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#570 めあてを勝手に決めない、こちらで勝手にまとめない

2024.4.28.
昨日は初動が遅れすぎて皮膚科で5時間待たされるという悲劇が起こった(Sさん、バレー行けませんでした、すみません…!)ので、今日は朝イチで役所に行ってみた。15分で手続きが終わった。すぐやるって大事すぎるな!!!


勤務校には、教科書作りにも携わるほどの国語のプロがいる。メガネをかけているのでメガネ先生とでもお呼びしたらよいだろうか。

集中が続かなかったり違うことを始めたりと、なかなか学習に参加するのが難しい子が多いクラスを担任されているので、「普段どんな風に授業されてるんですか?」と聞いてみたら、「授業見に来てくださいよ〜」とのことだったので、お邪魔した。

◇◇◇

授業開始時刻に教室を訪れると、もう1人見に来る予定だった初任の先生がまだ到着していないということで、始めるのを待っていた。教室は暗い。電子黒板がついていて、子供の作ったスライドが映し出されていた。

メガネ先生「時間もったいないから始めようか。じゃあAさんどうぞ。」

A「今日の漢字は『祖』です。画数は9。〜という意味があります。書くときのポイントはころもへんにならないように気をつけることと、5画目を中心線に合わせることです。ではここでクイズです。△△というお坊さんは何宗の祖と言われているでしょうか。」

メ「これは難しいな。選択肢とか作って3択とかにするといいよね。」

A「正解は〜宗でした。この漢字の使用例は〜〜です。終わります。」
1〜2分であっという間に漢字終了。

メガネ先生、黒板に一文字書く。

メ「もう一文字書いたよ。」「あ、ノート開いてるね。」「もう書けているね。」

準備ができていなかった子達がヤバいヤバいと漢字をしまったり後ろに教科書ノートを取りに行ったりバタバタとし始め、どんどん追いついてくる。先生も残りの文字を書く。大部分の子がノートが書けたが、それでも追いついていない子がいた。

メ「やっていることが違う。自分のことは後にする。」一刀両断。

メ「物語文を書いた人のことは作者。説明文の場合は」

パッと手が挙がり、先生がBさんをさっと手で指す。

B「筆者」

メ「と、言います。この説明文の筆者は〜さんですね。」

板書。筆者の下の名前の漢字が難しい。

メ「この字は難しいですね。複雑な部分がありますから、よく見ないとね。え、もう書けた?私はまだですよ?早いですね〜。あ、Cさんがまだ書けていないですね。Cさんを見捨てない。」

ちょっとぼーっとしていて書くのが遅れていたCさん、ここで追いつく。

板書の方でも筆者の名前を書き終わり、そのまま範読が始まる。

メ「全部で何段落あったか指で出して。みんな⑥。え!なんでみんな、そんなにパッと分かっちゃうんですか?」

みんな「教科書に書いてあります!」

メ「あ、番号が振ってありましたね。みなさんよく見ていましたね。」

黒板に①から⑦まで番号を書いていく。みんなに⑦はないと指摘され、そうだったそうだったと⑦を消す。

メ「筆者の言いたいことはどこの段落に書いてありますか?Dさん。」

D「①と⑥だと思います。」

メ「と、Dさんは言っています。(隣の子を指して)あなたはどう思いますか?隣の人とどこだと思うか話してみましょうか。」

みんなが隣と話す間、先生は一番のやんちゃ君のペアのところへ行き、「あなたはどう思った?」と声をかけていた。

メ「隣の人と同じ答えになったというペアはいますか?」

半分くらい手が挙がる。

メ「じゃあ、違ったペアは。Eさんどこだと思いましたか。」

E「最後のところに〜という言葉が書かれているので、⑥だけだと思います。」

メ「パッとEさんを見た人いいですね。じゃあ意見が違うと言っていたその隣のFさん、どう思いましたか。」

F「私は①と⑥だと思ったんですけど、」

メ「最初に答えを言ったのいいですね。」

F「①のところにも題名と同じ言葉が使われているので、大事なんじゃないかと思いました。」

メ「今、①と⑥が候補に出ているけれど、①だけが大事じゃないかと思う人は?いないみたいだね。①と⑥の両方が大事だと思う人は?じゃあ、⑥だけ大事だと思う人は?うーん、教室が真っ二つに分かれましたね。じゃあ、それを今日の謎にしますか。

めあてらしきものが決まった。めあてを書いていたら、やんちゃ男子が口笛を吹き始めた。

メ「お、みなさんしばしGさんの口笛の音に癒されるとしましょうか。…あれ、やめちゃうんですか。残念だなあ。」

メ「じゃあ、筆者の言いたいことってどうやったら分かるんだろう。」

題名と同じ言葉を見つける。キーワードや大切な言葉を探す。大切な言葉というのは繰り返し使われていたり、題名と関係したり結びついたりする。主張っぽい言葉を探す。文末表現が「〜である」とか「〜なのです」とか「と、私は考える」とか。

