旅立ちは夜明け前
旅立つならば、夜明け前。
まだ日が昇らず、かわりに街灯が町を照らしている。
そんな薄暗い町の中を、私はひっそり出発する。
道ゆく人は私だけ。
きっとまだみな寝ているか、早い人は今ごろ目覚めて、朝の支度に取り掛かる。
ふだんなら、私だってまだ布団の中だ。
静かな家々の間を、私はまっすぐ駅に向かって歩いていく。
ちょっとさむいなぁ!
いたずらな気持ちが声帯をくすぐって、昼間なら出さないような、少し大きな声で独りごつ。
だけど誰も聞いていない。
だから、いい。
たしかに家の中には人がいるのだろうが、
いま、ここには私だけ。
私一人しかいない。
そして、誰もそれを知らない。
それが、いい。
いつもならしないようなことを、心が躍ってそうさせる。
これから私が旅立つことなど、誰も知らない。
夜明け前の旅立ちは、少しだけ尊さも含んでいる。
いつもの見慣れた町から、
見知らぬ町に誘うちょっとした儀式。
空が白んで太陽が顔を出せば、その先には胸高鳴る世界がまっている。
いつもと違う空。音。景色。
人々の息遣いに、町の匂い。
きっと夜明けには、いつもと違う世界がまっている。
それを目指して、私はひっそり歩く。
薄暗い中の出発は、期待と高揚を伴って、
少しだけ私を物語の主人公にしてくれる。
夜明け前の旅立ちは、別世界への第一章。
これは、楽しみな行事への朝早く出発するときの私の気持ちです。
毎回朝早く出るわけではないですが、今まで体験したときのことを思い出してみると、こんな気持ちでした。
わくわくするから、早く出発したくなる。
普段、夜明け前に家を出ることはないので、だからそれすらも特別で、私にとっては朝早くの出発もイベントの一つです。
さて、今日は旅に出ます。
もう日は昇り始めていますが、それでも普段より早く家を出るのは心がはずむイベントです。
いざ、西へ。