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おばあちゃん家みたいな甘味処が高円寺にあるんだけど行かない?

文明開化の花が咲きほこる現代。

和菓子はいつからか、生活の片隅へと消えたように感じる。

とは言えど、

「洋菓子」の登場によって比較対象が生まれたからこそ、私は「和菓子の良さ」というものが、より明確に際立つようになったと思う。お茶の香りや、炊きたてのあんこの香りは日本人の心を和ませる。ほっとさせる。安心させる。

包容力のある甘味(かんみ)、それが和菓子だと、私は思う。

今日の舞台は、中央線沿線の高円寺。
いい雰囲気を漂わせる純喫茶と出会うべく、はるばるここまでやってきた。

レトロがおしゃれ。

純喫茶といったレトロな場所が若者の間で空前の大ブーム。こういった価値観は最近さまざまなSNS(主にインスタグラム)で見かける様になった。
歴史は繰り返されると言われるが、まさにといったところだ。

私もそんな流れに乗る若者の1人。

ところで、「インスタ映え」という言葉を聞いたことはあるだろうか?

「インスタ映え」によって食品ロスや不適切な行動が横行し、しばしば社会問題となっているが、悪い1面もある一方で、人間の美的センスを飛躍させる、起爆剤になっていると私は感じている。

インスタグラムが無かった時よりも、みな美しいものを求めるようになったし、企業側も一層見た目の綺麗さを追求するようになった。

美しいと感じるポイントやベクトルは様々だが、それでも「美」というとものを求めることは人生の豊かさに繋がると思う。

何が「映え」に当たるかなんて未だによくわからないが、投稿した写真が閲覧者の琴線に触れることを指すならば、感性を育てるといった点ではインスタグラムも良いのかも知れない。

なんて、

べらべらとインスタグラムについて語っているが、メインの純喫茶が何一つとして見つからないのはなぜだ??かれこれ40分ほど高円寺を散策している。地理感覚が壊滅的な私にとって、初めての土地は難しい(苦笑)

ふと周りを見渡すと、私は北口近くの商店街へと入り込んでいた。懐かしさ漂う町のパン屋さん。店前に置いているシベリアが美味しそうだ。

ん?こっちには昔ながらの八百屋さんがあるではないか!5キロはゆうにありそうな白菜。持ち帰ることを想像するだけで腰が痛くなる(笑)

一見情処溢れる昭和のような街並みかと思えば、案の定、高円寺にも奴らの手は伸びていた。

奴らとは、

『 タ ピ オ カ 屋 』

もういっそうのことタピオカを飲んで帰ろうかと自暴自棄になったが、タピる(今年のJC・JK流行語大賞1位)為だけに、はるばる高円寺まで来たなんてお財布に痛手すぎる。

ノスタルジーな喫茶店に巡り合いたいのに、出会うのはNEWオープンの店ばかり。

落胆しながら歩いていると、歩道を占めるほどに行列を作る1つのテイクアウト専門店を見つけた。集団行動心理的に「行列」には思わず興味が湧いてしまう。ちらりと小窓から店中をのぞき込む。

「新?カス、テラ…???いやいやいや、新カステラってなんやねーん!!」

1人ツッコミは本当に恥ずかしいからもうしないと心に決めた。

あれ???

反射する、窓ガラスに茶色く色あせた屋根をかまえる「甘味処」が見えた。

恐る恐る振り返ると、

きょ、、驚愕だ。

まるで舞台は『ALWAYS 三丁目の夕日 』。

向かいは出来たてホヤホヤの新カステラを販売する店に対して、こっちは創業50年はありそうな店。この異様なコントラストが、古びた店をキラリと光らせる。

ドキンっドキンっ


探し求めていたものに巡り会えた喜びで、胸の高まりが聞こえてくる。

ドキドキしながら店に近づくと、古めかしい食品サンプルが置いてあることに気がついた。

手書きで書かれた商品札。紙の焼け具合がアツい。

どれどれ???上段にはかき氷、みつ豆、あんみつに白玉ぜんざい、アイスクリンなどの甘い系。下段にはラーメン、カレー、冷やし中華とお食事メニューだと・・・!!!!!?

