ほろ酔い


何もかも忘れて酔いたい。

仕事で朝帰りしてきた夫に、朝から不満をぶつけてしまうくらいには色んなことが切羽詰っていた。
気を抜いたら涙がこぼれてしまいそうな朝だった。

でも、仕事へ向かう車の中では、もう反省しか思い浮かばなくて、早く帰って謝りたいと思っていた。本当に夫に悪い事をしてしまった。


結局、その日は息子の発熱で早退。
本当は帰りにスーパーに寄ってお酒を買って帰るつもりだったけれど、38度の息子を連れ回す訳にも行かずそのまま帰ってきた。

夕方まで寝ていた夫が買い物に行くというので、一通りの買い物リストを伝えたあとで、「お酒買ってきて。」と、付け加えた。



特に指定していないのに、私の好きなジントニックとハイボールを買ってきてくれた。

付き合って夫も飲んでくれるかと思ったけど、私も夫も飲み会の時くらいしか飲酒しないので、例のごとく夫は飲まない様子だった。


約1年半ぶりの飲酒。

1月に完ミに切り替えたから、飲もうと思えばいつでも飲めたのだけれど、ずっと息子の夜泣きが落ち着いたら……と思いながら、一向に落ち着く気配のない夜泣きに、「もう、別に多少起きれなくてもいいや。」と、半ば投げやりに飲み始めたのだった。

ほろ酔いになった私は、夫のパーカーの袖を引っ張ってベッドへ連れ込む。

ギュッと抱きつくと、抱きしめてくれた。

「……ごめんね。朝。本当に悪いことをしたと思ってる。」
『……ううん、いいよ。』


言葉はなかったけれど、ほろ酔いで感情が剥き出しになった私の涙は止められなかった。


新しい職場で夜勤ばかり当てられて、変な上司と変なお局に翻弄されながらも、家で私に当たることもない夫。
家事や子育てに協力出来るようなメンタルではないことも、夫の立場になれば分からなくもないのだ。

私もしんどい。
ただ、それを少しばかり言い過ぎた。自分の気持ちばかり押し付けて、夫の状況を慮ることが出来ていなかった。

「〇〇(夫)も、しんどいよね。」
『……うん。』
本当は夫も泣きたかったのだと思う。
たぶん、そのくらい今しんどい思いをしている。


しんどい今を、お互いがんばろうと話しているうちに、息子の夜泣きが始まり、私は対応に向かうためお開きになった。

それからは、「これだけでもいいから、やっておいてくれたらいいのに。」と、思うことはたくさんあるけれど、それが出来ない状況なのだろうと思うようにしている。

今日は保育園でお昼寝しすぎた息子が夕寝出来ず、手が付けられないほど不機嫌で夕食も食べないまま、引きつけを起こしそうなほどギャン泣きしながらお風呂にいれて就寝までもってきた。

夕方から出勤の夫は、弁当にお米を詰めでもっていったのに炊飯器すら洗ってくれていなかったけれど、お昼ご飯も食べないで出掛けたようなので、きっと余裕が無いのだろう。


挫けそうな毎日をギリギリのところで保っている。

今がきっと、私も夫も踏ん張り時だ。

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