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やまだしす いまさら

ひとしきり泣いたあと、私はBに頼んで彼の遺骨を抱かせてもらった。
身長が高くて、背中の広い大きな彼はびっくりするくらい軽くて、私の腕の中にすっぽり収まるサイズになっていた。

彼の遺骨を抱きながら、私は独白のようにBにたくさんのことを話した。
彼と初めてあったときに一目惚れしたこと。 
付き合えたときに死んでもいいくらい嬉しかったこと。
デートした日のこと。
寂しかったこと。
別れを告げた日のこと。
別れたあとのこと。

彼が聞いていたら本気で止められそうな話を「死人に口なしだ」と言いながら、本当にたくさんたくさんBに聞いてもらった。

話していてわかったことは
私は20年経ってなお彼に惚れていること。
そして、それはもうどうあがいても叶わないことだった。

Bと一緒にたくさん泣いて、やっと落ち着いてから彼の遺骨がどこに収められるのか聞いた。
彼の親が海外に住んでいて、戻り次第遠方の墓に入るということだった。

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