中四国eスポーツ団体「DEPORTAR(デポルターレ)」のキービジュアルならびにロゴの制作、その前夜と裏側譚。
さいしょに
記事にご興味を持ってくださりありがとうございます。
イラスト・ゲームイラスト制作会社ミリアッシュの竹谷彰人(たけやあきと)と申します。
2021年2月11日(木)、下記のリリースが出ました。
リリース内でも触れていただいておりますが、この度キービジュアルならびにロゴのデザインを弊社にて制作させていただきました。
イラストをお描きくださったのは、"SPEED STAR"の異名を持つイラストレーター jbstyle. さんです。下記、簡単なご紹介文となります。よろしければお目通しください。
イラストレーター・アーティスト。愛知県出身。
人気格闘ゲーム『鉄拳(TEKKEN)7』のアート制作に携わり、また競技型デジタルアート『LIMITS』の2019年日本大会で優勝、次いで開催された世界大会で準優勝を収める等、八面六臂の活躍を続ける通称”SPEED STAR”。ほかにもストリートカルチャーのファッションブランド「RUDIE'S」、ポップなステッカーを展開している「B-SIDE LABEL」、ダーツの発信地「DARTSLIVE」、最近では日本最大級のeスポーツ施設「REDEE WORLD」まで、幅広いアートワークは圧巻のパフォーマンスを見せている。
作品集『SPEED STAR』が玄光社より発売中。
jbstyle. さんは、弊社のプロジェクト「ゲームクリエイターブランド」においても、そのとびきりの腕前を披露していただいております。
今回の記事では、東京都府中(東京の西側)のイラスト制作会社であるミリアッシュが、瀬戸内・岡山のeスポーツ団体「DEPORTAR(デポルターレ)」さんのキービジュアルとロゴのデザインをお受けするに到った経緯と、そしてその制作過程について書いていければと存じます。
制作前夜:岡山の山田さんと山田さん
2019年秋、竹谷は岡山市にいました。以前イラストレーターさんへご挨拶するため倉敷市へ行ったことはあるものの、岡山駅で下車するのは人生で初めてでした。なぜ降りたかと申すに、竹谷の紹介する漫画が岡山駅近くのTSUTAYAさん、厳密に記すならICOTNICOT(イコットニコット)2階の「ワンダーウォール ももスタ」さんに並べられていたからです。
こちらの企画は、岡山でさまざまな事業を手がけられている気鋭の賢王山田邦明さんにお誘いいただき実現したものでした(山田さんとは漫画好きの媒体「東京マンガレビュアーズ」を通じて出会いました)
岡山市も初めてなら、その夜に食べたチーズハットグも初めてでした。
さらに”初めて”が続きますが、この場でお会いしたのが山田さんでした。何を言っているのか、とお思いかもしれませんが、漫画『ジョジョの奇妙な冒険』の5部でブローノ・ブチャラティが「船は『2隻』あったッ!」と叫ぶが如く、実は山田さんはもうひとりいたのです。
”岡山のトランプ”こと不動産王山田浩徳さんです。
この時はファーストコンタクトだったということもあり「きっとトランプ大統領(※当時)のような商才溢るる方なのだろうなあ」と雑感を抱いていたのですが、山田さんとのご縁はまだウォーミングアップを始めた程度でした。
時間がやや経ち、2020年のお正月、竹谷は再び岡山にいました。
画像にあるように、ゲーム『.hack』や『NARUTO -ナルト- ナルティメット』、『ドラゴンボールZ KAKAROT』といった名作を世に送り出し、そして現在『鬼滅の刃 ヒノカミ血風譚』を開発中のゲーム制作会社サイバーコネクトツー社代表松山洋さんとトークイベントを予定しておりました。