ラインナップが震えるほどいい〜~!!!!(昇天)

さらに目を疑わせたのはその値段。ほとんど500円前後という驚きのコストパフォーマンス!!!!こんなお店が家の近くにあったら私は通い呆ける未来が見える。

レトロな休憩場といえば純喫茶だと思っていたが、甘味処は盲点だった。

カランカラン…

「いらっしゃい、好きなところどうぞ~」

店内は間隔が狭いテーブルが5、6っこ。ほとんどが二人がけだ。

地元の人たちであろうおばあちゃんとおじいちゃんが、甘くてあったか〜いお汁粉を食べている姿ががなんだかとっても愛おしい。

「すみません、クリームあんみつ1つお願いします。」

今日はいつもより決めるのが早いだって?

ふふふ、

今日の私は入店する前に食品サンプルと大いに睨めっこをして、気持ちを定め済みなのさ!(どや顔)

あんみつを待っていると、一人の男性が勢いよく店へと入ってきた。男性はお店のおばあちゃんに

「いつものラーメン、あっやっぱり焼きめしにするわ」

と早口で注文を終わらし、直ぐさま本を読み始めた。さらに、間髪入れずに常連客と思われる女性とその友人が来店・・・すると思いきや、店のドアを開けたまたこう言った。

「おばあちゃん〜、この人がこの前話した武さんだよ~〜!」

奥にいるおばあちゃんに話しかけるその姿は、まるで実の家族のようだった。

友人紹介が終わると2人は店には入らずそのまま帰って行った。思わず鳩が豆鉄砲をくらったような顔をしてしまったが、様々な人間模様が繰り広げられれるこの店が暖かく感じるのは、きっと暖房のせいではない。


その後も、店を切り盛りするおばあちゃんを目当てに、次から次へとたくさんの人がやってきたーーー。

「待たせたねぇ、はいどうぞ。」

これが甘味処のクリームあんみつ…!!!

ズシッ

ワンコインなのにしっかりした重量感。

それもそのはず、あんこをダイレクトに感じられる粒あんに、ミルキーだけどあっさりしたアイスクリーム。プラスでもちもちな自家製白玉団子がトッピングされている。完熟したスライスバナナも大きめカットがこれまた嬉しい。

まずはこの上澄み達を一緒に食べよう。


ん〜~〜おいし~〜~〜♡♡

やっぱり甘いものは溶ける幸せがあるなぁ。


あんこは甘すぎてしまうと一気に豆の風味が下がるから宜しくないが、この粒あんは口説くない。

パクっ

こんな風に、あんこだけでもすくって食べれてしまうぐらいの甘さが好きだ。

Ahー!!!!!!白玉!!!!!!!
この歯切れの良さは餅にはない感覚で美味しい♡

そして下までスプーンでほじくれば、黒蜜がたらりとかかる寒天が見えてくる。

んっ・・・!うまっ!

クリーム白玉あんみつとは本当によく考えられているとつくづく思う。

昔からある「あんみつ」という食べ物に、洋風生まれのアイスクリームを乗せることで、どの世代のハートも鷲掴みする「魔のスイーツ」が出来上がる。


私なりの【クリームあんみつの定義】がある。

それは、『 決してアイスがあんみつに勝つなかれ』だ。

あんみつというものは既にカテゴリーを確立している完成したスイーツだ。そこに、新参者のアクセント(アイス)が、ベースを壊すことはあってはならないのと思う。
新しい要素を取り入れ若者の舌に合わつつも、おばあちゃん世代にも受け入れてもらえるような、そんなアイスが相応しい。

絶対にバニラビーンズドバドバ入れて、脂肪分高めの生クリームで作ったアイスクリームが添えられていたら嫌だなぁ(笑)

従来のものに尊敬と敬意をもって和洋をイリュージョンさせた、偉大なクリームあんみつに幸あれ・・・。

大変私は癒された。


「久しぶりに食べたクリームあんみつが美味しかった」というのもあるけれど、この店に、いやこの空間に癒された。



「この店は地元に愛されているなぁ」

という感情は、店側が自称するものではなく、私のようにふらっと店にやってきた、旅人のような来店客が抱く感情なんだな。

お世辞にも、某老舗和菓子屋のような美味さがある訳では無い。

でも、ここは間違えなく、良い店だ。

きっとこれからも「高円寺のおばあちゃん家」として地元の人々に愛されていくのだろう。

「インスタ映え」する様な写真は撮れなかったが、この店はたくさんの「いいね」で溢れていた。

今日行ったお店は「あづま」でした。

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