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野木青依×MC.sirafu×宮﨑有里が語る|どうなっちゃうの〜?!「すみだのかたち さんぽとミニライブ」

この記事は、「さんぽチーム(野木青依× MC.sirafu× 宮﨑有里)」によるポッドキャスト(無料の音声コンテンツ)第1回「どうなっちゃうの〜?!さんぽとミニライブ」を編集・校正したものです。

ポッドキャストはこちらからお聞きいただけます。

マリンバ奏者の野木青依、音楽家のMC.sirafu、コーディネーターの宮﨑有里で結成された「さんぽチーム」は、9月17日、24日、10月1日に音楽イベント「すみだのかたち さんぽとミニライブ」を実施します。イベントに向け、「さんぽチーム」はポッドキャストを開始。第1回は3人で隅田川のテラスを歩きながら収録しました。


「さんぽチーム」結成の経緯:なにをやるかより誰とやるか

宮﨑有里(以下、ゆりえる):「すみだのかたち さんぽとミニライブ」(以下、すみだのかたち)は、墨田区内を参加者とお散歩して、散歩の記憶やそこで見たものやことをもとに野木さんとシラフさんが即興演奏をするというイベントです。そもそもなぜ「さんぽチーム」はうまれたのでしょうか。

野木青依(以下、野木):去年わたしが墨田区内のカフェや施設を移動して滞在し、即興演奏をするアートプロジェクト「マリンバさんのお引越し」を実施しました。その企画のなかで、墨田区森下にあるカフェ「喫茶ランドリー」で演奏していたときに、元々お店の常連さんだったシラフさんが見に来られていて、「これからスティールパン持ってくるので一緒に演奏しませんか」と声をかけてくださったんです。営業の最後の1時間、2人で即興演奏をしました。それをきっかけに、「マリンバさんのお引越し」に制作で関わっていたゆりえると3人で会うようになりましたね。

↑2021年11月。「喫茶ランドリー」ではじめて出会った2人がその場で即興演奏をした。

ゆりえる:「すみだのかたち」をやることになったきっかけは、野木ちゃんが「(この3人で)企画公募に出しませんか」と言ってくれたからだよね。

野木:わたしが何度か参加している「隅田川 森羅万象 墨に夢」というアートプロジェクトに今年も参加できたら良いなと思っていました。ただ、去年までは個人で企画して個人で発表することが続いていたので、誰かとやってみたいという気持ちと、でも誰かとやるなら、自分がやりたいことがあってそれに合った人を探すのではなく一緒にやりたい人を誘いたいと思って、ゆりえるとシラフさんに声をかけました。シラフさんと話していると安心や勇気をいただけます。ゆりえるとは「マリンバさんのお引越し」で一緒にやって、たくさん助けてもらったり、救われた瞬間がありました。とってもすてきな2人と、一緒に仕事がしたいというより、一緒にいる時間を増やしたいというかんじもあったかな。

ゆりえる:泣いちゃう(笑)

2人の演奏家が共鳴するところ:予定調和でない場で生まれる創造性

MC.sirafu(以下、シラフ):喫茶ランドリーで野木さんの演奏を見たときに、合間や隙間を大切にしている人だと感じて。アートじゃなくても、クリエイティブなことって溢れているんだよね。たとえば、誰かとなにかをやるときって、なにをやるかも大切なんだけど、本番やリハーサルじゃないところでのやりとりや、たわいもない会話とかが、僕は大事だと思っていて。野木さんは、そんな人との距離や関係性、空間、まちのなかにあるクリエイティビティが生まれる瞬間をわかって表現をしているんだなと感じる。若い人でこういう表現をしている人に、久しぶりに出会ったなぁと。

野木:うれしいです…。わたしは演奏している姿を見て欲しいというより、自分が街中で演奏することによってそのまわりで起こることに興味があります。「マリンバさんのお引越し」で大切にしていたのは、そこで初めましての人たちがその場限りの会話をするとか、ご近所に住んでいる人たちがまちでの経験が増えるとか。あと、わたしが人と話したかったというのもあります。

「マリンバさんのお引越し」(2021年)。子どもたちにマリンバの紹介をしている野木さん。

シラフ:コミュニケーションだよね。ある程度世の中のエンターティメントと呼ばれるものは見せ方として予定調和な部分もあって。たとえば開演時間が決まっていて、パフォーマンスをステージという境界線からお客さんは見る。それに対して、お客さんは対価を払って成り立っている。僕もそういう公演をしているのでそれはそれで良いんですけど。一方で「マリンバさんのお引越し」は、単純に言えばそういったものに囚われない、いわゆる演奏会じゃないことをやっていた。
コミュニケーションを突き詰めていくと、そこにいた人が共有できる、なにかもっと予定していたものよりも素晴らしいものができる瞬間とか、もしかしたら変な方向にいくかもしれない、予定調和ではないこれから起こる未来の選択権ですら共有できる空間にいることが、すごく面白かったり素晴らしかったりする。

