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酔いどれ男のさま酔い飲み歩記~第84回「東松山やきとりをわざわざ食べに」

「一人酒」、それは孤独な酒飲みのように聞こえるだろうが、実はそうでもない。私は一人酒という言葉を酒場で飲み歩く時に使っている。にぎやかな雰囲気に包まれれば、その店に居る人は全員、飲み仲間だ。

withコロナでようやく一人酒が再開した。が、まだまだ心置きなく飲めるようになるまでの道のりは遠い。ならば、体験談エッセイでも書くとするか。酔いどれ男のさま酔い飲み歩記~第84回「東松山やきとりをわざわざ食べに」である。


はじめに

地元の方にはたいへん恐縮なのだが、埼玉県の東松山市と言われても、どのあたりにある街なのかピンと来ない人がほとんどではなかろうか。観光地・川越市から東武東上線で7駅ほど北上したところにあり、ベッドタウンとして人口も多い都市だ。

聞き馴染みがあるとすれば「東松山やきとり」というご当地グルメだろう。東松山観光協会のサイトでは、日本7大やきとりの街の一つだと宣伝している。やきとりの店も数多くあると聞いており、地元密着の専門店も珍しくないそうだ。

それでは出かけよう!やきとりの街・東松山へ

東松山「とくのや」~東松山やきとりの流儀に触れて


お気づきの方もいるだろうが、東松山では「やきとり」と呼ぶ。焼き鳥ではない。それは、メインが鳥肉ではなく、豚肉だから。豚のカシラ肉を使うのが東松山の特徴だという。焼きトンと言い換えないところにも、こだわりを感じさせてくれる。

東松山で飲み歩くとなれば、やきとり屋に行くしかないだろう。それでも、市内に数多くある店の中から選ぶのは簡単ではない。ならば、いつもの指標を使うか。吉田類さんが酒場放浪記で訪ねたやきとり屋なら間違いなかろう。

そんなわけで1軒目は「とくのや」を訪ねる。焼き台を囲むかのようなコの字カウンターだけの店。まずは生ビールをいただこう。肴のやきとりは、どの部位にしようかな・・・と、そこにいきなり親父さんが串2本をサッと出してきた。

何も注文していないのに、どういうことか?

これが、とくのやのスタイルなのだ。言わば、お通しのようなもの。串は、もちろんカシラで長ネギが挟んであるネギマ。これは嬉しい不意打ち。

もう一つ、東松山やきとりで忘れてはならないのが味噌だれ(辛みそ)。焼きあがったやきとりに、お好みの量をかけて食べるのが流儀。とくのやの辛みそはトウガラシの真っ赤な色が強烈だが、見た目よりも辛くはない。

カウンター席は次々に訪れるご常連でどんどんと埋まっていく。親父さんも焼き台から離れられなくなるくらい忙しい。追加注文をするタイミングが難しいが、ご常連は間髪入れずに注文している。私も頃合いを見計らいレバとタンを追加した。

サッと飲んでパッと・・・がやきとり屋。次へ行くか。

東松山「こうやんち」~ディープさにも懐かしさを感じながら

続いてやって来たのは「こうやんち」という酒場。繁華街から外れた住宅街にあり、しかも建物がバラックのようにも見える。超地元密着のディープな雰囲気が漂うが、百戦錬磨の呑んべえは怯まず店内に潜り込む。

カウンターとテーブルの大衆食堂っぽいような店内は、どこか懐かしさを感じさせる。BGMが演歌だからかもしれない。カウンター内の女将さんに生ビールを注文。そして肴は当然のごとく、やきとりを頼もう。

この店は、とくのやとは違っていきなり串を出さず、ちゃんとお客の注文を聞いてくれる。ならば、親父さんにカシラ、軟骨、シロをお願いしよう。焼きあがるまでの箸休めは、お通しの野菜の浅漬け。

今日は肉メインなので、これは嬉しい。

こうやんちの辛みそは、白っぽい色で一見辛そうには見えないのだが、とくのやよりもピリ辛が強く、これはこれで美味い。食材のカシラが共通なだけに、みそだれには各店のこだわりが垣間見られる。

それにしても親父さんと女将さんはマイペースだなあ。注文が途切れると、厨房奥のテーブルに腰かけてひと休み。注文が入ると、やおら料理に取り掛かる。演歌が流れる老舗のやきとり屋。いいじゃないか。こっちも、のんびり飲ませてもらうよ。

東松山「やきとりひびき」~チェーン店のやきとり屋もいい

飲み歩きも3軒目になった。次はどこへ行こうか。そろそろ、やきとり以外のものにするかな・・・と思ったのだが、せっかくの東松山だ。ここは最後までやきとりで通そう。

東松山駅前まで来て、「やきとりひびき東松山駅前本店」に入る。チェーン店っぽいような酒場で、店内はかなりの大箱である。それでも、モンドセレクション最高金賞受賞の「秘伝のみそだれ」をウリにしているのだから期待できそう。

3軒目もビールから。生ビールではなく、川越地ビールの「やきトンビール」をいただく。とことんやきとりにしたから、酒もとことんビールってことか。まあいい。やきとりはカシラ、ロースやきとん、つくねを頂戴する。

やきとりを「秘伝のみそだれ」でいただく。

こうやんちほどではないがピあリ辛で美味い。同じカシラを食べているのに、3軒それぞれに違う味わい。単にみそだれの違いだけではなく、焼き方や店の雰囲気といった要素も加味されるからだろう。東松山やきとりは相当奥が深いぞ。

東松山「ブルーラグーン」~最後はさっぱりとバーで締めくくり

東松山やきとりとビールでかなり腹いっぱいになった。でもビールじゃあ、あまり酔った感じにはならない。締めくくりは強めの酒をいただくとしよう。おあつらえ向きにバーがある。「ブルーラグーン」か。入ってみよう。

人当たりのよさそうなマスターと、見習い中の女性バーテンと二人で切り盛りしており、まずはジンライムを注文。マスターに「長野県から観光で来た」と話したら、「東松山へ、ですか?」とずいぶん驚かれた。

観光目的で来る人は皆無なんだろうな。

マスターとあれこれおしゃべりをしつつ、ウイスキーの白州、デュワーズをそれぞれロックでいただく。ここで一気にアルコール量を挽回したようで、酔いもどんどん回っていく。

カウンターにご常連が座り始めたな。そろそろシメるとするか。

〇〇〇
今回はここまでとします。読んでいただきありがとうございました。なお、このエッセイは2019年2月の忘備録なので、店の情報など現在とは異なる場合があります。


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