初音 ‐hatsune-
その年に初めて耳にする鳥のさえずりのこと。
どこか嬉しそうな歌声。窓の外から届く春を告げる声。
まだ肌寒くても確かに冬が去っていく合図だ。
…
「あ、この声は、、」
つかの間の晴れ間、外から小鳥の声が聞こえる。
気付けば最近暖かくなったな。
「集中しよ。」
機織り教室の部屋には明るい太陽の日差しが入る。
ぽかぽかして暖かい。
ガタン、ゴトン。 ちゅんちゅん。
ガタン、ゴトン。 ちゅん。
「できました~!」
やっと織り上げた布。
ガタン、ゴトン。 ちゅんちゅん。
ガタン、ゴトン。 ちゅんちゅん。
ガタン、ゴトン。 ちゅ。
小鳥がハーモニーを奏で
まるで完成を喜んでくれているよう。
「ありがとう。」
窓を開けるとまだ肌寒い。
でも確かに小鳥のさえずりは春の訪れを教えてくれた。
あともう少し。
それまで冬を楽しもう。