仕事をする目的は「生きるため」ではなく「幸せになるため」──プロスノーボーダー 荒井DAZE善正さん
東京を拠点に活動しながら、プロスノーボーダーでもある荒井DAZE善正さん。2023年1月の1ヵ月間、新潟県妙高市にある「クラインガルテン妙高」 に滞在されました。
クラインガルテン妙高は、田舎暮らしの体験を通じて、妙高の魅力を気軽に感じていただくことができる移住定住お試し住宅です。
そこで荒井さんに、滞在に至った経緯や、仕事とスノーボードを両立した実際の生活、東京とは違った感覚などについて伺いました。妙高に滞在することで見えてきた人生観とは?
プロスノーボーダー、講演者、ライフプランニング支援の「3足のわらじ」
──ところで、荒井さんはどんな仕事をされていらっしゃるんですか?
プロスノーボーダーです。あと、一般社団法人SNOWBANK の代表をしていて、スノーボードや音楽やスポーツをからめて献血・骨髄バンクドナー登録を若者に知って貰う活動や講演活動を行なっています。
──講演って、具体的にはどんな内容ですか?
高校卒業してからプロスノーボーダーになったのですが、実は僕、骨髄移植を受けて、命を救われた経験があるんです。自分の命をただ「生きる」のではなく、どう「活きる」のかと献血・骨髄バンクドナー登録の必要性を伝えたい。そう思って、全国各地の中学校や高校、大学、企業さんなどで、僕の生き様をお話させてもらっています。
それとは別で、会社員として発達障害の子どもさんの親御さんの進学相談や自立支援相談や親亡き後のライフプランニングなどを行っています。
──3足のわらじですね。ライフプランニングって、具体的には?
発達障害は病気でもなんでもなくて性格の凸凹が強い子達なだけで、その凸凹が今の社会で生きて行く子ども達にとっての生き辛さなって繋がっていることが多いんです。
そこで、全国各地の親御さんとオンラインで面談して、日々の困りごとや、子どもたちの進級・進学に関する相談、自立や就労の相談支援をしています。
東京にいる意味、あるのかな?
──ところで今回、クラインガルテン妙高をご利用いただいたわけですが、どういった経緯でご応募いただいたんですか?
勤めている会社ではフルリモートワークスタッフとして働いています。基本、会社には半年に一度位しか行っていないんですけど、コロナ禍になって、仕事が完全にリモートワークになったんですよね。そこで思ったんです。「東京にいる意味、あるのかな?」って。
そこで、「今年の冬は、どこかで過ごしたいな」と思って、検索しまくったんです。
──検索が入り口だったんですね。
越後湯沢も候補に上がりました。賃貸物件はたくさんあったんですけど、湯沢は、山がちょっと小さいんですよね。妙高は山が大きいし、新幹線の駅も近いから奥さんが行き来やすいし、「いいな」と思ったんです。
ただ、賃貸物件を探したら、となりの上越市ならあるんですけど、妙高市にはあまりなくて。上越だとちょっと遠いじゃないですか。できれば、山の近くがいいな、と。
──確かに、そうかもしれませんね。
いろいろ探していたら、クラインガルテンを見つけたって感じですね。そして、妙高ワーケーションセンターのホームページで、以前、冬の間クラインガルテンに滞在し、仕事をしながらスノーボードをしていた方の記事 を読ませてもらって、「これ、いいなぁ」って。
「仕事とスノーボード」を両立した生活
──クラインガルテンは、普段、どんな生活をされていらっしゃったんですか?
そうですね。朝起きて、会社の仕事が入っていれば朝から面談して。仕事は17時ぐらいに終わらせるようにしています。それから、余裕があればナイターに行きますね。くまどー だと10分で行けるので。
午前中空いてれば、赤倉とかアライリゾートとかで滑って、午後から仕事……という日もありますね。
──勤めている会社の仕事を軸に、空いているときに滑りに行くって感じですね。
講演が入っている時もあります。昨日まで大阪にいたんですけど、上越妙高だと、新幹線があるので、どこへ行くにしてもアクセスが便利でいいですね。
──「滑りに行く率」って結構高いんですか?
