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高校生と演劇教育 第1回レポート テーマ「授業と部活ってどうちがうの?」

高校生と演劇教育に関するイベントを開催しました。
参加してくださったのは、様々な背景を持つ演劇と教育(とくに高校生に関わる)に関心のある方々、10名ほどでした。
この回の企画意図としては、私自身も長年携わってきた「高校の演劇の授業」について、多くの人と語り合いたい、というのが一番にあります。
その意味で、今日はその第一歩でありました。

第一回のテーマは「授業と部活ってどうちがうの?」でした。
なぜこのテーマにしたのか。
高校生と演劇の関わりで、一番多くの参加者がいるとしたら、それは「演劇部」だと思います。じゃあ、演劇部があるのに、なぜ演劇の授業を作り、それをやらなければいけないのか。
つまり、同じ「高校生が演劇をやる」としても、その形態が違うのであれば、それをはっきりさせることで、何か見えてくることがあるのではないか、と考えたからです。

本日の資料1

違いは、あたりまえですが、あります(位置づけ、時間など)。しかし、同じところも見えてきました。「誰のため」「何を」「何のために」。つまり、「高校生」に「演劇」を「いろいろな目的のために」行っている活動であることは、同じなのではないか、というのが、私の問題提起でした。

では、この「誰のため」「何を」「何のために」という実態は、それぞれの活動でどのように考えられているのか。それが本日の対話のテーマでした。


対話のテーマ

とはいえ、いきなりなにかご意見を、というのも難しいと思ったので、私から、この中に含まれる「視点」(①~④)とそれに対する想定される「疑問、意見」をあげて、みなさまに問いました。


視点① 誰のために

「誰のために」という視点について、まずご意見がありました。大学で教えられている先生から、「誰のために」の主語が、設置者、指導者になっているのが興味深い、というご意見でした。「あなたは誰のために演劇してるの?」と生徒に問うていないところが興味深い、ということでした。

「あなたは誰のために演劇しているの?」
これは演劇をやりたい、あるいは演劇をやっている全ての人に問われる問いかなと思いました。私は、演劇部に投げかけた方がこの問いに意味があるのでは、という返答をしましたが、もう少し掘り下げたい話題でした。


視点② 何を

地域の劇場で高校生に場を提供している参加者の方からは、高校生の「演劇をしたい」という声に割と単純に答えている、というご意見でした。そういった声を受け止めて場を提供するというのはとても素晴らしい活動だなと思いました。

確かに、高校生が「演劇をしたい」という思いを持っているから、演劇部もあるし、活動場所もそうして生まれるわけです。では授業はどうでしょうか。


視点③ 何のために

大学でも演劇を教えており、高校生とも演劇を作っているという参加者からは、大学の場合を教えてもらいました。学科なり授業を設置している機関は、それぞれにディプロマポリシー、つまり育成したい人間像を明記しており、その目標を達成するために、「誰のために」「何を」「何のために」が決まる。高校においても、そうした育成したい人間像があり、それのためにやることも決まるのでは、というご意見でした。


視点④ 相互にどのように関わっているのか

確かに、そうだと思います。そこで、もうひとかた、大学でも演劇を教えており、高校の演劇の授業もお持ちの方からご意見いただきました。
演劇部にしても、授業にしても、演劇をやりたいといって集ってくる、という点は、今も昔も同じであるが、その動機やその生徒たちが必要としていることは変わってきているのでは、というご意見でした。昔は、演劇をやってエネルギーを爆発させることが目的だったところがあるが、今は、コミュニケーションが苦手だから、といったような動機で演劇の場に集ってくる、と。

深く議論はできませんでしたが、確かに、そうした生徒たちの動機、期待していること、というのが変わってきている、あるいは、昔よりも多様になってきている、と言えるのかもしれません。

ほかにもチャットにご意見いただきました。
部活動だと生徒を中心として上演を前提にした活動、授業だと教員をリーダーとした上演よりも演劇的手法を中心とした実践、というイメージがある、というご意見。
確かに、そういうイメージがあるかもしれません。授業でも上演をしているところはありますが、上演を前提としているかというとそうではないかもしれません(でも上演を前提としているところもあるかなと思います)。また、部活でも生徒を中心としてやっているところも多いと思いますが、顧問の先生やインストラクターが中心となって活動していることもあるかもしれません。
そうすると、誰が主導権を持っているか、ということが問題になりそうです。これは、その活動がどういう目的でどのように行われているのか、ということと切り離せない問題かもしれません。
こちらは会の中では取り上げて深く議論できませんでしたので、こちらで紹介させていだたきました。ありがとうございました。

またチャットでは、最初に疑問を提示してくださった先生からも最後にご意見いただいておりました。こちらも会の中では議論できなかったことなので、ここで紹介させていただきます。

「「演劇をしたい」という動機と「演劇をすることで◯◯したい、なりたい」という動機は似てるようで違う気がしました。」

確かに、と思います。そこで、私が思ったのは、高校生の中には「演劇をしたい」という言葉の中に「演劇をすることで○○したい、なりたい」が含まれていても、それが言葉になっていない場合もあるような気がしました。「演劇をしたい」の中に含まれること自体が、本当は多様(社会に問題提起したい、とか自分の意見を表明したい、とか)であるが、それを曖昧にしたまま、「演劇」という言葉でどうにか回っているのかもしれない。あるいは、そうした個別の動機が、それぞれの活動にどう意味をもって存在しているのか、ということは今後の論点になりそうです。

これからこの連載企画は、もう少し、こうした、高校生と演劇、そして教育がどうつながっているのか、つながっていくのか、細かい視点で、深めていきたいと思いました。

最後にこの連載企画の今後の予定を書いておきます。

【今後の予定】(テーマは変更の可能性もあります)

  1. 5/20(sat) 演劇の授業と部活動―授業と部活ってどう違うの?(終了)

  2. 6/17(sat) 演劇の授業の歴史―演劇の授業ってどこから始まったの?

  3. 7/1(sat) 演劇の授業の目標―演劇の授業では何を学んでいるのか?(※第1土曜日です)

  4. 8/19(sat) 演劇の授業の内容―演劇の授業では何をやっているのか?

  5. 9/16(sat) 高校生と演劇―そもそもなぜ「高校生が」演劇をやるのか?

  6. 10/21(sat) 演劇と高校生―そもそもなぜ「演劇」なのか?

  7. 11/18(sat) 高校生と演劇教育の今後―これからどうするの?どうなるの?

  8. 12/16(sat) 高校生と演劇教育まとめ

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