熱量しかない

昨日、阿佐ヶ谷ロフトでボカロについて話すライブがあった。
最初はキャパ20ほどの会場で細々とライブをしていたが、3回目にして4倍ほどの会場でする事になった。
80席が即完売だったらしい。
「ボカロが好きな人ってこんなにいたんですね」と共演者と話した。

私がボカロを好きになったのは中学生の頃だった。
ラッドや嵐で盛り上がる教室の隅で、私はアニソンとボカロと音MADを聴いていた。誰とも音楽の話なんてできなかった。

当時の私の生活はほぼ全てニコニコ動画に注がれていて、家に帰ると寝るまでずっとパソコンの画面を見ていた。
ボカロや歌ってみたからMAD動画まで、更新されるランキング動画を一位から順番に辿っていくだけの毎日だった。
ライブでも話したが、初めてボカロを認識した「メルトショック」以降、ボカロをずっと聴き続けている。ただ、あまりマニアックな所までは行かず基本的にはランキングに載った曲と好きな歌い手がアップした曲を聴いていくという感じだった。

(ボカロ曲というより歌い手の方が追いかけていた。あと、ボカロが主流になる一世代前の歌い手が一番好きだった。要はランティス組曲世代。)

ボカロやニコニコ動画の話ができる友達はリアルにもネット上にもいなかった。モバゲーもmixiも全くしていない。メイプルストーリーとハンゲームだけ少ししていた。
私がボカロの話ができるのは、ニコニコ動画のコメントだけだった。
「うpおつ」「ここすき」「かっこいい」「wwwww」だけを打つだけのコミュニケーション未満の落書きのようなコメントだったが、自分と同じようにこの曲を好きと言う人がいるだけで、通じ合えてた気がする。

「オタクは排除される」という空気感は時代や場所によって変わるが、
2000年代の福井県はオタク排除率99%だった。学校の近くにあるアニメイトに入るところを見られれば教室での立場が危うくなる。私は中学の失敗(給食の時間にヤバい曲を流す、など)から高校ではオタクである事を隠そうとしていたが、それとは別に人間性の問題でクラスで完全に浮いていた。
当然、誰ともボカロの話なんてできない。

大学進学を機に上京した。
東京と言う空気感か時代なのか周りの人間が優しかったのか、そこではオタクが排除される空気感が無かった。
しかし、過去の経験からか、それとも大学生になったという開放感からか、友達とボカロの話をする事はあまり無かった。
このころになるとカラオケでボカロが歌えるようになり、一人でカラオケに行ってひたすらボカロを歌っていた記憶はある。一橋学園のカラオケバンバンに狂ったように行っていた。

芸人になり、オタクの話ができる仲間が山ほどできた。
ただ、それは現在進行形のコンテンツに関する話がメインで、当時の話ができる人はほとんどいなかった。
一時期はあまり聴いていなかったボカロをまた聴き始めた。一人で聴いて一人で良い曲だな、と思う事が当たり前だったので寂しいなんて全く思わなかった。

そんな時、木場さんから「ボカロ好き?」と声をかけられてライブに出演する事になった(それまで全くボカロの話をしたことないのに、好きな事を看過されていた。私はスケベ大学というライブにも出ているが、それまで全くそんな事を話していないのに岩永さんに「スケベ大学ってライブ出ない?」と言われた。私は全部のオタクです)。

第一回、第二回とも楽しかったが、「こんなにボカロが好きな人がいるんだ」とより実感できたのは第三回だった。
距離が近いとお客さんの顔が見れないのだけど、今回は少し離れていて顔が見えたからかも知れない。自分が見えてる範囲ではみんな楽しそうだった。

ボカロの話ができなくて寂しいと思っていなかったけど、本当はずっと誰かと話したかったのかも知れない。
自分しか知らないと思っていた事に頷いてくれる人がいるだけで、こんなに嬉しいなんて。
ありがとうございました。また次回あるといいですね。
毎回そうですけど、話そうと思っていた事の半分も話せていません。

ここからは熱量の話

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