困っている人の正体

 困っている人を助け、声をかけた。

「どうした、何でも話聞くよ?」
「そうか。本当に何でも聞くんだな? たとえどんな難題も、理不尽なわがままも?」
「いくらでも聞くよ! 困ってる人を放っておけるもんか!」
「それでは、覚悟して聞け!」
「何でも来い!」
「私、実は……」
「実は……?」
「……校長です」
「は?」
「これから丸一日、話をしたいと思います」
「えっ!」

 それから丸一日、昼も夜も、校長の長い話を延々と聞かされた。
 助けてくれたことへのお礼を述べたのは、翌朝のことだった。

「昨日は助けてくれてありがとうございます。それと、つい夢中で話しすぎて大事な時間をいただいてしまって申し訳ありません。お礼とお詫びに、あなたの大事な時間を返してあげましょう」

 次の瞬間、目が覚めた。
 いけない、今日は朝礼で大事な話があるんだった。校長先生の、長い話。

おわり

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