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私とイマジナリーフレンドの話

 私には小学校3年生のときからイマジナリーフレンドが2人いる。大学生の今になっても、まだ2人は私のそばにいる。

 小学3年生のとき、私の心はいっぱいいっぱいだった。クラスの女子に目をつけられ、友達はいなかった。親は弟へ過保護になり、私に暴言を吐くようになった。
 生きていくのがつらくて、「死んだら全部無くなるから大丈夫」「死んだらここから逃げ出せる」と毎日唱えていた。


 そんな日々を過ごしていたとき、1人目のイマジナリーフレンドができた。仮にAとしておく。

 Aは、めちゃくちゃイケメンである。私の面食いはここから来ていると言っても過言ではない。外国人風で髪はブロンド、目鼻はくっきりしていて、流暢に日本語を喋る。
 Aは少し厳しめで、私はよく怒られる。最近だとスケジュール管理がガバガバすぎて怒られた。
 でも毎回私のこと思って怒っていることはよくわかる。なんだかんだ手伝ってくれるし、甘くなることも多々ある。
 怒るとき以外は軽い性格(?)で、口数が多いわけではないが、中々の頻度でジョークを挟み、軽口を叩く。敬語も使えるらしいが、私に対しても、もう1人のイマジナリーフレンドに対しても基本タメ語である。


 そして、Aと出会ってから2ヶ月後、新しいイマジナリーフレンドができた。こちらはBとしておく。
 Bもこれまたイケメンである。細目で、柔らかい茶色の髪は長く、お姉さんと言われたら思いっきり信じてしまいそうな顔である。眼鏡もかけていて、本人曰く目が悪いため、度は相当強いそう。
 BはAよりも優しい。ただ、何事もなぁなぁにしないタイプなのでAよりも厳しくなるときはある。
 基本的にBは、Aにも私にも敬語を使う。笑うときには口元に手を持ってくる。とても上品。でも一緒に食べようと誘うと、カップ焼きそばでもなんでも付き合ってくれる。
 AよりもBの方が料理が上手く、何か作るときには手助けをしてくれるし、どれだけ酷くても褒めてくれる。Aは容赦なく「俺の皿は生ゴミ入れじゃない」と言うが、なんだかんだ全部食べてくれるタイプである。
 
 AとBも仲はいいらしく、「2人でルームシェアをしたら5年はもつ」とAは言っていた。Bも「まぁ仲が悪かったらこんな長い間、3人でいませんよね。私そんな我慢強くないですし」と当たり前のように言っていた。


 2人と出会い、色々ありながらも楽しく、時に涙を飲みながら生きた。そして小学校の卒業式。私は2人がいなくなってしまうのではないかと1人不安でいた。
 2人がイマジナリーフレンドであることは、だいぶ最初に気付いていた。そして、成長と共に消えてしまう存在であることも、知っていた。
 この卒業式で、2人からも卒業してしまうのだろうか。もう、お別れなのだろうか。と、浮かない顔で卒業証書を受け取った。

 だが、それは全て杞憂に終わり、2人は卒業式後の写真撮影の時もしっかりいた。
 「あっちと写真取らなくていいのか?」「あちらで集合がかかっていますよ」
 いやいや待ってくれ。なんで通常運転なんだ。家に帰ってから聞いたところ「だってお前、まだまだ1人でやってけないだろ」とのことだった。ありがたいような、自分の成長のなさを知ってしまったような。

 その後も2人は私と一緒にいた。
 中学校に入りいじめを受けたときも、部活の発表の時も、好きな人に告白する時も、受験のときも、卒業式も、入学式も。
 そして今も、まだ2人はいる。

 2人の存在が、私にとって良いものなのか悪いものなのかは分からない。
 本当は精神病で、これはただの妄想なのかもしれない。

 けれど、私の悪口が蔓延している校舎で馬鹿馬鹿しい話を振ってくれたのは、勉強が辛いとき「踏ん張れ」と横で応援してくれたのは、受験が終わって「受かってくれてよかった!これで学費が浮いた!」とはしゃぐ母親の声を聞こえないように大きな声で「おめでとう」と言ってくれたのは、3月、友達を作るときに「大丈夫」と背中を叩いてくれたのは、私を救ってくれたのは、彼らだった。
 この際、精神病でも構わない。私は彼らがいてくれたから、生きることができた。そのことに変わりはない。


 高校に入ると、友人関係がとてもよくなった。活動が盛んな部活に入り、家にいる時間が減った。それに伴って、彼らがいる時間も減った。
 昔は人と話していても横から茶々入れるような2人だった。けれども、今は人と話しているときは出なくなった。少しずつ、1人の時間が増えてきた。

 2人が、いつまで一緒にいるのか分からなくなった。
 寂しくもあり、成長した証でもあり、やっぱり少し悲しい。

 だから、書くことにした。2人のことを。
 2人が私の人生にいてくれた証拠を、残したいと思った。
 人生の、幼い私の恩人を忘れないために。

 ちょくちょくここに2人のことを書いていきます。
 今は、2人ともTOEICの勉強をしない私を叱っています。まだまだ消える気配はありません。少なくともTOEICが終わるまでは多分います。

 それでは。

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