うたの棚(2023年12月以前)

※すべて別のアカウントから投稿した旧作です。
ジャンルは数の多いものから、他は日付昇順。


短歌

ポインセチア顧みずとも庭の陰よろこばしげに赤々と咲く

ぺらぺらのシールをみんな眺めてる この手ざわりも嵩も知らずに

人になど生まれて来ねばよかったと言い切るために買う一張羅

秋雨に舞い降る木の葉ひらひらと「極楽はどこだ 幸せは何だ」*1

「置いて行かれましたか」なぐさめを置いて次々消ゆ明けの街灯

寒暖差に耐えられぬ者から朽ちて行ったような鴨川の木々

痛いいたいもう嫌を忘れた頃に呼ぶわが手指第二関節

ぺたんこの風船「こんなにも赤に黄に緑にたのしそうなのに」

東屋も狭き長屋となりにけり 移っても又移っても又

卵の薄いうすい皮にくるんで幾重にも今は音を聞かせて

雲母にも岩隠子にもなれず苦しむ昏いボール箱のちり紙

正しさは手すりへ走る静電気 皆がおびえた顔で振り向く

性和して蝸牛のごとく進み行く様を夢見たあの日恋しや


俳句

後なれど上回らんメタセコイア


川柳

「チョコバナナ味」と書いてあんしんと訓む


都々逸

チリンチリンも鳴らせないのに僕の背中は爪で掻く




*1


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