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酔いどれ男のさま酔い飲み歩記~第20回「札幌で極楽の海の幸巡り」

「一人酒」、それは孤独な酒飲みのように聞こえるだろうが、実はそうでもない。私は一人酒という言葉を酒場で飲み歩く時に使っている。にぎやかな雰囲気に包まれれば、その店に居る人は全員、飲み仲間だ。

一人酒ができなくなって幾歳月・・・再開の日を、ただ黙々と待ち続けていても仕方ないので、体験談エッセイを書こう。タイトルは、酔いどれ男のさま酔い飲み歩記。第20回「札幌で極楽の海の幸巡り」である。

はじめに

今では実現不可能になってしまったが、かつて北海道旅行であこがれの的といえば、豪華寝台特急での旅だった。念願かなって、寝台特急北斗星号のAロイヤル個室寝台の切符が取れたときは、小躍りして喜んだものだ。

旅先は札幌だが、北斗星号に乗ることが最大の目的。ただし、一人酒の視点なら、やはり札幌の夜がメインであることに変わりない。ススキノには過去苦い思い出がある。今回は楽しい思い出で締めよう。そのためには酒場のチョイスも重要となる。

ススキノにリベンジを果たす時が来た!

ススキノ「磯金漁業部枝幸港」~海の幸多し

ススキノは3回目だが、飲み歩きは初めて。口開けに訪れたのは、北海道浜料理をうたう「磯金漁業部枝幸港」。旅行前に下調べをし、チェックしておいた店の一つだ。かなり繁盛しているようで、時間制限を申し渡されたが、長居するつもりはないよ。

一杯目は地酒の「丹頂鶴」。肴はバイ貝の刺身、宗八カレイの焼き物、それから「朝むきカニ身にコマイ卵のしょうゆつぼ漬」という長たらしい品も追加した。

朝むきカニ身は紅ズワイガニのようで、「カニは好きでも、身をほぐして食べるのが面倒だという人のためのメニュー」らしい。私もほぐすのが面倒と思うタイプなのでありがたい。海の幸に酒が進み、おかわりには「なまら超辛」という地酒を頼んだ。

「枝幸港」という名前はどこからきているのか?

「えさし」と言っても北海道南部にある江差ではなく、北部のオホーツク海側にある枝幸のことを指す。3年半前に紋別市へ旅行した際、レンタカードライブで枝幸町まであと一歩まで近づいた。でも行かれなかった。だから、あこがれの町でもある。

そんな名前に誘われて来店したのだが、とにかくメニューの豊富さには驚いた。いろいろ食べてみたいが、一人酒を一軒で終わらせるわけにはいかない。時間制限にはまだ余裕があるが、ひとまず席を立つことにした。

ススキノ「あんぽん」~名酒場で珍味に酔う


ススキノには苦い思い出がある。7年半前、ススキノで「ぼったくり」の被害に遭った。今はどうか知らないが、ススキノは悪質な客引きが多いことで有名だった。にもかかわらず、欲望を押さえきれない若気の至りで、客引きに騙されたのだ。

今はあの時の欲望とは無縁の一人酒。磯金を出て、さまよい歩いていると、しつこい客引きが声を掛けてくる。私は、客引きを完全無視しながら歩き続ける。それでも声を掛けるので、見向きもせず手を遮って歩く。客引きは捨て台詞を吐くが、完全無視を貫き通す。

客引きを追い払ってやって来た居酒屋が「あんぽん」。ススキノの喧騒からは、かけ離れた落ち着いた雰囲気の店内。お客さんの年齢層も高め。名酒場としても知られており、太田和彦氏も、吉田類氏も訪れている。早速カウンターの一角に陣取る。

品書きを見て「この店はできる!」と思った。

書かれている肴は、どれも聞いたことがないものばかり。珍味ぞろい、というわけではないのかもしれないが、郷土料理にこだわっている感じだ。まずは「たこまんまの刺身」を頼もう。合わせる地酒は「熊ころし」にしよう。

たこまんまとは、柳ダコの卵のこと。グラスに入っており、ポン酢でさっぱりといただく。米粒大の大きさで、ゼラチン質のようなプルプルとした食感。同じ卵でもイクラとはちょっと違う。当たり前だが、新鮮でなければ食べられない。

次は焼き物。ここも北海道の名物から「鵡川産シシャモ」を頂戴する。あえて鵡川産とうたっているのは、シシャモがごく限られた海域でしか生息していないからだ。スーパーとかで簡単に手に入るのはカペリン(カラフトシシャモ)で、別の種類の魚だという。

私もカペリンをシシャモだと思って食べていたが、鵡川産シシャモは別格だった。肉厚の身でとても美味。おかわりの地酒を「北斗随想」に切り替えよう。

女将さんの人柄もあってか、渋い酒場であっても、決して窮屈な感じはしない。物珍しい肴を味わいながら、腰を落ち着けてゆっくり一献傾ける。常連さんが多そうだが、一見だからと客を選ぶわけではない。

満腹だが、品書きを眺めているだけでも面白い。

そのなかに「アイヌネギ」という文字を見つけた。いかにも北海道らしい。が、何だかわからない。女将さんに聞いたら「行者ニンニク」だと教えてくれた。勉強になった。

隣り合わせたご常連さんと四方山話に花を咲かせる。この店は、客同士を意気投合させる魅力を持っている。これだけの酒場は、東京にも大阪にもほとんど見当たらないだろう。

札幌駅「味百仙」~人気料理は食べずとも

本日のホテルは札幌駅近くなので、地下鉄でススキノから戻る。ススキノ泊まりなら、あんぽんで一人酒を締めてもよかったが、最後にもう一軒だけ寄る。居酒屋「味百仙」だ。

この店を一躍有名にしたのはグルメ漫画「美味しんぼ」だった。漫画で紹介されたメニューは「ジャガイモのバター煮」。たまたま、美味しんぼの原作者にこのメニューを出したら好評で、それが漫画に採用されたのだそうだ。

そりゃ、頼むしかない・・・のだが・・・

ジャガイモのバター煮は、作るのに手間がかかるため、予約注文しか受け付けていないとのこと。残念、残念、残念だが仕方ない。それだけの看板料理を持っているのなら、ほかの料理だって美味いに決まっているだろう。

気を取り直して、地酒「北育ち」とともに注文したのが「カキとカニ内子オイル漬け」。もともとカキも内子も好物なのだが、カキの苦みと内子の甘味がマッチしていて絶品だ。ほかにも美味そうな肴がある。味百仙、なかなかデキる。今度は口開けで来よう。予約もしておこう。

「客引きを 無視してふらり 一人酒」おそまつでした!

〇〇〇
今回はここまでとします。読んでいただきありがとうございました。なお、このエッセイは2006年3月の備忘録なので、店の情報など現在とは異なる場合があります。

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