子供たちから出てきた意見を整理して板書していく。

メ「じゃあ、私ちょっと①と⑥の文を黒板に書こうと思うので、みなさんはその間自分で考えるもいいし、立ち歩いて友達と相談するのもいいですよ。」

ざわつき男子たちがサッと席を立ち始める。でも手にはちゃんと教科書持っている。女子も何人か別の人のところに行って相談。男子数名の集まりが、若干違うことの話をしているようにも見える。

メ「ちゃんと話をしている人もいれば、関係ない話をしている人もいますね。こういうとき、きちんと相談できるペアを見つけるっていうのも大事ですね。」

メ「相談してみて、なんとなく分かったかもという人。結構いますね。この中で、声を出してもいいよという人。自分の意見だけでなくて、相談した友達の意見でもいいんですよ。では、Hさん。」

この後、もとから候補に入っていなかったはずの④段落に主張する文末表現を発見したなどと、新たな意見が出てくる。
①と⑥には同じキーワードが使われているという発見も。
①で「Iくんは天才だ。」っていっていて、②〜⑤でどんなふうに天才か書いてあって、最後の⑥で「だからやっぱりIくんは天才だ。」って言ってるようなもんだよ、なんて例を出して説明する子も。

考え、話し合った上でも意見がまとまらない。授業時間が残りわずかになってきた。一体、どうやってまとめる?

メ「じゃあ、みんなの考えが今日はまとまらなさそうなので、次回また話してみることにしましょう。終わります。」

まとまらずに終わった!

◇◇◇


放課後。メガネ先生のところに話を聞きにいった。

どうでした?と聞かれ、テンポと緊張感がすごくて、最初出遅れていた人たちがどんどん追いつき、みんなが参加できるような声かけや活動が散りばめられていて、集中が続くような授業ですごかったです!と伝えた。

「私が一番意識していることは、勝手にこちらでめあてを決めないことと、勝手にまとめないことです。今日なんて本当は筆者の言いたいことなんてサラッと確認して、中の具体例を見ていく予定だったんですけどね。でも子供たちがそこでつまずいているんだから、そこが話し合うべきことってことですよね。」

「次の授業ではどう進めるんですか?」

「また別の視点を与えて、考えてもらいます。次は中のところに入れないとなあ。」

ガーーーン

なぜ私がガーンとなったかと言えば。
めあてを勝手に決めないとか、こちらで勝手にまとめないとか、そんなことはずっと言われてきたし、それをしてしまったら「やらされる学習」で、子供たちが主体的に取り組めない。それは分かっていたはずなのに…

今の私は、めあてもまとめも事前にがっちり決めて、ほぼほぼ台本を作っていたから。

もちろん、じゃあ今日はこれやるよーと提示するわけではないし、まとめだって勝手にこうだよねっていう出し方はしない。でも、うまく誘導して、あたかも子供たちが決めたように、自分の台本に着地させようとしてしまっている。

痛い。痛いところをひと突きされたような気分だ。
勝手に爪の垢をいただいて煎じて飲ませていただいても良いだろうか。



まあでもね。実は今、私はいくつかの授業をもっていて、担任という立場ではなくて、その時間勝負の仕事をしているから、ある程度ペースは守っていかなければならないという気持ちもある。(言い訳)

その上で、今回学んだことを意識していかねばならない!


翌日は、6年生の理科で「どうしたらびんの中のろうそくを燃やし続けることができるか」という実験をした。前回の授業で実験方法までは確認していたのだが、忘れたフリをした。「1週間経ったからちょっとどんな話になったかうろ覚えなんだけど、今日はどんな実験をするって言ってたんだっけ?」から始めることに。子供たち、こうだったでしょ?とばかりに実験方法を教えてくれた。

そして、実験後の結果確認。「下だけすきまを開けていたとき、線香のけむりはびんの中に入っていった」と子供たちが言った。いやあ、そうはならないでしょ…?と思い、どうしたもんかと頭の中がぐるぐる。

「一応、事前にみんながやるであろう実験を私も安全確認でやってみたんだけど…この中に、私がやったときの結果と違うものがある!」
「えー?どれ?あ、やっぱりこの下だけすきまのけむりじゃない?」
なんて、察しの良い子が言い始める。
「教科書ではどうなってるんですか?」
とか言い始める子も。
「教科書ではこうです!とか言っても、みんなの結果と違うなら納得いかないよね…。ちょっと私、今ここでやってみるわ。後ろの方の人も見えるところまでおいで。」
そう言って、みんなの前で私が実験。けむりは…吸い込まれず上に上がっていく。そこで、ビンのふたを開ける。けむりがすっとビンに吸い込まれ、子供たちからは「おお〜!」の声。みんなけむりは入らないで納得してくれたのだった。


子供たちの反応を大事にする…もう、このくらいのレベルでいいんだ、私の場合。

できる範囲で、意識して、変えていこう!


4000文字!長文〜!
長々とした記事をここまで読んでくださった方がどれだけいるだろう。どうもありがとうございました。



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