2019年の楽曲10選(レビュー)

●こんにちは。イメソンとか欲しがっちゃうタイプの文字書きこと名南奈美です。今回は2019年に出た曲から10曲選んで語る記事になります。MVがある・Youtube Premium会員でなくても公式で聴ける楽曲はリンクを添付していますので、気になったらどうかよろしくお願い致します。


恋色監獄/OSTER project feat.初音ミク


 最初恋愛監獄だと思ってた。イントロからドラムもオルガンもピアノもピコピコも踊っていてよい。OSTER projectさんの曲はピアノ・オルガン・シンセといったキーボードセクションがめちゃくちゃ動いて楽しいんだけれど、この曲はとくに顕著。二番はベースまで動きまくりで運動会の様相です。ときどき聴こえるピコピコ最高。なのに歌詞が切ない……。すき……。
 間奏の流れが最高。落ちサビのシンセ聴いて「スズムとかのオタクの何割かはすきな編曲だ!」と思ったので該当する人は聴いてほしい。先述の通りピアノも大活躍だしね。
 間奏と落ちサビを経たラスサビ、その最後の「惨たらしく汚れたバイバイ」の爆発力がやばいし、曲の締めがライブみたいな掻き回しなのもOSTER project全開でウルトラ良すぎる。ウルトラ良い。
 ちなみにこの曲全部マウス打ち込みらしい。つよい。
 ちなみにと言えばちなみに、OSTER projectさんが全曲編曲をしている『アンダーバースタジオジャパン』『ダーバーテイメント』が名盤だから恋色監獄がよければそれも聴いてほしい。


ワンダーランド/majiko


 ボーカルエディットも四つ打ちリズムもストリングス&ホーンも素晴らしいね……。ワンダーランドというタイトルにマッチした愉快に跳ね回る楽器がすごい。イントロからドキッとするし、間奏の美しいピアノからのヒヤッとする鋭いパート→Cメロが印象に残りまくる。
 そして全体的にウッドベースの弦っぽさがエロい。生々しいウッドベースは性的。
 majikoさんのボーカリストとしての表現力も限界突破している。スレたところも嘆きも痛切も、夜の都会って感じの声をしててすごく好き。夜の街明かりやら改札やらメリーゴーランドやらが浮かぶお洒落楽曲を集めたコンピアルバムあるのかな。
「愛したかったんだ、ただそれだけだった」という最後の歌詞が終わるとガラスが割れるみたいな音がしたのもビビっときちゃうね……。痺れる。
 ちなみに作詞作曲majikoさんなんですけど、のっけから「厭らしいMADなネオンのサインでクソみたいな気分なの なんで?」なんですよね、最強が過ぎる。歌詞が天才なので検索して読んで。Youtubeの公式MV消えたの なんで?


JUSTadICE/大森靖子


 作詞作曲大森靖子・編曲ANCHORのアニソンだって? 最高が過ぎる。
 イントロなしで歌から始まるのは同じコンビの『family name』と一緒だけれど、前奏までの盛り上げかたはこっちのほうがすき。歌詞はめっちゃアニソンしてる。「君と僕」「あなたとわたし」の感情爆発な歌詞がめちゃくちゃ好きだし、サビ終わりに提供作品のタイトル叫ぶとか『ジョジョ~その血の運命~』『かってに改造してもいいぜ』みたいな王道感でイケてる。熱いアニソンって素敵。
 「1・2・3巻まで読んで飽きちゃったとこが最終回」ってジャンプアニメのオープニングに突っ込むセンスいつもすごいと思ってる。誰にも見向きをされなくなってからが本番、という意味にしても。『JUSTadICE』はしかし歌詞としては二番が一番好きで、「光になった少年の目には何も映らない」「ねえ孤独が君だけの透明な武器ならば僕だってふざけた顔で遮ろう」はもはやファビュラスな文章だと思う。
 二番サビ終わってからの静かでピアノが綺麗なパートかーらーの盛り上がりかーらーのベースかーらーのロックなラップパート。シンセ含めて最強かよ。無限に聴ける。「DIE(DIE) DIE(DIE) DIE(DIE) DIE(DIE) DIE(DIE) DIE(DIE) DIE(DIE) ダ・ダ・ダ・ダ」がカッコよすぎるしその前の「やっと正義の黒賽回せる」がまたバシッと決まってて……大森さんのバシッと決めてくる作詞愛してる。
 編曲はANCHORさんの作るカッコいいロックそのものって感じがする。ピアノもドラムもギターもベースも仕事しまくってて思いっきり盛り上げていて。サビ前にグリッサンドも入っていてキラキラしていて……。Left-Moversさんのストリングスも美しい。とにかく編曲の気迫が凄まじい。バシッとしてる。
 バシッと決めちゃう大森ANCHORコンビのアニソンロックがガラス割り音で締められるの気持ちいいの権化。来年も色々やってほしいです。

