夏の終わり、君とプールに

冬よりも秋が好きで秋よりも春が好きで春よりも夏が好きで夏よりも夏の終わりが好きなので、今日はとても好きな日だという事に気付いた。

8月31日という文字列を見ると一つの季節が終わる寂しさと、また新しい季節が始まるワクワクと、もう一生来ない瞬間をまた素通りしてしまったという後悔に襲われて、一瞬トイレで「あっ」とだけ言う。近くに人がいる時は言わない。ただ、「あっ」という感情になる。

本当の意味での夏を体験できるのは中学2年~高校3年生までだと言うのに、その「本当の夏世代」をとっくにすぎた僕はまたやって来た夏に胸を弾ませ、もうすぐ終わろうとしている夏に寂寥感を覚えている。お前にはもう関係ないっていうのに、昔の事が忘れられないんだね、かわいそうかどうかは僕が決める。かわいそうだ。

夏の曲を聴くといつでも「一番理想的な夏の風景」に心を飛ばすことができる。好きな女の子と二人でプールに行ったり、友達と自転車を二人乗りしてアイスを食べたり、本当はやっちゃいけない場所で男女4人で花火をしたり、そんな思い出は一つも無いのだけど、なぜかそんな風景がリアルに思い出される。やっぱりすごいぜ「secret base ~君がくれたもの~」は。

現実の僕は朝6時に起きてバイトに行って14時に家に帰ってサッポロ一番味噌ラーメンに業務スーパーで買ったもやしを入れて食べた後にカルピスをがぶ飲みして家の近くのドトールでこの文章を書いている。少年、10年後に自分がこんな夏の終わりを過ごしているなんて思いもしなかっただろう?僕のsecret base はドトールの奥から二番目の丸テーブルだ。

中学2年生から高校3年生の間にきちんと青春を謳歌して成仏しないから、26歳になっても夏とかプールとか花火とか好きな女の子とかぶつぶつ言っている青春ゾンビが生まれてしまうんだよ。あの頃の僕に「一学期が終わるまでに友達が一人もできなかったらお笑い芸人になろう」なんて決心は今すぐやめて隣の人に話しかけろと言いたい。そんな決心しなくてもお前はお笑い芸人になるから。勝手になってるから。そんな未来のエピソードトークを溜めとこうなんて姑息な真似はやめてプールに行けばよかったんだよ。好きな人を花火に誘いな。

本当は夏なんてとっくに終わって大人として夏に参加しなければならないのに、「まだ終わってないもんな」という顔で子供たちが並んでいる列に子供の顔をして並んでいる。僕が入るプールはきっと煮立っている。夏を終わらせられないダサい大人が入る釜茹地獄。笑っちゃうな

今日は友達とお酒を飲みます。


頂いたサポートでドトールに行って文章を書きます