オープニングの裏側

 平和な朝。今日も街の人びとは、いつも通り会社や学校に出かけていた。空は青くきれいで、太陽も月も、鳥もビルも、いつも通りだった。ところが突然、街に異変が起こった。

 空に浮かぶ太陽と月に手足が生え、目と口ができた。太陽と月は元気にしゃべり、街の人びとにあいさつをした。太陽と月だけではない。空を飛ぶ鳥たちも人の言葉をしゃべり、街の人びとにあいさつをした。あいさつをしているというよりは、何か歌を歌っているようだった。

 街の人びとが大騒ぎしていると、今度はたくさんのビルが意思を持ったかのようにぐにゃりと曲がりだした。ビルの外ではまた人びとが大騒ぎしたが、ビルの中にいた人はもっと大変だった。

 大騒ぎの中、突然どこからか音楽が聴こえてきた。空の向こうから聴こえてくる、雰囲気は明るいけどふしぎな音楽だ。すると、太陽と月が、聴こえてくる音楽に合わせて踊りだした。鳥が音楽に合わせて歌い、ビルや他の建物、木や雲も楽しそうに踊った。

 状況が飲み込めず呆然と立ち尽くす人びとの前に、空からふしぎな乗り物が降りてきた。乗り物からは一人の男が出てきた。男は並行世界の住人を名乗り、今起きた一連の出来事について人びとに説明をした。

「ただいま、オープニングの儀式を執り行っている最中である」

 やはり状況を理解できず混乱する人びとだったが、男は落ち着いた様子で続ける。

「儀式が終わり次第、世界中でいたずら大作戦を開始する」

 この言葉を聞いた人びとは顔を真っ青にして慌てふためき、ますます大混乱が広がった。

 同じ頃、並行世界の子供たちは、それぞれの家庭で大好きなアニメのオープニングを見ていた。朝の青空をバックに太陽と月、鳥とビルが踊る映像が流れたあと、空から乗り物が降りてくる。ここで主人公が登場し、本編が始まった。

 そのアニメは、並行世界から地球へやってきた主人公の男が、地球の各地でいたずらをして人びとを困らせる、という内容の冒険アニメだった。

おわり

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