週5ですね(笑)。ナイターもありますし。東京にいるときの感覚とは全然違いますね。「これは最高だな」と。
「住まい」があると、変わるスタンス
──仕事と好きなことが両立できるのって、いいですよね。ちなみに、クラインガルテンって、ホテルでもなければ、貸し別荘でもない。ある種特殊な位置づけだと思うんですよね。他の施設にはない良さって、何でしょうか?
ホテルでもいいんでしょうけど、ホテルだとどっしり構えて仕事ができないんですよね。いったん仕事環境を作ったら、落ち着いて仕事がしたい。クラインガルテンだと、それができます。あとは、友人と交流しやすいですよね。ホテルの場合だと、友人に「どこどこにいるんだ。来る?」とは言えないというか。
──確かにホテルだと、他の人は部屋に入れることができませんもんね。
でも、友人に「クラインガルテンにいるんだ」っていうと、「あそこにいるんだ。じゃあ、ちょっと顔出すよ」って、友人と交流しやすいのは大きいですね。
──ちなみに、もともと妙高の方との交流はあったんですか?
知ってる人はいたんですけど、これを機により深まった感じですね。クラインガルテンに滞在する前もライダーやカメラマンの知り合いは居ましたが、「こっちに住んでいる」って言うと、「じゃあ、ちょっと話そうよ」みたいな交流が生まれて。ホテル住まいだと、そうはいかないんですよね。
──確かに。
住まいがあると、スタンスが全然違いますね。
「生活に仕事を合わせる」東京とは違う感覚
──先ほど、「東京にいるときの感覚とは全然違う」っておっしゃいました。「すぐに、滑り行ける」みたいな違いはあると思うんですけど、他に何か、東京にいる感覚とは違うところって、ありますか?
そうですね。「集中出来る」ことですかね。
東京だと色んな楽しみがあるんですよね。僕、お酒が好きで週3、4回飲みに行っちゃうんですよ。近くにいいお店がいっぱいあって、知り合いも多いから、1週間飲みに行かないと、「そんなに忙しくて大丈夫?」って言われちゃう(笑)。だから、行かざるを得なくなっちゃっていて。
リズムがそうなっているので、夜、活動するってことってなかったんですよ。
でも、妙高に来たら、夜も集中していろいろできているし、明日、滑りに行くために「今日は、ちょっと頑張って仕事するか」みたいになっていて。健康的になりましたよね。お酒の量も減ったし。
──お話を伺っていて、東京での暮らしに比べて、大切なものが増えたような感じがしました。今までは、「仕事」と「飲みに行く」が生活の中心だったのが、そこに「滑りに行く」が加わった、みたいな。
そうですね。妙高での生活の場合「生活に、どうやって仕事や活動を合わせるか」っていう頭になりますね。
コロナ禍の影響もあると思います。以前だったら、初対面で「Zoomでお願いします」というと、「ちょっと感じ悪い」となりましたが、今はそうはならない。コロナ禍のおかげで、みんな ICTスキルが上がったし、オンラインミーティングの抵抗感もなくなったので。
そうなってくると、「いかに妙高でやれるか」「いかに東京に行かなくて済むか」を整理していくことになる。だから、仕事が効率的になりましたよね。
妙高における日常
──食事とかはどうされていたんですか?
食事は、近くのスーパーで買い出して作ったり、お惣菜で済ましちゃったりとか。あとは、そこら辺の定食屋さんとか外で食べることもありましたね。
──ちなみに、クラインガルテンに1ヵ月滞在するとなると、奥さんのご理解も必要なのではないかと思うのですが、奥さんは何か言っていらっしゃいませんでしたか?