「おりました」と申すのは、松山さんがインフルエンザに罹患し中止となったためです。岡山行きをキャンセルしようかと悩んだのですが、さりとて正月にほかの予定もなく、「何か面白いことがあるやも」という根拠なき期待感でお邪魔しました。
その岡山滞在中、ずっとアテンドしてくれていたのが、トランプ山田さんです。ほとばしる熱いパトスで、岡山の名所を教えていただいたり、岡山グルメにお連れくださったりと、出張の始終に渡り多大なお気遣いを頂戴したように覚えています。
おいしい食事をご一緒しながらお話をお伺いしていくにつれ、『METAL GEAR ONLINE』を驚くほどプレイしていた過去、また『LEAGUE OF LEGENDS』を嗜まれている現在と、山田さんのゲームプレイ歴が段々と明るみに出ました。
岡山のトランプ山田さんは、ゲーマーだったのです。
もちろん竹谷はゲーマーで、そしてゲーマーはゲーマーが大好きなため、一気に山田さんへ親近感が湧きました。もしかしたら、山田さんも同じように、竹谷に好意を抱いてくださっていたのかもしれません。
「eスポーツ大会をやりたいんです。お力をお貸しください」
その翌月となる2020年2月、山田さんから突然ご連絡をいただきました。願ってもないことです、と二つ返事で是と返し、大会も見に行く予定でしたが、無念にもその大会は開催まで漕ぎ着けることはできませんでした。
お察しの通り、新型コロナウイルスの影響です。2020年の3月は、ひとが集まるイベントを開けるような状況ではありませんでした。
しかし、さすがはゲーマー、山田さんの闘志は火を灯し続けていました。
「瀬戸内eスポーツを盛り上げるため新たに団体を作るので、一度お打合せさせてください」
このご連絡をいただいたのは、そのほぼ半年後の2020年10月。そして先刻ご承知かと思いますが、竹谷が断るわけがございません。
その団体名は、「DEPORTAR(デポルターレ)」。スポーツの語源となったラテン語の言葉です。
「やりましょう」に「やりましょう」のやり取りを幾度か重ね、その後三度目となる岡山への出張、場所はいつもの「ももスタ」で、eスポーツプレイヤーのマラさんにご挨拶させていただきました。牡蠣漁師として働く傍ら、eスポーツ業界でイベントMC、イベントディレクター、またプレイヤーとしても活動されているウルトラパワフルな方です。
イラスト・ゲームイラスト専門の制作会社のミリアッシュがお力添えできるのは、無論一点突破のイラスト制作です。協賛という枠で、ぜひキービジュアルとロゴをデザインさせてくださいとお伝えしました。
そして、そのイラストのご担当として満場一致でお声がけさせていただいたのが、jbstyle.さんです。
キービジュアルとロゴ、その制作の口火がついに切られました。
制作裏側:モチーフ・テーマをもとにラフ案を詰め、完成へと固めていく
話を東京へ持ち帰り、早速 jbstyle.さんに制作のご相談をすると、即ご快諾くださりました。
いよいよ実際の制作内容を固めていこうとした矢先、ちょうど山田さんとマラさんが東京へ来られるタイミングがあり、「そうであれば」と jbstyle. さんお誘いの上、会食しつつそのモチーフやテーマを談義しました。
まず何より、重きが置かれたのは「岡山らしさ」です。何度か岡山へお伺いするうちに、商店街の名前やお土産、また空港等から”桃太郎”がアイコニックなのだろうと思っていても、所詮は浅知恵、マラさんと山田さんの長年に渡り培われたご知見をお聞きしました。
そこで挙げていただいたのは、海の幸であるタコでした。岡山観光WEBに「たこめし」が載るほど、タコは岡山名物のようです。
また、牡蠣漁師であるマラさんから”船に乗る者”のイメージを抽出し、それをゲームライクに変化させ「海賊」という発想が浮かびました。
タコ × 海賊 × eスポーツ × jbstyle.
