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『藤子・F・不二雄SF短編ドラマ』レビュー#2「マイシェルター」

藤子・F・不二雄生誕90周年を迎え、実写化された『藤子・F・不二雄SF短編』。そのシーズン2が、NHKBSにてスタートする。『ドラえもん』『パーマン』『キテレツ大百科』の生みの親が紡ぐ、SF(すこし・不思議)な物語とはーー。

本稿では、4月14日に放送された「マイシェルター」を紐解いていく。 

男(浜野謙太)は、家族のためにマイホームを建てようとしていた。ある日、居酒屋で隣の席に座った客(田辺誠一)に核戦争の恐ろしさをまくしたてられ、核シェルターを買うよう勧められる。家に帰れば妻(安達祐実)が内職しており、子どもたちは寝ている。いつもと同じ平和な家族だったが、男はだんだんと核戦争の恐怖にとりつかれてしまう。

背景として「マイシェルター」が掲載された1983年は、人類が最も核戦争に近づいた日のひとつとされている。今までどこか別の星の話のように遠く感じていたことが、急に身近なものとして迫ってくる危機感が、男の様子からひしひしと伝わってくる。

男は核の恐ろしさを体験し、シェルターを購入する。シェルター購入にはお金や備蓄が必要なため、節約しようとする。次に、シェルター生活に慣れるためのシミュレーションを行い、家族以外に“箱舟”へ乗せる人を選定していく。家から始まり、やがてお金、暮らし、モラルへーー。問題がゆっくりと人間の本質へ移り変わっていくのが印象的だ。

物語の最後では、家族のシェルターに核戦争の被害を受けた人々が助けを求めてやってくる。開けてしまえば放射能で一家は全滅。こうなったときのために用意したダイナマイトで、人々を吹き飛ばすか否かの選択を迫られる。ここまですべて男の見た夢であったが、彼はボタンを押さないことを選んだ。

この一部始終を見ていたのが、男が居酒屋で出会った客だった。宇宙人を彷彿とさせる装いをした客は、男の「シェルター購入をやめて、核兵器反対の署名をしよう」の声に対して、合格という答えを出している。このセリフから察するに、客は男を核戦争を容認する人物か見極めていたのだろう。シェルター購入を選ぶことは、少なくとも核を否定していないということだ。シェルター購入を放棄した男は、結果的に本物の“箱舟”に乗る権利を得たのである。

シェルターを持つということは、核の存在を許すことになる。だから、放棄が必要である。「マイシェルター」は、そんな藤子・F・不二雄からのメッセージが伝わってくるのと同時に、着実に増えてしまった核への危機を示唆している作品なのである。


『藤子・F・不二雄SF短編ドラマ シーズン2』 「マイシェルター」
NHKBS 日曜よる9時45分〜
出演/浜野謙太、安達祐実、池村碧彩、かずき、福島リラ、モロ師岡
原作/藤子・F・不二雄
脚本/遠竹ミファ
演出/遠竹真寛

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