見出し画像

私が思うソウル大学大学院の難点

前回はソウル大大学院のいいところについて私なりに考えてみたが、今回はその逆、難点について考えてみた。間が空くと気になってしまう内容だと思うので、前回の記事とほぼ同時公開で。

もし万が一ソウル大大学院入学を考えている人がいれば、この記事をしっかり読んでみてほしい。

今日も忙しい人用に目次からどうぞ。



ソウル大大学院の難点

先に断っておくと、ソウル大大学院の悪いところのほとんどは、いいところの裏返しでもある。

先生が忙しい

前回の記事でいいところとして、優秀な研究者が多いという話をしたが、自分の指導教授や授業を受けたい先生がスター研究者の場合、忙しすぎて滅多に会えない、指導学生が多すぎて十分な指導が行き渡らないといった場合がある。

奨学金が少ない

外国人留学生への奨学金が充実していないという点は残念な部分だ。

他の大学にはさまざまな種類や条件の外国人奨学金があるが、ソウル大で専攻や国籍に関わらず全ての留学生が応募できる奨学金は글로벌초우수장학금(GS)というものしかない。
他の奨学金は、専攻や出身国家に制限があり、そのほとんどが理系やGDPが低い国出身者が対象だ。

素の費用はソウル大の方が安くても、奨学金がたくさん取れれば私大の方が実際の費用が安いなんてこともあるだろう。

卒業が難しい

これも前回の記事でソウル大の外国人入試は意外と難易度が高くないという話をしたが、逆に卒業の難易度は確実に他の大学の大学院より高いと思う。

これを知らないで入学する留学生も多いのだが、韓国のほとんどの大学には学位論文を提出する前に논문제출자격시험(論文提出資格試験、略して논자시)という試験がある。

この논자시の内容はほとんどの大学の場合、
韓国人:英語+専攻試験
外国人:韓国語+専攻試験
である。

だが、ソウル大の場合、
韓国人:英語+第二外国語+専攻試験
外国人:韓国語+第二外国語(英語でも可)+専攻試験
と、語学試験が一つ増えるのだ。

しかも厄介なのは、ソウル大英語の場合TOEICやIELTSなど比較的点数が取りやすい英語試験は認められず、TOEFLとTEPSの二つのみだ。

TEPSとはソウル大が作成している韓国内での英語検定で、冗談みたいに難しいことで有名だ。ネイティブでも時間内に全問解くことすら難しいほどシビアな時間制限と難しい単語が多いことで知られている。

もちろん논자시のために満点取る必要はないが、全体の受験生の中で上位50%以上に入らなければいけない。どういうことかというと、このTEPSという試験は、相対評価、つまりその日の受験者と比べて自分がどれだけ正解したのかによって点数が決まる試験であり、全体の中で真ん中より上の点数を取ることが논자시の合格条件だ。(英文科や国際大学院など、英語が必要な専攻の場合さらに基準は上がる。)

しかもこのTEPSを受ける人のほとんどが、ソウル大や大学院を目指す韓国人、公務員を目指す韓国人、ソウル大の院生であるため、受験者全体のレベルが高い。

私も一度落ちると20万ウォン以上が飛ぶTOEFLを避けてTEPSを何回か受けたのちに合格したが、地獄すぎてTOEFLにしなかったことを後悔した。

このように語学要件が非常にシビアなので、いざソウル大大学院に入ったのはいいが、なかなか논자시に合格できず何年も卒業が伸びる人をたまに見かける。

また、語学だけでなく専攻試験が難しい学科もあり、논자시のために1年以上準備しなければならない学科もあるという。

さらに学科によっては論文指導自体もシビアで、修論や博論審査で落ちてその学期に卒業できない場合もある。

(논자시と論文審査についてはいつか記事を書くかも?)

学生が多すぎるとチャンスが回ってこない

これは学科や専攻によって差があるが、学生が多すぎると一人一人に回ってくる機会が減ることは確かだ。

とくに韓国の場合、教授が指導学生の中から奨学生を推薦したり、学会発表者を推薦することがよくある。自分の指導教授が有名だったり人気の教授であれば、そのぶん優秀な他の学生も多く研究室に集まるので、競争率が高まりチャンスがなかなか回ってこないかもしれない。

そのため、一部の学生はわざと指導学生が少ない教授の研究室を選ぶこともある。指導教授の選び方については入学してから先輩にしっかり相談して決めた方がいい。

日本人学生が少ない

日本人学生が少ないことの悪い点は、何より情報がないこと。これに尽きると思う。

日本語の情報が少ないだけでなく、同じ留学生の中でも出身国家やその人の属性によって状況が大きく異なる。

例えば、朝鮮半島にルーツをもつ朝鮮族の中国人や、韓国系移民の外国人は、ビザや奨学金も海外同胞用の枠で取ることが多い。
また、出身国によって手続きの時に求められる書類が意外と違ったりする。

なので日本人に聞くのが一番確実なのだが、ソウル大の場合日本人学生を見つけるのが本当に難しい。私の学科は留学生がかなり多い方だが、それでも現在学校に通っている大学院生の中で日本人は私一人しかいない。

キャンパスが僻地&広すぎる

最後は副次的な要素であり、決め手になるような悪いところではないが、ソウル大のキャンパスはその名前のイメージとは違い、ソウルの端っこの山の中にある。最寄り駅からは徒歩だと坂道を30分以上登らなければいけないのでバスで15分ほどかけないと駅にすら出ることができない。

また、キャンパスが広すぎるのでキャンパスの中もバスで移動しなければならない場合がある。最初のうちはバスを乗り間違えて授業に遅刻したり遭難しかけたりすることがあるはず。
しかもキャンパス内は厳しい山の中なので、常識では考えられない勾配の坂だらけだ。

まとめ

長くなったのでまとめると、ソウル大学大学院は、

・入るのは簡単だが卒業するのは大変
・費用は安いが学内奨学金が少ない
・優秀な先生や先輩が多いが、そのぶん一人一人のチャンスは減る
・施設やイベントが充実しているが、キャンパスのアクセスが悪い
・ネームバリューがある

といった特徴がある。
一長一短であり、ソウル大だけが答えではないと思う。

それでも私はソウル大にきたことを後悔していないし、個人的には最善の選択だったと思っている。

一番大事なのは自分の状況に合わせて大学を選択することだ。

さて、次はソウル大の暮らしについて簡単にまとめたいと思う。
ここ2回は私にしては真面目に書きすぎてしまったので、次回は反省を生かしてもっと楽に読める記事を目指します…。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?