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私だけの特捜最前線→47「ダイナマイトパニックⅠ・Ⅱ~1本で2つのドラマが楽しめる前後編」

※このコラムはネタバレがあります

「ダイナマイトパニック」は、ⅠとⅡの前後編に分かれており、サブタイトルとして「Ⅰ・殺人海域!」「Ⅱ・望郷列島!」が付いています。特捜最前線らしく、前後編が全く雰囲気の異なるドラマになっているのです。

「Ⅰ・殺人海域!」は、謎の組織から「どこかの駅に爆弾を仕掛けた」との予告が入り、ある実業家が所有する高額な絵を要求するという話。組織が何者か分からず、要求の意図も不明で、特命課は翻弄されます。

一癖も二癖もある実業家との交渉も難航し、爆発予告時間は徐々に迫ってくるというスリリングな展開に終始します。そして、ドラマの後半で組織の正体、さらに実業家との関係が解き明かされていくのです。

組織と思われた犯人は単独犯の男で、伊勢志摩の同じ島の出身である友人を殺された仕返しに実業家本人を狙っていました。「Ⅱ・望郷列島!」では、島を舞台にしたさらなる真相へと深入りしていきます。

事件の背景には、男と友人が慕う女性の存在がありました。女性は過去に、実業家が目論んだリゾート開発に反対し、抗議をしたことで逆に実業家の一派から乱暴され、自殺未遂に追い込まれていたのです。

男と友人は女性を励ますとともに、自分たちが東京へ出て成功し、数年後に再会することを誓い合います。しかし、実業家の犯罪を立証しようとした友人は、権力の前に屈し、ついには殺害されてしまったのです。

男がどのようにして実業家に復讐するのか、その女性は今どこで何をしているのか、実業家は男の言うとおりに行動するのかなど、クライマックスに向けて、ドラマはスピーディーに展開していきます。

このドラマでは、実業家役の神田隆さんが「嫌味ったらしい権力者ぶり」を見事に演じています。事件を起こした男が「警察はいつでも権力者の味方で信用できない」と言わしめるほどの敵役ぶりを見せつけます。

交渉役を務めた船村刑事(大滝秀治)は、何度となく実業家に振り回され、苦虫を噛む思いをさせられました。その中で、実業家たちが男の友人を殺した証拠をつかみ、ついに実業家に手錠をかけたのです。

船村は「貴様のようなやつがいるから、こんな事件が起こったんだ」と激しい口調で実業家を罵倒します。視聴者としては「よくぞ言ってくれた」と拍手を送りたくなるような場面でした。

前編では爆弾による大量殺人の恐怖を見せ、後編は一転して友情や哀しみといった人間ドラマを描くという、長坂秀佳氏の脚本とダイナミックな演出の素晴らしさには脱帽させられましたね。

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