決闘/PENGUIN RESEARCH(作詞作曲堀江晶太)


 ボヘミアンラプソディの映画は観たけどそれ抜きにしてもすごく好き。熱いアニソンはよい(二回目)。
 PENGUIN RESEARCHって曲を出すたびに期待以上の予想外を繰り出してくる印象で、そういう意味では今年のどの曲も素晴らしかったんだけれど、総合的には『決闘』。歌詞と構成と間奏のよさ大賞。
 ドンドンパ! からドカドカドカドカ~ってなって熱い歌詞からのラップからの\決闘/からのうぉーうぉーいえーいえー。いやあ至高。燃えるし萌えるね。二番終わって打ち込みビートになって英雄になんて~のパート、後半からノスタルジックな音色のシンセ入ってくるのほんと愛してる。それとPENGUIN RESEARCHは『wasteland』もとても好みなので『決闘』の「御託より勝ち星あげてみろってな」も死ぬほど突き刺さった。そして決闘のギターソロは今年聴いたギターソロで一番好きです。ラスサビの(ドンドン)\決闘/みんな好きでしょ? 私はとても好きだよ。

 今年実は夏に賞投稿用の長めの小説を書いたんですが、オチは決まっているものの主人公はそんな重大な罪を犯して本当にいいのか、別の終わりかたのほうが平和でいいんじゃないのか、と迷ったとき、『決闘』を聴いて勇気をもらい、無事に罪を犯させたというエピソードがあります。背中を押してくれるソングです。


Troll Inc./神様、僕は気づいてしまった(作詞作曲東野へいと)


 もう完全に東野へいとさん=Neruさんの前提で語ることを許してほしいんだけど、Neruさんだと『SNOBBISM』がすっごい好きなんだよ私は。で、ボカロ投稿しなくて神僕に専念してる雰囲気で、もうああいう新曲は聴けないのかなーって思ってたところにこれ。もはや感動した。カラッとした神僕曲は『TOKIO LIAR』とか好きだけど『Troll Inc.』はもはやNeruさんで言う『ハリボテ』並みのカラッとした敵意っていうか、ヘイトだよね、東野ヘイト……。鬱屈としたやさぐれ、ピープルへの嫌悪、シニカルな失望。Trollは輪唱って意味で、ネットスラングだと荒らしも指すらしい。
 音使いがとてもお洒落。今年のお洒落ソングでは一番好きかも。先述の『ワンダーランド』もお洒落でイケイケで街だけど、この『Troll Inc.』は街に溶け込むタイプのお洒落さんなんだよ……。生活感のあるお洒落さが歌詞とリズムと音作りに滲んでいる。そういう曲ってあんまりない。


乗ってけ!ジャパリビート/PPP×どうぶつビスケッツ(作詞作曲オーイシマサヨシ)