すでに疑いなくオンリーワンな乗算が成立しており、この時から竹谷はワクワクを抑えきれていませんでした。
そして、イメージカラーも協議し、海や山といった岡山の自然を想起してもらえるよう「青、白、緑」を中心にデザインする方向性で決まりました。
年が明け2021年1月初旬、ついに jbstyle. さんによるラフ案が届きました。ありがたいことに、なんと3案も描いてくださりました。
A案です。絵にコメントも添えていただきました。
電脳世界のような海原を航海する海賊ゲーマーのようなイメージ。
タコの絶妙なデフォルメ感と相並ぶモニター群、そしてヒロイックでありながらもどことなくヴィランっぽさのあるヘッドセット一体型のマスクと、どの情報もクールでかっこよさしかありません。
B案です。A案と比較するにキャラクター性を減算し、よりデザインに特化した印象を受けます。
インパクトに重点をおかせた案です。少しダーク過ぎますかね…俺は好きですw
コメントの通り、深海に潜る、しゃれこうべのごとき顔を持つタコの海賊です。海賊帽からはみ出る頭髪やヘッドセットのかけ方は、どことなく野性さを感じさせます。個人的には、周囲を漂っている「○×△□」が好きです。長年お世話になっているコントローラーのボタンを彷彿とさせます。
C案です。A案とB案とはまた完全に方向性が異なり、漫画の決めゴマのような力強いイラストです。
コミックの一部を切り抜いたかのようなインパクトだけ重視してみました。手にもっとゲーム関連のモノを持たせてもいいかもしれません。
コメントでいただいたように、まさにキャラクター性が凄まじく強調されたデザインになっています。靴の裏もどことなく吸盤に見え、jbstyle. さんのタコへのこだわりを感じます。
山田さんとマラさん、つまりDEPORTAR(デポルターレ)さんとラフ案を協議しているさなか、jbstyle.さんは”練習がてら”というモチベーションで、まるで漫画『幽☆遊☆白書』の飛影かのように右腕を犠牲にしながら、A案をさらに磨き精巧さの光る”海賊の吸盤”を描いてくださります。
吸盤だけでなく、海賊帽やタコの頭のコントラストが最高にかっこいいのですが、それよりも何よりも、仕事に対する jbstyle. さんのひたすら前傾したお姿に心から賛辞を送ります。”受動的にならない”ことは、言うは易し行うは難しの最たるひとつと考えており、見習わなければならない姿勢であると改めて思います。
そして、DEPORTARさんとの協議の結果C案に決まりました。どの案もおいそれと甲乙丙を付けられないクオリティでしたが、最終的な論拠として「インパクトの強さ」が重要視されました。
C案で進む旨をお伝えし、次の工程として jbstyle. さんよりいただいた色ラフ(着色サンプル案)です。
青、白、緑という組合わせが難しく、タコのベース色を赤以外で考えたりもしましたが、他の色で着色するとエイリアン感が増し増しになりました。
白黒ラフからいくつかご調整いただいたのですが、中でもひときわ目を引くのは左手に掲げているチャンピオンカップと、タコが海賊帽に王冠のような装飾がなされている点です。白黒ラフでは挑戦者、あるいはライバルといったキャラクター性がありましたが、色ラフにて”王者”へとシフトしました。アーケードコントローラー(主に格闘ゲームで使用する専用コントローラー)を抱くように持ち、誰からの挑戦も受け付ける、と言わんばかりです。
また同時に、ロゴ案もいくつかパターンを頂戴しました。
タコの脚がデザインにクールな華を添えています。キーカラーベースの「青、白、緑」は、「海があり、水平線があって、木々山々がある」景色のような印象を受け、見ていて心地よさを覚えるほどです。
ロゴを当てはめてみた際のキービジュアルとなります。タコの細部に、 jbstyle. さんの魂が宿り始めています。
そしてロゴは、メインで活用するデザインとして「青、白、緑」のキーカラーベースに決定となりました。
残すは、キービジュアルの完成形です。