野木:そうですね。予定調和より、「どうなっちゃうの〜?」って、アニメの次回予告みたいなことをやるほうがわたしは好きで、そっちを選んじゃいますね。
それから、時間ややる内容を決めすぎない理由のひとつに、枠組みを決めてしまうとそこからこぼれ落ちてしまう人、そこに辿り着けない人が出てしまうのではないかと考えています。たとえば開場開演時間が決まっていると、たくさん子どもさんがいる方が開演時間までに辿り着くのは、大人ひとりで行くよりも大変なことがありますよね。だからわたしがずっとその場にいてずっと演奏していれば、来る方が午前中でも夕方でもその日の気分や体調に合わせて来てもらえる。自分が演奏したいと思ったときに、従来の演奏のフォーマット以外の選択肢をもっとつくりたいと思ったし、自分が自分のままでその場所にいて、かつ人と交流するという状況をつくるために、どんどんルールやマナーをなくすこと、自分のためのフォーマットをつくることが自分にとって重要でした。

「マリンバさんのお引越し」(2021年)では、野木さんは各施設に3日間滞在し、即興演奏を続けた。

ゆりえる:予想できない場で生まれる創造性やおもしろさに惹かれる部分に、2人は共鳴し合ったんですね。

野木:「さんぽチーム」のことに話を戻すと、何も決まっていないけどなにかやりましょう!となって、まずリサーチというか、アイデアが出るまでの時間の過ごし方としてわたしたちが選んだのが、墨田区内のローカルスーパーを巡りながら、長時間歩くことでしたね。

シラフ:はじめは3人でなにかを表現しようとかマジでなくて。墨田区をまちあるきしているのが普通におもしろかったし、目的があるわけでもなく歩いているときの会話って良いんだよね。

野木:歩いて、なにか思いついたらまた話しましょうという時間を重ねていましたよね。そのアイデアが出るまでの時間をたくさん共有できたことがめちゃめちゃよかったし、それがしたかったみたいなところもあるかも。

2021年3月、3人で墨田区内のローカルスーパーを巡った。錦糸町周辺には多国籍のスーパーも多かった。

「すみだのかたち さんぽとミニライブ」とは?:演奏の"もと"が、即興演奏の指示や制約になる

ゆりえる:今回のイベントは、墨田区内を散歩しながら、参加者のみなさんに気になったものや風景を写真に撮ってもらい、それを演奏の”もと”として、2人が即興演奏をするという内容です。

シラフ:散歩で見つける演奏の”もと”は、墨田区の情景や下町感を感じたり、建物やお店を見て楽しんだり、なんでも良いです。自分の中にはない、意外とこう思ったのか!という感覚を、野木さんも僕も知りたい。自分の考えたものを表現しようとしている人にとって、あなたがどう感じたかって新鮮なものなんですよ。

2022年3月。3人で八広エリアを散歩した。

野木:わたしはここ数年即興演奏をベースに活動していて、よくお客さんから「ずっとイマジネーションが湧いてすごい」みたいに言われます。でも自分一人の世界でずっと演奏しているのではなくって、その場にいる人の雰囲気や空間の特徴だったり、今目の前にどういう人たちがいるとか、その場の状況、あと環境音などからいつもヒントをもらって、それをずっと繋いでいます。なので、なんの制約もなく自由に演奏しているわけでは実はないんです。自由な場でする演奏と、なにか制約や指示がある場所での演奏では、わたしは後者の方がおもしろいものができると思っているので、いつもおもしろい指示や制約を探していますね。今回はみなさんが見つけた演奏の”もと”を、指示や制約にして即興演奏をしようと思っています。

シラフ:アーティストのなかでどうイメージが還元されているかがわかるのもおもしろいと思う。

ゆりえる:わたしも、野木ちゃんが即興演奏をしていたり、まちを歩いていてシラフさんから「図形楽譜」というキーワードが出てきたり、「散歩の記憶をきっかけに演奏したら面白んじゃないか」という話が出たときに、「すごい!それで演奏できちゃうんだ!」と思いました。でも2人と近くで接しながら、一見演奏家は環境や雰囲気を感じ取ってまるで自然に即興演奏をしているようでも、演奏家の方たちの中ですごく逡巡して、ここはこう演奏できるかなと悩みながら、感覚だけでなく頭を使って演奏しているんだと感じています。

