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『三体』の書評。売れ行きが神レベル!?【2つの物語】

中国発信のSF小説『三体』、ものすごい勢いで売れました。

失礼ですが、正直言って中国のSFってピンとこないです。ですが『三体』は全世界でバカ売れ。

元アメリカ大統領のバラク・オバマさん、メタ・プラットフォームズのCEOマーク・ザッカーバーグさんもドハマりしているとか…

そんなこともあって、前々から読んでみたいと思っていたんです。

事前情報として、文化大革命に触れているらしい情報を聞いて…著者である劉慈欣(リウ・ツーシン)さん、大丈夫なのかな?
いらぬ心配をしてしまいました。

あとで書きますが、出版社や著者の対策があったようです。

それぞれの国にはそれぞれの事情がありますから、苦労の末に勝ち取った大ヒット。読み手である私たちも予備知識として頭に入れておくべきですね。

さて『三体』は三部作となっていまして、今回の書評は「第一部」を対象にしています。
なにせ大作ですので、「第一部」だけでも448ページ。読み応え十分です。

中国の小説ですので日本人には難しい部分が多く、入り込むのに少々時間がかかりましたが、いつの間にか「三体ワールド」に入り込んでしまいました。

おすすめして問題ない作品だと思っています。

『三体』の書評を書く前に、あらすじを掲載しておきましょう。

物理学者の父を文化大革命で惨殺され、人類に絶望した中国人エリート女性科学者・葉文潔(イエ・ウェンジエ)。失意の日々を過ごす彼女は、ある日、巨大パラボラアンテナを備える謎めいた軍事基地にスカウトされる。そこでは、人類の運命を左右するかもしれないプロジェクトが、極秘裏に進行していた。
数十年後。ナノテク素材の研究者・汪淼(ワン・ミャオ)は、ある会議に招集され、世界的な科学者が次々に自殺している事実を告げられる。その陰に見え隠れする学術団体〈科学フロンティア〉への潜入を引き受けた彼を、科学的にありえない怪現象〈ゴースト・カウントダウン〉が襲う。そして汪淼が入り込む、三つの太陽を持つ異星を舞台にしたVRゲーム『三体』の驚くべき真実とは?

Amazon商品ページより出典

『三体』の売れ行きが神レベル

中国発のSF小説『三体』の売れ行きがヤバい!まさに神レベルです。

全世界で累計2900万部以上を売り上げていて、20か国以上の言語で翻訳されています。
日本ではどうかというと、47万部を突破しているそうです。

『三体』は三部作、全5冊の平均単価は約2,000円なので、ザックリで580億円…天文学的な数字とまでは言いませんが、とんでもない数字です。

中国の人口は2021年末で14億1,260万人、売れ行きの多くは中国国内なのかもしれませんが、改めて中国マーケットは魅力的だと感じます。

これからの時代は、中国やインドの作家が増えてくるんじゃないでしょうか?
そして、中国市場やインド市場を制する者が世界を制する時代がくるかもしれません。

『三体』の2つの物語

『三体』は、過去と現在2つの物語が同時進行します。

過去の物語は、葉文潔(イエ・ウェンジェ)が主人公。父親との別れや、研究者としての姿が描かれています。
詳しくは本編を読んでください。

現在の物語は、汪淼(ワン・ミャオ)が主人公。VRゲーム「三体」の謎を解こうとするストーリーです。

よくある話ですが、2つの物語が重なりあったとき…『三体』の謎が解明されていきます。

さりげなく組み込まれた文化大革命

文化大革命…まさに大革命、中国における大きな転換期でした。

とはいえ我々日本人は、文化大革命について深い知識はありません。中国人にとってどれほどの大変革であったか計り知れないです。
軽はずみな発言はできないので、ここはWikipediaに頼ってみます。

「封建的文化、資本主義文化を批判し、新しく社会主義文化を創生しよう」という文化の改革運動だった。実際は、大躍進政策の失敗によって国家主席の地位を劉少奇党副主席に譲った毛沢東共産党主席が自身の復権を画策し、紅衛兵と呼ばれた学生運動や大衆を扇動して政敵を攻撃させ、失脚に追い込むための官製暴動であり、中国共産党内部での権力闘争だった。それを毛自身がスチューデント・パワーやベトナム戦争への反戦運動などに沸騰する世界と巧みに結びつけた。それにより毛沢東自身の著書「毛主席語録」は三十カ国以上に翻訳される大ベストセラーとなり、世界に農本思想的な「毛沢東思想」を強く印象づけ、各国の知識人やフランスの五月革命などの政治・社会運動、対抗文化にも大きな影響を与えた。文化大革命終結後の1978年、鄧小平は中国の新しい最重要指導者となり、文化革命に関連する毛沢東主義の政策を徐々に解体した。また鄧小平は、文化大革命によって疲労した中国経済を立て直すために、改革開放を開始することによって市場経済体制への移行を試みた。

Wikipediaより出典

『三体』の冒頭のシーンは、さりげなく文化大革命を組み込んでいます。あくまでもさりげなく。
露骨に文化大革命を批評するようなシーンを描くことは、中国では難しいのかもしれません。

そんなこともあってか、第一部「狂乱の時代」「沈黙の春」「紅岸(一)」の文化大革命を含む部分は、掲載場所を真ん中あたりに移動させられています。

著者の劉慈欣(リウ・ツーシン)さんや、出版社の苦悩が伺えますよね。
良かれ悪しかれ、文化大革命が中国人にとって、いかに大きな出来事であったか分かる気がします。

実在する書籍『沈黙の春』

『沈黙の春』は、アメリカの生物学者であるレイチェル・カーソンさんの著作です。

DDTをはじめ、農薬などの化学物質の危険性を訴えた作品で、発売から半年で50万部も売れました。
1962年の出版ですから、化学薬品とか公害が問題化している時代です。社会にかなりの影響を与えたでしょうね。

『沈黙の春』は、『三体』で重要な書籍として登場。

詳しくは本編で確認してほしいですが、殺虫剤が世界に与える大きな害を警告しています。

VRゲーム三体

『三体』の物語の中で重要な意味を持つVRゲーム「三体」

ゲームなのか、現実なのか…よく分からないゲームです。詳しくは本編を読んでほしいのですが、科学や物理学に詳しい人にしか理解できないようなゲームだと思います。

物理学の「三体問題」を解くような内容になっていて、一般の人にはかなり難解です。
『三体』を理解するにはVRゲーム「三体」の理解が必須だと思うので、勉強した方が『三体』を深く楽しめと思います。

まとめ

今回は、中国発のSF小説『三体』の書評を書きました。
中国が舞台の小説なので、日本人にはピンとこない部分もありますが、最終的には夢中になって読んでいました。

『三体』は三部作なので、第一部である本作を読んでも全貌は明らかではありませんが、すでにハマっている私がいます。
大作なので、すぐに第二部を読むのは無理ですが…続きが気になって仕方がありません。

第二部を読み始めるまでに、「三体問題」を勉強しておこうと考えています。その方が物語を理解しやすいはずですから。

第二部を聴き終えたら必ず書評を書きますので、ぜひ読みにきてくださいね。

単行本でも読みたくてウズウズしてしまってます…

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