あの日の老人

 小学校の時は良かった。

 中学校の時は良かった。

 高校の時は良かった。

 学生の時は良かった。

「お前さぁ。いちいち昔と比べてねぇで、もっと今を楽しめよ。お前が昔の事を考えている時も、変わらず時間は過ぎてゆくんだよ」

 振り向くとそこには、謎めいた老人が立っていた。老人はまるで自分事のように、僕に向かって告げた。

「私もそろそろ消える時が近づいている。お前もいつか必ず消える時が来る。さようなら」

 気がつけば、老人の姿はなくなっていた。

 あの日、僕と老人は約束を交わした。

 あの日以来、僕は今という時間を楽しく生きている。仕事の合間に、勉強をしたり本を読んだりするようになった。

 未来という新しい世界へ自然と向かいつつ、あの日出会った謎の老人の正体を解明するために。

おわり

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