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「ウォーデン/消えた死刑囚」ネタバレあらすじ感想

0,基本情報

監督:ニマ・ジャウィディ

時間:1時間31分


1,予告編


2,あらすじ


1966年、イスラム革命前のイラン南部にある刑務所。新空港建設のため立ち退くことになり、所長のヤヘド少佐は、囚人たちを新しい刑務所へ移送する任務を背負うことになった。無事任務を果たせば大きな出世を約束されていて、それは彼にとって難しいことではないと思われた。ところが一人の死刑囚が行方不明との報告が届く・・・。

引用:「ウォーデン/消えた死刑囚」公式


3,感想(ネタバレ有)

どこか惜しい作品だった。


物語の軸である「輸送には行かず刑務所に残った、消えた死刑囚を探す」というところから見れば終始かくれんぼなので地味で退屈である。だが、面白い要素が転がってはいた。


社会福祉士の「逃亡した死刑囚は無罪、3週間後に死刑になるのはおかしい」という正義と所長の「囚人を監視するのが自分の仕事で無罪かどうかは関係ない」という正義はどちらも正しいのである。また、隠れた死刑囚が罪を犯したという証言は村長によってねじ曲げられたものだった。人間界では法律というものが裁判の仕組みや刑の執行についての決まりを支配しており、それによって秩序を保とうとしているが、不完全な人間が作ったものであるから完璧ではなく、抜け目があり不完全であるという問題提起が二つの「正しいように思われる正義」の衝突によって感じた。


確実性の点から致し方のないことなのかもしれないが、裁判では無形の証言よりも有形の物的証拠の方が決め手になる。村民が死刑囚の無罪を主張しながら刑務官に連れて行かれるシーンではこの点に関しても司法の不完全性を感じ、社会に課題を投げかけているシーンの象徴だと思った。


また、冒頭に刑務所内に隠れた死刑囚とは別の囚人が絞首台を製作することを嫌がっていたり、隠れた死刑囚が最終的に発見されたところが絞首台の下だったりと、何かと死刑制度に対する問題提起のようなものを感じた。実際に現実の世界でも死刑制度を採用している国と採用していない国それぞれあり、その是非について今でも議論が行われている。完璧ではない法律によって定められた死刑制度で他人の命を奪って良いものか、もし冤罪であったら司法機関や刑務官たちは責任が取れるのか。未だ明確な正解が出ていないこの問題をちりばめており、社会性もありそうではあった。


しかし、ストーリー内で積極的に議論されたのは冒頭の囚人との会話と、中盤までの女性福祉士との会話まで。最後のシーンは死刑囚を発見したのは良いものの、冤罪だと思われる死刑囚を逃がした良い人止まりなのが残念だった。もう少しダイレクトに司法制度について積極的に口論なり議論してくれれば社会性がさらに増し、傑作になったのかもわからない。

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