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ハムレットマシーン上演記録

2019年10月19-20日
両日13:00〜18:00

気が向いたので、私が行ったひとり芝居の記録、
ほとんどの人が知らず覚えず消えていくであろう儚い演劇公演を行った記録を残しておこうと思います。

自殺未遂をする一年前、
何か演劇でもしないと死んでしまうという強い不安があったこと、地点がハムレットマシーンを上演するということに衝撃を受けたことがきっかけで、長年の夢だったハムレットマシーンをひとりでやってみることにした。

私が大学生のとき、高田ひとし(現・渋革まろん)がやっていたtabula=rasaという劇団があり、私は彼らの公演でハムレットマシーンと出会った。
ハイナーミュラーという作家のことも時代背景も何にも知らなかった私でも恐ろしく惹きつけられる戯曲、芝居だった。

tabula=rasaのハムレットマシーンの宣伝映像があったので貼っておく。


圧倒的に美しい言葉たち、イメージの洪水、描かれている虚無と嫌悪と希望のようなものに共感しては共感出来るものではないと思いとにかく大好きな戯曲だった。

作品は作品になった時点で私の元を離れているものなので意図を語るのも想いを語るのも憚られる。
私がハムレットマシーンをどう解釈したかは書かない。
しかし解釈し私なりに最善の上演しようと試みたし、奇をてらったわけではなく誠実な思索のもとで作ったしなにより私にはこれしかできなかった。
出来るだけ事実と公演記録だけを羅列していこうと思う。


やったこと

13:00〜18:00まで、会場に私がいるため、観客はいつでも来ていいしいつでも帰っていい。

舞台空間と客席空間は同じ空間にある。

私はハムレットマシーンの台詞を喋ったり喋らなかったり、ハムレットマシーンではない戯曲の台詞をしゃべったり、庭の千草を歌ったり、シャボン玉を吹いたり、レコードをかけたり、マッチを擦ったりキャンドルをつけたり香水をふったりしている。

観客がやってきたら、しっかりと見て
「ようこそいらっしゃいました」
と言い、お辞儀をする。

しょうもない脚本を観客に渡す。

観客はその脚本に従って台詞を言い、私と二人で小芝居を演じる。
だいたい、観客=ハムレット、私=オフィーリアとなっていた。
演じることを拒否することも観客の自由ではあるが、ほぼその脚本は強制力を持つ。
脚本の最後は、観客が私の服を汚すか切り刻むか水をかけることになっていた。

周りに観客がいる場合その二人芝居を観ることになる。

私は私として観客と関わるとともに、五場のエレクトラとしてハムレットマシーンの言葉を発信し続けている。

観客は舞台空間に置いてある物で遊んで良い。
お酒とジュースとお茶が置いてあるので好きに紙コップについで飲んでくれていい。

たまにクラッカーやシャボン玉などを私が渡すこともある。

観客が帰る時は
「ありがとうございました」
と言う。

やったことはそれだけである。

舞台美術


観客が撮ってくれた写真たち



初期段階のプロット


結局、このような公演形態にはしなかったがなんとなくのコンセプトは変わっていない。

観客に自覚をさせるというのはずっと私のテーマとしてある。
断絶の自覚。それを経て初めて私とあなたはコミュニケーションを取ることができると思う。
その自覚を促すことは、嫌な気持ちにさせることでもあり、暖かい場をつくるということでもある。

このときは結局、嫌な気持ちにさせる、という方向ではなく、嫌な気持ちになりつつももうすこし楽しいほっこりした場にできないかなと思った。
観客を嫌な気持ちにさせることは以前もやったのでもう少し大人らしいやり方をしたいと思った。

最後の方に書いてあることは、結局ハムレットマシーンへの理解度が進む上で、そういうことではないと思い至った。のでこれが私の最終的な解釈ではないことを付け加えておく。

舞台美術と衣装

心理的圧迫感の案はなくなり普通にくつろげる空間にしたいとなったものの舞台美術はほぼその通りである。
衣装は古いウエディングドレスにした。


公演前のプレ企画として
鴨川デルタにて花嫁衣装を引き裂く会というのを企画したが
なぜかその日に台風が直撃し、演助と二人でやるしかなくなってしまった。ツイキャスで配信だけした。
ハムレットマシーンの台詞を言いながら雨と風と川の増水のなかウエディングドレスを汚した。もっと燃やしたかったのに雨で火がつかなかった。
寒かったしとにかくつらかった。

ハムレットマシーンであること関係なしにこのルールはなかなかおもしろいと思ったけれども、安全面を考慮すると実現が難しかった。
私の安全なんてどうでもいいのだが、会場やスタッフさんもいる。私だけの問題ではない。
会場の雰囲気や人員の関係もあり、一定時間閉じ込めることがあまり現実的ではない感じではあった。

チラシ

チラシが存在する。
なぜか頼んだわけではないのに恋人が作ってくれて
突然送られてきて笑ってしまった。
面白かった。
私はとにかくいっぱいいっぱいだったのでありがたかった。
必要な情報は裏にシールで記載した。


私はまばらに気が向いたときに、いま言えると思ったときに言えると思った台詞を言っていたが、
1時間くらいでだいたい戯曲全体を一周していた。

実際、はじめから終わりまでいてくれた方などいてとても嬉しかった。

最後は観客が差し入れてくれた花火を、残ってくれた観客と一緒にした。
会場さんには、キャンドルを使ったこともあり、手持ち花火くらいまでの許可はとっていたのだけれど、
かなり煙が会場中もくもくになってしまったので内心焦ってしまった。

ブタの貯金箱をカンパ箱がわりに置いていたのだが二人入れてくれた。とてもとてもありがたかった。
差し入れもたくさん頂いた。

その場ではいろいろなことが起こった、あの場でしか起こり得ないことが、私とあなたでしか起こり得ないことが。
うまくいかなかった部分が大半だったけれど、それだけで私は満足だった。


感想など


・ハムレットマシーン公演関係まとめ

(私のTwitterは消えていますが演出助手が撮影した動画や感想などあります)


・中瀬さんのブログの感想の記事


・立岡さんのブログの感想の記事


公演で観客に渡したしょうもない脚本をのちのち追加で載せる予定。


確か6種類書き、
ランダムではなく、観客によってインスピレーションで、この人にはこれだなと選んで渡していた。

演劇公演はその場限りであること、その場に居合わせることこそが最も重要であるため、文章や写真でまとめたとて大事な部分が抜け落ちてしまう性質のものだ。
しかも私が行うようなごくごく小規模のものは特に消え去ることが美しくもある。
しかし終活の一貫のような自己満足でなんとなくしっかりとまとめておきたいと思った。

私が作品を作る上で大切にしたいことはだいたい変わっておらず、
かつて2013年の8月に行った『戦場の生活』のレビューを築地さんが書いてくれているのでそれも張り付けて一旦終わりにする。


https://note.com/mazytsukiji/n/n8c7dd2281cd4




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