研究)「潜在看護師の復職支援」ー3.新卒看護師の問題と対策 リアリティショック

3-1-1.リアリティショック
「リアリティショック」は、様々な定義づけがされている。
Kramer(1974)(10)によると、「数年間の専門教育と訓練を受け、卒業後の実社会での実践準備ができないと感じる新卒専門職者の現象、特定のショック反応のこと」。
Hall(1976)(11)によると、「高い期待と実際の職務での失望させるような経験との衝突」。
糸嶺(2013)(12)によると、「新人看護師が実際に職場で仕事をしたときに感じる現象や特定のショック反応、現実と理想のギャップ」。 
Schein(1978)(13)によると、「個人が仕事に就く際の期待・現実感のギャップに由来するもの」。
勝原ら(2005)(14)によると、「学生から社会人への移行に沿って生じる現象」であると定義している。

本論文では、リアリティショックを「新卒看護師が医療現場で働き始めた時に感じる、理想と現実のギャップに対して受けるショックのこと」と定義する。

3-1-2.リアリティショックが起こる要因

リアリティショックが起こる要因については、様々な研究によって検証がなされている。
平賀ら(2007)(15)は、「看護実践能力」、「職場での人間関係」、「業務の多忙さと待遇」、
「業務への責任感」、「患者の死に関する対応」によって、「精神的要因」、「身体的要因」、「仕事のやりがい、楽しさ」のネガティブな症状に繋がるとしている。
堀ら(1996)(16)は、「身体的要因」、「心理的要因」、「社会的要因」が
リアリティショックの要因であるとしている。
勝原ら(2005)(14)は、リアリティショックを7つの型に分類している。
それは、医療専門職のイメージと実際の言動とのギャップ
看護•医療への期待と現実の看護•医療とのギャップ
組織に所属することへの漠然とした考えと現実の所属感とのギャップ
大学教育での学びと臨床実践で求められる実践方法とのギャップ
予想される臨床指導と現実の指導とのギャップ
覚悟している仕事とそれ以上に厳しい仕事とのギャップ
自己イメージと現実の自分とのギャップ
の7つである。
勝原らは、この7つのうちどれか1つがリアリティショックの原因になるのではなく、
複数のギャップに苦しんでおり、リアリティショックに陥っている場合は、
何か1つ解決すれば良いという問題ではないということを明らかにしている。
また、糸嶺(2013)(12)は、様々な要因がある中でも、
「看護実践能力」、「業務への責任感」、「職場での人間関係」は介入する余地があるとしている。
この中でも、「看護実践能力」は学生時代に高める、
あるいは仕事が始まってから高めるということでフォローをすることが可能である。
しかし、それでも看護実践能力が低いと言われてきた背景には、先に挙げた看護教育の現状がある。
そのような中で、リアリティショックを緩和するために、
看護実践能力を高めるためにはどうすれば良いのかを次で述べる。

(9)社団法人 日本看護協会 広報部(2009): 看護師の基礎教育「大学」主流へ 新人臨床研修が制度化-改正法2010年4月から施行- 保助看法の一部改正に対する日本看護協会の見解.
(10) Kramer, M.Reality shock -why nurses leave nursing-.C,V,Mosby,1974,1-8
(11) Hall, D.C(. 1976)Careers in Organizations, Goodyear Publishing.
(12)糸嶺一郎(2013)「新卒看護師のリアリティショックに関する研究の動向と課題~過去20年の文献から~」,茨城県立医療大学紀要 第18巻

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