計画では、奥さんも一緒に来るはずだったんですけど、仕事の都合で通う感じになっちゃったんです。でも、この1か月は彼女のペースで、新幹線に乗ってやってきて、何日間か妙高に滞在して、帰るっていう感じが、かえって新鮮だったっていうか。
向こうは向こうで楽らしいですよ。「あと、2~3ヶ月いればいいじゃん」って(笑)。うちは喧嘩はしないんですけど、激しい意見の交換はよくしていました。その数は減りましたね。
「通信環境は要チェック」想像と違ったところ
──逆に、いい意味でも、悪い意味でも「ここはちょっと想像と違ったな」ってところはありますか?
トラブルじゃないけど、困った部分は通信環境ですよね。携帯電話会社によって電波の入り方が違っていて。ソフトバンクはアウトで、奥さんのauは大丈夫でした。ドコモが入るかどうかはわかりませんでした。あとは、ギガがアッという間に上限を越えたとか。ネットワークの環境が東京と全然違うから、慎重にしないとトラブりますね。
あとは、2023年シーズンはそんなに雪が降っていないのでわかんないですけど、本当に雪が降る年は、一晩で1メートルぐらい積もるよ、家から出られなくなるよと聞いていたので、そこは快適でしたね。あとは、いい所しかないですね。近くに温泉もあるし。
──いまのお話をうかがって、通信環境や移動の足、生活、食みたいなところは、もっと発信したいなと思いました。
それは欲しいですね。「何が、一番電波がいい」とか。そうすれば、通信環境も迷わず準備できます。あとは、どこのスーパーで、どういったものが売っているとか。生活のリズムですよね。「洗車はどこでしたらいいんだろう?」とか。
──洗車……。このあたりの人は、冬に洗車はしないからなぁ(笑)
「仕事するために生きている」のではなく「幸せになりたいから仕事をしている」
──最後に、この記事を読んで下さっている方や、クラインガルテン妙高に興味をお持ちいただいている方にメッセージをお願いします。
都市部で生活している人にとって、生活環境を変えるのって、勇気がいることだと思うんです。また、周りの人も心配します。僕も1ヵ月妙高に滞在すると周囲に話したら、「大丈夫なの?」みたいに、すごく言われましたし。
──周囲の人達は、何を心配しているんでしょう?
何が心配なのかもわかっていないんですよ。何が不安なのわかっていないけれど、なんとなくみんな「大丈夫なのかな?」って不安に思っている。不安で踏み出せないでいる。
でも、実際に来てみたら「全然大丈夫だったなぁ」「こういう過ごし方って、全然アリだなぁ」って。生活の変化って、僕は体験した方いいなと思っているんです。
リゾートマンションを買うとか、アパートを賃貸で借りるとか、移住するとかだったら、慎重になると思うんです。でも、クラインガルテンの場合は、そこまで踏み出さなくていい、
──確かに、不動産を買ったり、借りたりするのは勇気がいるけれど、クラインガルテンなら「滞在するだけ」ですからね。
人生の中の1ヶ月だったら、別にチャレンジしてみてもいいんじゃないかなと思うんですよね。1か月ぐらい来てみると、生活やリズムがだいたい見えてきます。
そして、生活に合わせて仕事を作っていけばいいと思うんです。そうすることによって、その後の人生の作り方って変わってくるっていうか。
僕自身、実際に来てみて「生きて活きる上で自分の中心はどこなのか?」っていうのが、より見えてきた感じがしています。40歳を過ぎた今「今後、どうやって生きて行くのかな?」「やっぱ、こっちだな」っていうか。僕は骨髄移植を受けているので子どもはいないんですけど、子どもがいたって、夏休みとかだったらいいと思うんですよね。
じゃないと「何のために生きてるんだ?」って話になっちゃうんで。「仕事するために生きているんですか?」って。僕は「幸せになりたいから仕事をしている」んです。
取材・執筆:妙高ワーケーションセンター ワーケーションコーディネーター 竹内義晴
滞在場所・お問い合わせ:クラインガルテン妙高
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