「俺たちは正しい。だから何をやっても良い。」の考えは、その時に権力を持っている側であるから許されている、との認識があるのかもしれないが、そうでなければ先ほど述べたように、テロリストと何が違うのだろうか。と本気で考えてしまう。

賢い官僚たちは権力に逆らわず、従順であることが自身にとって得策である。と判断し、その行為を別の理由で正当化するために、よくわからない「秩序」を保つという名目でテロリストとなんら変わらない、「俺がやらなければこの国がどうなるだろうか」のような中二病的な考えを当然のものとして、受け継いでいく。

こうして「偏差値の高い中二病」が生まれるわけだ。

大きな問題が起きた時に、しっかりとした基盤がないと問題がさらに大きくなる可能性があることは否定しない。

ただ、私個人としては、その基盤が必ずしも同じである必要がないと感じるし、その基盤がボロボロになった時に、なんとしてでもと強引にその基盤を守ろうとする行為や態度には恐怖すら覚えるわけです。

絶対的存在として、ある存在を信じ、そのほか可能性を考えもせずに排除してしまうような人たちに、もし仮にそのコミュニティーに所属するすべての人に当てはまる「秩序」があったとして、それを保つことができるのかはいささか疑問に思います。

例えば自民党が与党でなく、その他の政党が政権を握っていたとして、じゃあ日本がそこまで良い国になっていたか、または悪い国になっていたかと言うと私自身はそこまで違いがないのではないだろうかと感じています。あくまで仮定の話ですが。

当然それぞれの党で方針や、目標が違うということがあるので細かな部分で今より良い点、悪い点で違いがあるでしょうが、それが国全体、大きな規模で考えた時にはそこまで変わんないのではと。

現時点で優遇されているものが、その方針により別の場所に移動し、その結果利益が生まれる人がいて、不利益を被る人がいて。その程度の違いではないかなと感じています。

これまで書いたのはすべて仮定の話ではありますが、それが仮定であれ、現実であれやっぱり大事なことはこの映画の中でも出てきた

「誰よりも自分を信じ疑え」

という言葉が意味するところではないでしょうか。

自分の考えを信じ、それが故に疑う。自分に都合の良い意見だけを耳にし、肯定するものだけが集まる場に身を置いていると、いつの間にか思考を固定化し、自分が正しいと信じてしまい、疑うことはできません。

逆に自分の意見を否定ばかりされてきた人にとって、自分の考えを信じることは大変勇気のいることだと思います。

ですがこれだけ情報の多い時代に、その2つを同時に行うことができなければ、極端な情報に惑わされたり、過激な思考に陥ってしまったりとその人自身の身だけではなく、周囲の大事な人も巻き込んでの辛い結果を招いてしまう可能性は限りなく大きくなってしまうのではないかと思います。

そう考えると少し無理してでも信じて疑う姿勢は自分の身に染み込ませたいものだなと思う人も多いのではないかと。



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