 はちゃめちゃにノリがいい。生演奏なのもあって音もいい。イントロの発車ベルもスズムに毒された人間としてはとてもいい。あと堀江さんにも毒された人間としてはビブラスラップも嬉しい。
 ビッグ・バンドジャズと言うんだろうか、ドラムとピアノとサックスと木琴がしんどいほど気持ちいい。ピアノとドラムが動きまくってたら大体好きになる人間だけどもちろんそれ以外にも、二番サビ終わってからの展開もビックリしたし、ホーンセクションのキメがスーパー・クール。
 Instrumentalで聴くとさらに音がよく聴こえて楽しい。ピアノあたり特にね。でも歌があったほうがやっぱり楽しい。どっちも買おうね。


Alternative Rap Battle/Division All Stars(作詞作曲invisible manners)


 ヒプマイってすごいのでは? と思った曲。イントロからカッコよさハードモード。十二人ぶんのラップを考えるってめちゃくちゃ大変そうだけど、キャラに合わせつつ印象的なリリック書けるのすごい。
「いっちょ前にマッチョな事言ってまちゅねぇ?」
「ブランケットに包む腐乱する痛ましいフランス・ルイ17世の幼気な魂」
「公務執行妨害だぜ頭部ぶっとぶがいい」
「Bring on Bring on キンコンカンコン」
 がライムとして超すき。何気にボーカルエディットというのかミックスというのかも凝っていて、聴きやすさと印象に残りやすさが同居してるグレートな仕事。各キャラごとにオケが変わっていくのも面白く、三郎さんパートのストリングスと独歩さんパートのギターとかが好き。
 ヒプマイ楽曲は『あゝオオサカdream'n night』が注目を集めた印象だけど、やっぱり初見の衝撃であったり、長いが故のここすきポイントの多さであったりで、『Alternative Rap Battle』派。


しう/MARETU feat.初音ミク


 MARETUさんは他にも『ゴキブリの味』『マジカルドクター』と衝撃作を投稿したけれど、語彙力で殴ってくる『しう』が結局ランクイン。歌詞がとてもいい。なんでそんな歌詞を書けるんだ。MARETUさんの歌詞はいつもいいけど今回はすごい。
 え? だって
「人の子もどの子も生まれが総て \ソイヤッサー/ 宝籤外せば 孤独と無力 THIS IS LIFE (wow)」
「仕方なく、貧しく客引くあなたには限界だろう?人間界は」
「なぜなぜその子が恨めしい?…いや心の底では羨ましい?」
「愛情の抜け殻に恋を 純情の燃えがらに性を」
だよ?
 「愛情の抜け殻に恋を」はうんうんって感じだけど「純情の燃えがらに性を」がセンス良すぎの性格悪すぎでドン引きするほど愛した。純情の燃えがらに性を、私じゃ一生考えても出てこないセンスだ……。
 曲としてはイントロの心臓の音とか全体的なゆったりずっしりなリズム、「THIS IS LIFE (wow)」の(wow)でパァンッってなるのとか、二番入りで泣き嘆くみたいな声と一緒に踏切の音が入ってるのとかすごい萌える。\ソイヤッサー/も良い。『ゴキブリの味』が構成や曲調としてのキャッチーを突き詰めた感じなら、『しう』はワンポイントとしてのキャッチーを突き詰めた感じかな。ドラムが激しいのもベースがしっかりしてるのも格好いい。

僕ラノ承認戦争/CIVILIAN feat.majiko


 イントロからドラムのロックは名作の法則。左右のギターや二番からのシンセがすごい好みなロック。サビ入りが一瞬ボーカルだけになるのいいよね。コヤマさんの声ときどきドキドキしちゃう危うさがあって、majikoさんとコラボする意味ってそういう面では共鳴だよな、と思う。共演ではなく共鳴。単純にmajikoさんって酸いも甘いも知ってそうな若い男声との相性がいいのもあるけど。
 歌詞が世間への皮肉で溢れる早口ソングでゾクゾクしちゃう。ひねくれだけでは言い尽くせない失望感、傷への痛がりを感じるすごくいいリリック。
「あなたにとってはきっと明日には忘れるようなそんな言葉で何故傷つくのだろう」
「分かってんだ分かってるよ あなたと解り合えないこと」
「歩いているだけでごらんよ後ろ指さされまくって あれは×でこれは○ってお前は誰だよ」
「『あなたの為』とか言って差し伸べたその手を取って僕が泣いて喜びゃ満たされますか」
 ってとことんまで世間と自分、あなたと僕の温度差を語り語り、ラスサビには「来世の果て また会いましょう それまではどうぞさようなら」と完膚なきまでに隔てる。「来世の果て また会いましょう」という言葉、「来世は会いたくないとかそんな風にお前を意識したくもない」的な底なしの決別を感じる。勝手に感じてる。
 そんな感じで好きな曲。


