鉄道に興味がない人より鉄道への思い

 幼い頃から、私はまったく鉄道に興味関心がなかった。
 そんな私も、高校生になってからは登下校のため毎日電車に乗るようになった。
 はじめは駅や電車が新しい場所に見えてドキドキしたのだが、毎日乗っていると慣れてきて、いつもの光景になった。やはり、鉄道には興味が湧かなかった。

 しかし今年の一学期、学校の校外学習で鉄道博物館の見学に行くことが決定した。
 今までは鉄道に興味がなかったけど、たまには知らない世界に踏み込んでみるのも良いなと思い、当日をわくわくしながら待ちわびた。

 そして待ちに待った当日。行きはもちろん電車で、現地の鉄道博物館へ向かった。
 今回の校外学習は、班で館内を回りつつ、鉄道にまつわるクイズに答えて制限時間内にビンゴを埋める、という内容だった。
 班の人とは友達になったり、博物館テラスではすぐ外を走る電車を撮影したり、知っていそうで知らなかった豆知識になるほどとうなずいたり。例えば、雪がよく降る地域では新幹線の先端に雪掻きがついていて、邪魔な雪をどかしていると聞いたことがある。
 そして館内の中央では真っ黒い巨大な機関車が、大きな効果音と同時にぐるりと回転しだしたり。
 もちろん制限時間もあるので、あまりゆっくりとは回れなかったけど、いろいろ楽しい思い出がたくさんできた。

 それでもやっぱり、すぐ鉄道が大好きになったわけじゃなかった。だけど、鉄道博物館の見学はとても楽しかった。休みの日にまた行って、その時にゆっくり見てみるのもいいなと思った。

 それからもしばらく、毎日登下校で電車に乗っていたけれど、電車について考えることは全然なかった。当たり前のことだから以前に、そもそも電車とか鉄道とかに興味関心がないのだ。いや、鉄道博物館に行ってからは、ごくほんの少しだけ興味を持つようになったけれど。嫌いでもないけど、好きでもないという感じだった。

 今日も息を吸うように、無意識に電車に乗った。一番端の列車で、満員電車というほどではなかったが、座席が全部埋まっていた。電車で通勤通学する人の中には、私みたいに鉄道にまったく興味のない人もいれば、もしかしたら電車が嫌いな人もいるのだろう。
 満席で仕方なく、壁のすぐそばに立つことにした。するとふと、壁に貼ってあった広告が目に入った。ぐるりと回転するあの機関車の写真……鉄道博物館の広告だ。

 鉄道愛好家たちは、一体鉄道のどこに惹かれたのか。鉄道の魅力は何なのか。別に嫌いというわけではないが、鉄道に関心のない私にはまったく理解ができない。

 でも、鉄道に関心がない、電車が嫌いでも、電車は毎日走っている。社会のために。朝、会社や学校へ働くみんなを送るために。
 そして毎日がんばって働いている。通勤通学するみんなと同じように。みんなが土日祝日で休みでも、電車は休むことなく働いている。遊園地やショッピングモールへ休みのみんなを送るために。

 どんなに興味がない、意識しない、知らないものでも、時には私たちを助けてくれたり、あるいは毎日のように支えてくれたりしている。
 それで、頑張っている人を応援しようとか、助けてもらったら感謝しなさいとか、よく言うよね。
 応援や感謝には、必ずしも知識が要るとは限らない。必要なのは、心をこめることだと思う。

 帰りの電車で、窓の外に広がる街を眺める。ビルやマンションが立ち並び、今日も人びとが働いて活動している。
 窓の外の景色を静かに眺めながら、社会に、電車に、思いをはせる。
 その間も、電車は動いていた。

おわり

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