こちらは、中間稿として送っていただいたものです。細部のさらなる細部まで丁寧に描かれた線の美しさと、キーカラーベースの「青、白、緑」とは対照的なタコの強烈な赤色が冴え渡るイラストです。やがてくるeスポーツ大会ではスタッフ専用Tシャツ等にしていただきたいです。
そしてついのついに、完成稿となります。
最高です。あまり述べても野暮かと思いますが、上からチャンピオンカップ、王冠、ゲームパッド(いわゆる通常のゲーム用コントローラー)、アーケードコントローラー、そして靴裏が光り輝いているのがそれぞれのアイテムに一層深いかっこよさを付与し、イメージカラーである「青、白、緑」をイラストにも盛り込んでくださっています。観れば観るほど、新しい発見があるイラストに仕上げてくださりました。
山田さんとマラさんからも大きな拍手と二重丸をいただき、ここに瀬戸内eスポーツ団体「DEPORTAR」さんのキービジュアルとロゴは完成と相なりました。
「協賛としてキービジュアルとロゴを制作させてください」
DEPORTARさんに申し出て、ご快諾いただいたのが2020年11月14日でした。ヒアリングした内容を整え、jbstyle. さんにデザインをご依頼したのが11月17日、実際の制作に入ったのが12月中旬くらいなので、正味の制作期間はおよそ1ヶ月半程度でしょうか。
そして、プレスリリースが出た日付が2021年2月11日です。岡山の賢王山田邦明さんのご紹介で岡山のトランプ山田浩徳さんと知り合ったのが2019年10月14日なので、およそ500日の期間を経て、結晶となった取り組みでした。
ご縁はどう面白く転がるかわからないからこそ、どれだけ大事にしても過度にはならない。本心から、そう思います。
おわりに
ミリアッシュのメンバーは、全員ゲームが大好きです。DEPORTARのマラさんも山田さんもゲームが大好きです。そしてイラストレーターの jbstyle. さんもゲームが大好きです。
ゲームを愛する大人たちが集まり、お金をきちんと取り決め、ビジネスをしました。こんなに楽しくて面白いことは、そうそうありません。
イラスト制作の工程を記事にして公開しようと運んだのは、制作過程をオープンにすることで様々な方のご参考になればという思いと、
「ゲーム・eスポーツが好き」
「ゲーム・eスポーツ業界を盛り上げたい」
という熱を、わずかでもお伝えできればと考えたためです。
また、DEPORTARの立ち上げ際し、ゲーム業界の大先輩からも応援コメントをいただきました。
岡山で新たにeスポーツ団体が立ち上がるということを聞きました。サイバーコネクトツーも福岡に本社があるゲーム開発会社として、こうして地方都市でゲームソフトを遊ぶことでプロのeスポーツプレイヤーを創出していくこと自体に非常にワクワクしますね。
ゲームは作り手と遊び手の真剣勝負!という時代から遊び手同士の頂上決戦へと変化しつつあります。しっかり応援してゲーム業界全体がプレイヤーの皆さんと一緒に盛り上がることを期待しています!
株式会社サイバーコネクトツー
代表取締役 松山 洋
熱意と優しさに、深い感謝の気持ちを改めてここに表します。
再度となりますが、山田浩徳さんをご紹介いただいた山田邦明さん、eスポーツ団体の立ち上げをご相談くださった山田さん、弊社による制作を快諾してくださったマラさん、そしていつも垂涎してしまいそうなイラストを手掛けてくださる jbstyle. さん、本当にありがとうございました。
eスポーツ業界に貢献することができ、ミリアッシュ一同喜びと”ツシマのような誉れ”をひしひしと感じております。
岡山からじわじわとeスポーツの熱波が広がり、やがて日本そして海外へと伝播していくことを、心から祈念しております。
そして最後に、ここまで記事をお読みくださった皆様、本当にありがとうございました。
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ゲーム『サイバーパンク2077』をクリアし、そのロスを埋めるかのように記事作成を終えた折、ふと今日が会社設立日だと気づき慌てる日に。
▽株式会社ミリアッシュはイラスト・ゲームイラスト制作会社です▽
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