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酔いどれ男のさま酔い飲み歩記~第73回「秩父路で温泉と酒三昧に極楽気分」

「一人酒」、それは孤独な酒飲みのように聞こえるだろうが、実はそうでもない。私は一人酒という言葉を酒場で飲み歩く時に使っている。にぎやかな雰囲気に包まれれば、その店に居る人は全員、飲み仲間だ。

withコロナでようやく一人酒が再開した。が、まだまだ心置きなく飲めるようになるまでの道のりは遠い。ならば、体験談エッセイでも書くとするか。酔いどれ男のさま酔い飲み歩記~第73回「秩父路で温泉と酒三昧に極楽気分」である。


はじめに

ひとり旅の目的はいろいろある。いつも「温泉に浸かって、風呂上がりに一杯やる」というのを楽しみにしているが、それ自体が旅の主目的になることはほとんどない。でも、一度くらいはそんなひとり旅に出たいと思っていた。

埼玉県の秩父路で、この極楽気分のひとり旅を実現させた。2002年4月である。その1カ月前、旅先で食あたりを起こし、お楽しみの酒もグルメもパーになった悪夢があったので、「そのリベンジを果たす」との思いが強く反映されたのだ。

さあ、温泉に入って飲みまくるぞ!

小鹿野町「クワパレスおがの」~温泉の後のレストランで昼酒

1日目の秩父路は雨だった。いつもならテンションはだだ下がりになるところ・・・だが、今回は違う。何しろ、目的は温泉と酒なのだ。天気は基本的には関係ない。

小鹿野町営の日帰り温泉施設「クワパレスおがの」(現在は閉鎖)が、1日目昼酒の目的地。水着着用のクアハウスと温泉入浴施設が一体となっている。水着の用意は無いので、当然のごとく温泉にドボンと浸かる。春の雨は冷えるので、体が温まるのはありがたい。

さあ、風呂上がりの昼酒だ。施設内のレストランに入る。まずはビールから、と思っていたら、地ビールがあるじゃないか。これは注文するしかない。肴には旬のタラの芽天ぷらがある。これも最高の組み合わせだぞ。さらに一口ゆず豆腐、しゃくし菜漬けもいただこう。

ビールの一口め。これは格別だ。1カ月前、温泉施設に行きながら、急な腹痛と下痢で酒を断念させられた・・・その無念さもあるので、より胃袋に染みわたる。

タラの芽は予想していたよりも大きめだったので、ひょっとすると栽培ではなく、天然ものだったかもしれない。しゃくし菜は秩父地方の特産らしく、野沢菜に似ているが、シャキシャキした歯触りが心地よかった。

送迎バスを利用するので、バスの時間まではゆっくりできる。肴もそろっているので、ビールをもう一本飲もう。腹も減ったのでざるそばもいただくか。

すっかり酔っ払って気分爽快・・・が、好事魔多し。

送迎バスに乗り込もうとしたら、なんと団体客とバッティングしてしまった。まるで団体の貸し切りの中にいるような気まずさ。せっかくのほろ酔い気分も台無しだ。雨降りだし、歩ける距離じゃないから、我慢するしかない。トホホだよ。

秩父の夜酒~チェーン居酒屋「庄や」からそば屋「入船」へ

相変わらず雨は降り続いている。この日2カ所目の日帰り温泉は西武線の横瀬駅から徒歩10分。送迎はなく、土砂降りのなかを歩かねばならない。昼酒のほろ酔いもすっかりさめ、体も少し冷えてきた。早く温泉に浸からねば。

やって来た武甲温泉は、横瀬川沿いにある自然あふれる天然温泉。秩父市街地からも近いので地元客らでにぎわっている。単純硫黄温泉のほか、炭酸泉もあるから、じっくりと体を温めるとしよう。

温泉に浸かったら、風呂上がりのビールといきたいところ。だが夜酒に備えて、ここでは自重し、トマトジュースをゴクリ。そして休憩室でごろ寝。呑んべえを自称してはいるが、まだまだ小原庄助さんの境地には達していないな(苦笑)

武甲温泉からの帰りはタクシーで宿泊する第一ホテル秩父に直行。チェックインしてから仕切り直しで夜酒とする。口開けなので、手っ取り早くホテルに併設するチェーン居酒屋「庄や」にしよう。

まずは秩父の地酒から・・・無いぞ!

これは驚きというか、残念だった。決して日本酒の品ぞろえが悪いわけではなく、全国の銘酒が揃っている。でも、今の私は秩父の酒が飲みたかった。無いものねだりをしてもしょうがない。男山の純米酒でいくか。

肴は刺身の盛り合わせ、とり皮のパリパリ揚げ。山に囲まれた秩父で刺身か。日頃、山国信州に住んでいても、居酒屋で刺身を頼むのは定番だから、よしとしておこう。「庄や」の名誉のために書いておくが、決して店の雰囲気や居心地は悪くなかったよ。

口開けなのでサッと飲んでパッと出る。秩父の街中に繰り出して次の店を探そう。ここは何を置いても秩父の地酒が飲みたい。その一念で店探しをしていたら・・・

「武甲」の看板を見つけた!

看板を掲げていたのはそば屋「入船」。まさに渡りに船じゃないか。そば屋で飲むなんて、まるで江戸っ子の粋を感じる。が、まあ、それよりも地酒だよ地酒。

日本酒の冷酒を頼んだところ、こちらの目算どおり「武甲正宗」の純米生酒が出てきた。こいつはありがたい。肴はモツ煮。これでチビチビと飲むとする。テレビを見ながらなら手持ち無沙汰にならなくていい。

ボチボチ頃合いだな。勘定を済ませて店を出たところで「そば屋だったなら、シメにそばでも手繰ればよかった」と後悔。とどのつまり、粋な江戸っ子にもなれなかったよ。

道の駅「大滝温泉」~山のなかの日帰り温泉で昼酒

2日目の温泉と昼酒に選んだのは、秩父鉄道三峰口駅からさらにバスで山中深く入り込んだ大滝温泉。秩父市と合併する前は大滝村だったところ。道の駅「大滝温泉」という名のとおり、日帰り温泉施設があるのが嬉しい。

風呂上がりは休憩所でひと休み。セルフサービスで生ビール、枝豆、田楽味噌を頂戴する。休憩所は地元の高齢者のたまり場になっており、おばあさんたちがカラオケセットで代わる代わるに歌いまくっていた。まるで老人クラブの宴会に紛れ込んだかのようだ。

もうちょっと飲みたい。施設内のお食事処「郷路館」に行こう。

ここでも秩父の地酒にこだわるぞ。秩父錦の冷酒を頼み、肴には中津川いも田楽。これも秩父の特産らしい。地酒に地元グルメか。今日の昼酒も極楽極楽。道の駅には路線バス停もある。
バスが来るまで腰を据えて飲むとするかな。

〇〇〇
今回はここまでとします。読んでいただきありがとうございました。なお、このエッセイは2002年4月の忘備録なので、店の情報など現在とは異なる場合があります。


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