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Calc.

「そのくらいの年頃ってさ、何にでもなれる気がして、何にもなれない気もするよね」

ある日飲み屋のカウンター越しにいつも通りの笑顔のまま、とあるお客さんから言われた言葉。そのお客さんはいつも私に考えさせるような問題を与えては、そんなことをしている自覚も無いように毎度おなじみの決め台詞を残して店を後にする。あなたは一体、何者ですか。

小学生の頃からボーカロイドが好きで、よく学校帰りにツタヤの無料視聴コーナーでCDを探しボカロを聴いていた。今でも聴き返す曲の一つ「Calc.」。今回は是非ともこの曲を聴きながら私の文章を読んでみて欲しい。

作詞:(OneRoom)ジミーサムP
作曲:(OneRoom)ジミーサムP
歌手:初音ミク

歌詞

すれ違いは結局運命で 全ては筋書き通りだって
悲しみを紛らわせるほど 僕は強くないから
弾き出した答えの全てが 一つ二つ犠牲を伴って
また一歩踏み出す勇気を奪い取ってゆく

いつか君に捧げた歌 今じゃ悲しいだけの愛の歌
風に吹かれ飛んでゆけ 僕らが出会えたあの夏の日まで

巡り会いも結局運命で 全ては筋書き通りだって
都合良く考えられたら 寂しくはないのかな
弾き出した答えの全てが 一つ二つ矛盾を伴って
向こう側へと続く道を消し去ってゆく

いつか君に捧げた歌 今じゃ哀しいだけの愛の歌
風に吹かれ飛んでゆけ 僕らが出会えたあの夏の日まで

過去も未来も無くなれば 僕も自由に飛び立てるかな
感情一つ消せるのなら 「好き」を消せば楽になれるかな

君の耳を、目を、心を 通り抜けたモノ全てを
いつか知ることが出来たら 次はちゃんと君を愛せるかな

最後のサビの”君の耳を、目を、心を 通り抜けたモノ全てを いつか知ることができたら 次はちゃんと君を愛せるかな”という部分を聞くたびに、心がギュッと締め付けられるような感覚になる。私の言葉でうまく表現出来ないのが悔しいが、何かが込み上げるような、沁み入るような、そんな気持ち。今目の前にいる人の心に入り込んで、その人のフィルターを通せば、きっと私の見ている景色とは違ってまるで世界が別物に見えるだろう。

Calcというのはcalculatedの略で、計算された、予測された、意図されたという意味の単語だ。この曲をプロデュースしたジミーサムPという人が「この曲は出会いも別れもすべて運命なんだ、という自分を慰める曲なんです」とニコニコ生放送で言っていた。なのでCalc.はボカロオタクの中では失恋ソングとして有名だが、私は少し違った視点での失恋ソングとして聴いている。

私はいつだって恋愛をしていたい。どんな時だって誰かを愛し、愛されたい。彼氏とか彼女とかそういう話ではなく、私はきっと、常にお客さんに恋をしているのだと思う。「あなたは何でここにきたの」「あなたは何でそう考えるの」その人と同じ人生を体験するなんて絶対に不可能だ。だからこそ、言葉やしぐさひとつひとつに今のその人を作り上げている理由が込められている。私はその人をその人たらしめる理由が知りたい。知ることができたら、もっともっと大好きになれる気がするから。

何にでもなれるような気がして、何にでもなれないような気がする私は、常に入り組んだ迷路を彷徨いお客さんの一言一言がどこかに導いてくれる。その言葉を自分なりに弾き出してゴールに進むのか、進んだ先が突き当たりなのか、そもそもこの迷路にゴールは存在するのか。でも、迷いながら歩くこの路が楽しくて楽しくて仕方ないのだ!

今日は久々にCalc.を聴いた。”感情一つ消せるのなら 「好き」を消せば楽になれるかな”。私にとっての失恋は、その人を理解できず傷つけるような言葉を放ってしまった後悔と自責に似ている。好きという気持ちなんて消せるはずない。消したくもない。わがままが許されるなら、不器用な私の恋愛にもう少し付き合ってくれると嬉しい。

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