ウルトラマンについて考えた。

ウルトラマン。

我ら男どもが幼少の砌より憧憬を抱え、令和の今もなお心焦がし続ける、稀代のスーパーヒーロー。

その強さと優しさを今もなお愛し続ける者も多い、昭和のスターである。

だがしかし、どうだろう。

我々は語るほどウルトラマンの事を知らないのではないだろうか。

そもそも物事において「全てを知る」という事自体がほぼ不可能なのは重々承知ではあるが、それでも私の中ではウルトラマンに対する謎は降り積もるばかりである。そんな事をなんとなく考え、今回はウルトラマンについて考察してみたい。


もちろん、一円にもならない。


ウルトラマンが所属しているのはM78星雲にある「ウルトラ警備隊」である。

「所属している」という事は、そこで働く隊員である。

隊員は、ウルトラ警備隊の隊長(ウルトラの父)が、複数いるであろう警備隊員の管轄地を指定し、辞令を出す事によってそれぞれの赴任先が決定する仕組みであるはずだ。

そして我らが知り得る主役級の歴代のウルトラマン達は、赴任先に地球を指定されて赴いた警備員である。

警備隊という宇宙を股にかける大組織に属しているにも関わらず、赴任先には先輩もいなければ出向先の組織もない、言わば地方都市の一人営業所状態で送り込まれたエリート、もしくはうだつの上がらない窓際族のどちらかだと推測できる。

仕事量的には1週間に1度必ず現れる怪獣への対策、処理なのでその他の6日間は待機である。「なんと楽な仕事だろう」と思ってしまうが、その実働の1日は命がけである。そこのリスクから行けばこの勤務体系も納得出来る。


さて勤務があるという事がわかって来ると、気になるのは報酬だ。


地球上では太陽のエネルギーを元に活動している(と記憶している)ので、ウルトラマンの活動限界は3分間。エネルギー効率がいいのか悪いのかわからない。なので食費はかからないと仮定した場合、報酬は必要ないんじゃないかと思うものの「単身赴任」という事は生活の基盤となる場所が宇宙のどこかにあるはずだ。すると、その建物の賃料もしくはローンの支払いが発生して来る。もしも警備隊が提供した住居などがあるとするならば、警備隊に入っていないウルトラ一族の住居はどうなるんだという話になって来る。これを読んでいる皆さんにとってはもう常識ではあるが、ウルトラの父(警備隊長)とウルトラの母(看護師的な仕事)の実子はウルトラマンタロウだけである。他のウルトラマンに関しては血縁や友人関係の縁故採用などである。ウルトラマンレオとアストラは親戚だし、ウルトラの瀧は保釈中、ウルトラマリンはまりんさんとは関係ない。

閑話休題。

警備隊の中でさえそれだけの家庭の数があるのだから、ウルトラの星全体の家庭数などは推して知るべしである。

さて話が戻るが、報酬となると恐らく通貨があるだろうという推測が出来る。通貨があり、それを振り込む口座があり、それを取り仕切るウルトラ銀行的なものがあるだろう。ウルトラマンたちはキャッシュカードでお金を下ろしたり住宅ローンの金利に一喜一憂したり振込手数料に不満を持ったりしているのかも知れない。月給制だとするならば有給休暇もあるし労災もある。ウルトラ労働基準監督署もあるだろうし揉めた場合にはウルトラ家庭裁判所、失職した場合はウルトラハローワーク(自己都合/会社都合など)もある。もはや断言になって来たな。

当然そういった社会性を持った集団である以上、心の貧しいウルトラや道を誤ったウルトラ、母子家庭のウルトラや引きこもりのウルトラなどもいるだろう。

様々な社会問題を孕んだウルトラの星なのに、そこを出て他の星の危機を救うというのは、貧困にあえぐ地域に行った金持ちが自分の力を誇示するためだけに、自分の足元にすり寄って来る人間のみに大盤振る舞いをするような姿に似てはいないだろうか。似てはいないな。

何れにせよ「他の星の怪獣退治」などという大義名分を持った「暫定正義」を行う前に、まずは己の星の中の状況を整えるべきだ。ウルトラの星にも困っている人はきっとたくさんいるはずだ。

灯台下暗し。

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