↑野木さんのYouTubeにあげられている即興演奏の練習の記録。「étude no.1 - 2つのビル」キャプションに演奏のヒントについて書かれている。

野木:文字情報で「みなさんと散歩した記憶を即興演奏します。」と書いてあっても「はて?」というかんじがすると思うんですけど、めちゃめちゃおもしろくなると思います。(笑)

シラフ:なんかね、何が起こるかわからないみたいなのがちょっと足りてないと思う。このほうがおもしろいみたいな出来事とか瞬間を、参加する方たちにすごい教えて欲しい。散歩、楽しみにしてます。素晴らしいものになるかはわからないんだけど!(笑)

ゆりえる、野木:どうなっちゃうの〜?!(笑)

2022年6月、両国の回向院にて。3人で度々墨田区内を散歩し、なにかが生まれるまでの時間を共有した。

ゆりえる:参加者の方から出てきた記憶や印象に残ったもの見て、野木ちゃんとシラフさんが「これどうしよう…??!」となっている姿を見るのがわたしは楽しみ(笑)

野木:そういう姿を見て欲しい!

シラフ:困らせて欲しいよね。自分たちが思いもよらない視点とか角度とかをおもしろがりながら、みんなで共有できたら良い日になるんじゃないかなと思っています。あまりみなさん構えず、こういう日があっても良いじゃんって感じでやれたらいいな。

↑「良い日」という言葉から、シラフさんが参加するバンド・片想いの楽曲「Daily Disco」を思い出したので紹介する。「良い日だな」という歌詞が繰り返される。

「さんぽチーム」が願うこと:いてくれるだけで良い。何が起こるかわからない時間を共有する。

野木:苦しんで考えて演奏したものって絶対おもしろいので(笑)前にシラフさんと即興演奏について話したときに、シラフさんが「即興演奏は後から意味付け出来ちゃうシチュエーションもある」というお話をされていて、それもめちゃめちゃわかるなと思いました。
即興演奏や音楽が抽象的だからこそ、どこまで演奏家が誠実にちゃんとつじつまがあう演奏をするか。もちろんそこから派生した自分のイマジネーションがつながることもあると思うんですけど、あとから苦し紛れに、どうにかこうにか場を成立させようと言い訳をするのではなくて、目の前のお客さんが出してくれた演奏の”もと”にたいして、本当にそれを演奏したいです。

シラフ:たしかに。そう、場を成立させたくないよね。だって成立しているかというのはそこにいた人の判断だから。…ぐらいのことをこのメンバーでやれるかなと思っています!!あと、一緒にその時間を共有したってこともすごく大切な事かな。

野木:参加してくれるだけで、その場にあなたがいてくれるだけでもう本当にありがたくって…

シラフ:そう!いてくれるだけで別にいいんですよね、しゃべらなくても。人それぞれですから。ただその時間を共有したことって、かけがえのないことだと思う。あのときいらっしゃったんですね!って。あなたがそこにいてくれたことを表現したいです!というイベントです!

ゆりえる、野木:どうなっちゃうの〜?!(笑)

「すみだのかたち さんぽとミニライブ」お楽しみに!!!

「すみだのかたち さんぽとミニライブ」

■開催日時/さんぽエリア

①2022年9月17日(土)錦糸町〜押上エリア
集合場所:JR総武線・東京メトロ半蔵門線「錦糸町」駅周辺
解散場所:WISE OWL HOSTELS RIVER TOKYO(東京都墨田区向島1-23-3 東京ミズマチイーストゾーン(E01))

②2022年9月24日(土)東向島〜曳舟エリア
集合場所:東武スカイツーライン「東向島」駅周辺
解散場所:電気湯(東京都墨田区京島3-10-10)

③2022年10月1日(土)押上〜京島〜八広エリア
集合場所:東京メトロ半蔵門線「押上」駅周辺
解散場所:油田カフェ(東京都墨田区八広3-39-5 ライオンズマンション墨田1F)
各日14:00~17:00

WEBサイト:https://sampoteam.amebaownd.com/posts/36673806?categoryIds=6692734

演奏 : 野木青依、MC.sirafu
コーディネート : 宮﨑有里
企画・制作・広報:さんぽチーム(野木青依 × MC.sirafu × 宮﨑有里)
宣伝美術:竹内巧

主催:さんぽチーム(野木青依 × MC.sirafu × 宮﨑有里)、「隅田川 森羅万象 墨に夢」 実行委員会、共催:墨田区、協賛:株式会社東京鋲兼、東武鉄道株式会社※「隅田川 森羅万象 墨に夢」実行委員会 事務局は(公財)墨田区文化振興財団が担っています。

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