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「三人の騎士」感想

1944年の作品

監督:ノーム・ファーガソン(ラテン・アメリカの旅)

時間:1時間12分


1,あらすじ

ドナルドダックにラテンアメリカの友人から3つの誕生日プレゼントが届いた。1つめの箱からは映写機が飛び出し、寒さが苦手なペンギンの話、アラクワンをはじめとしたラテンアメリカの鳥の話、ウルグアイの少年とロバの話など、鳥についての不思議なお話をドナルドに見せる。
2つめのプレゼント、飛び出す絵本からはブラジルの友人ホセ・キャリオカが飛び出し、ドナルドをバイーアに誘う。2人は小さくなって本の中に入り陽気にサンバを踊る人たちに出会うが、ドナルドはその中の一人の女性に一目惚れする。
3つめの箱を空けると、中からメキシコの友人パンチートが登場。一緒に出てきたピニャータと呼ばれる壺を割ると、たくさんのプレゼントが飛び出す。その中の空飛ぶ絨毯に3人は飛び乗りメキシコの情熱的な世界を旅するが、ここでもドナルドは次々に現れる美女に心を奪われ、やがて白昼夢に迷い込んでしまう。フィナーレではドナルドとおもちゃの闘牛の決闘にもつれ込むが、闘牛にはたくさんの花火が詰め込まれていた。

映画は以下のエピソードで構成されている。

さむがりやのペンギン パブロ (The Cold-Blooded Penguin)
南極の寒さにうんざりした寒がりやのペンギン・パブロが、南国を目指して航海に出る。



空飛ぶロバ (The Flying Gauchito)ウルグアイの牧童と羽の生えたロバ・ブリートが大金を賭けたレースに挑戦する。



バイーア (Baia)ドナルドはホセに誘われて入り込んだ本の中で陽気にサンバを踊るバイーアの人々に出会い、アウロラ・ミランダ演じる歌い手に一目惚れする。



ラス・ポサーダス (Las Posadas)
メキシコの子供たちがクリスマスに聖母マリアとナザレのヨセフの宿(ポサーダ)探しの旅を再現して街を練り歩き、ついに宿が見つかるとお祝いにピニャータを割る。この行事に倣ってドナルドもピニャータを割ると、中からたくさんのプレゼントが飛び出す。



メキシコ〜パツクアロ、ベラクルス、アカプルコ (Mexico: Pátzcuaro, Veracruz and Acapulco)
ドナルド達はピニャータから出てきた空飛ぶ絨毯でメキシコ各地を旅しながら、現地の人が踊るメキシカンダンスを知る。アカプルコのビーチでは、興奮したドナルドが水着の女性たちを追いかけ回す。
ユー・ビロング・トゥ・マイ・ハート (You Belong To My Heart)
メキシコシティの夜景に浮かび上がる歌姫に、ドナルドはまたも心を奪われる。



ドナルドの白昼夢 (Donald's Surreal Reverie)
彼女にキスをしたドナルドは、ダンボの『ピンクの象』を彷彿とさせる白昼夢の世界に迷い込む。ドナルドの甘い幻覚は、ホセとパンチートに度々邪魔される。最後はドナルドと爆竹を仕掛けられたおもちゃの闘牛の決闘シーンとなり、2つがぶつかって花火が上がる。

引用:Wikipedia


2,感想(ネタバレ全開注意)

本作は、なぜディズニーが世界中に広まったか、その理由を理解することができる作品であった。


全体の構成としてはファンタジアやメロディ・タイムのように、曲に短編のストーリーを乗せ、それらを集めて一本の作品としたオムニバス形式の作品である。


ゆえに、映画として一本の軸がないように思われるので(オムニバスにもかかわらず全てのストーリーに関連を持たせた「くまのプーさん 完全保存版」はほんとにすごい)、軸からぶれるというのは軸がないためそんなことなく、違和感なく楽しむことができた。


リズムとキャラクターの動きが一致している映像を観賞することは、なんだか心地よい。


さて、今作は前半部が鳥にまつわる物語、後半部がブラジルやメキシコを紹介するストーリーとなっていた。


特に後半部は、ホセやパンチートがドナルドをからかったり、共に踊ったりとキャラクターに愛着が湧くような魅力もあった。


だが、それ以上に本作は「映画やりながら広告・宣伝」していた作品だと思う。


今やパークがあるとこないとこ、世界中に知れ渡って一大ブランドとして人気を誇っているディズニーだが、本作公開時にはまだパークが世界に一つも存在していなかった。(アナハイムのディズニーランド、オープンが1955年)


それゆえ、人気ではあったかもしれないが、世界に知れ渡っていたとはいいがたい状況だったのかもしれない。


それ故、このような作品を世に送り出し、ディズニーというコンテンツと地理的要素(気候・文化・生活など)を融合させ、人々の共感や支持を得て、今のディズニーがあるのではないかということを本作品から感じた。


これも立派な長編映画であるから、これ自体も娯楽のコンテンツなのだが、ディズニーは主の映画コンテンツを媒体、いわば脇役にして、ブラジルやメキシコをアメリカなどに宣伝するということをやってのけた。


まだ大きな戦争が終わっていない、社会的に見ても、とても娯楽に金を落とせるような状況ではないし、この映画がどれくらいの人に見られて、それによってブラジルやメキシコへの観光客・移住者がどれくらい増えたのか、完璧に把握できる気など当然しない。


だが、方法として、コンテンツそのものを広告媒体にするという手法は現代でもあまり見られないので、画期的な作品だったように思われる。


他のディズニー作品やその舞台、名シーンの設定などについて、「その場所の広告・宣伝」という観点から見ると、また違った発見ができるかもしれない。


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