モノポライズ/Akali

https://youtu.be/WAljMaIekCc

 ぶっちゃけめっちゃ悔しい。なんで私は前に推してて性格合わなすぎて嫌になって離れたクリエイターがその後作った曲にハマっているんだ? どうして? わからないけどめちゃくちゃ好きになっちゃったんだよ……。スプラトゥーンパロディだから歌詞と言うべき歌詞は空耳的な「ひとりじめしろ」くらいしかないけどそのメロディもすごい好き。でも何よりEDMらしくドッドッドッドって盛り上がっていくパートがシンセリフもグィィィィーーンもとにかく心地好くて……。そりゃ好きになるわ。悔しい。
 今まで聴いたエレクトロなインストでも上位の好みさなので聴いてほしい。そしていつか作者に何かあって動画消えたら一緒にやるせない気持ちになってほしい。


10選候補作(10選)


●10選に入れようか迷うくらい好みな曲。


ダイエッター典子/ジェニーハイ(作詞作曲川谷絵音)


  荒ぶるピアノと歪んだギターがとってもツボ。ジェニーハイとかいう怪物バンドすき。


ドブネズミ・ザ・ナイトクルーザー/PENGUIN RESEARCH(作詞作曲堀江晶太)

  セカンドアルバムの新曲では一番好きです。ピアノソロとオーケストラヒットと歌詞がイケている。


あっけなく人が死ぬ映画/appy feat.初音ミク


  とにかく歌詞がよい。それからDTMだからこそな音色や処理も多く面白かった。


Instant@Heart/久保ユリカ(作詞作曲ANCHOR)
  その後の断捨離彼氏(ZOC)やprofessional(A3!)に繋がるANCHOR流EDMサウンド。アウトロのリードシンセと間奏よき。


ダイアローグ+インビテーション!/DIALOGUE+(作詞作曲ZAQ 編曲堀江晶太)


  ガリガリかっこいいサウンドに笑っちゃうくらいロックなギターソロに緩急カウベルと面白い曲。堀江さんってやっぱりkemuさんなんだなあ。

※2020年6月5日(金)にリンクをフルMVに差し替えました


沈黙/神様、僕は気づいてしまった(作詞作曲和泉りゅーしん)


  今でもめちゃくちゃ好きだけど、曲や歌詞そのもののよさより自分の感情を勝手に投影して評価上がってるだけな気もする。でもめちゃくちゃ良い曲だと思う。


カレイド/あいあ feat.カゼヒキ


  豊かな語彙とお洒落で少しエレジーなサウンド。夜っぽくて素敵。どんどん進化していってほしい。


忍びのすゝめ/まふまふ


  とにかくあざとい和ロック。和ロックってだけであざといのにピアノイントロにセリフ要素にEDMパートに過去曲リンクとか盛りすぎ。ビーフカツカレーかよ。


三月がずっと続けばいい/三月のパンタシア(作詞作曲堀江晶太)


  「振り向いて最後に言わなくちゃ」という最強エモーショナルセンテンス。


CRYMAX!!/NormCore(作詞作曲れるりり)


  とにかくファンキーなれるりりサウンド。おっ洒落~!歌詞もいい感じにアニソン用でいい。


●今年もたくさん素敵な楽曲が出て、私の好みも増えて、音楽的に楽しい一年でした。加盟田スケジュールも影響を受けた楽曲がたくさんあるので意識して聴くと面白いかもです。よいお年を。


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