感情は雲のようなもの



感情をジャッジすることはナンセンスなことと捉えている。

実際のところ、感情に善悪はないのである。
このようなことは多くの形而上学者、心理学者、哲学者も提唱している。
ここではその例をあげるのは省き、話を先に進めよう。


感情は湧き上がるものであり、自然発生する雲のごとし、そこに是非はないのである。

雲は悪きものだろうか。

見る者によっては、暗雲として立ち込めるその様子は不安そのもので、決して好ましくは映らないだろう。
干ばつの地帯の者たちにとってその雲は、待ちに待った、歓喜の雨を恵むものである。

だが雲自体の発生機序は誰もが知っての通り、どちらにも違いはなく、無論善悪もない。

人間の感情も然りである。

一般に、例えば近年盛んな概念としてアンガーコントロールなどで知られる通り、
「怒り」はよろしくない感情として知られる。
確かに、怒りから派生する事(人間関係の歪みであるとか)は、好ましくない結果を生むことが多いかもしれない。
だが前述した通り、感情に善悪はないのである。自然な流れを堰き止めることは、表面的な歪みを回避できたとしても、どこかしらで歪みは起こるのである。

例えば、東洋医学の考えの一部では、「怒り」を溜め込むと肝臓や腰周りに不具合が出るという意見がある。
西洋医学がメインとなった現代ではしっくりと来にくいかもしれないが、「怒り」という感情に一時的に蓋をし続けることで健康(こと、メンタルヘルス)に『歪み』が起きてくる可能性は、完全否定出来なそうなのである。

恋愛に関して相談を受ける時に、
よく言うことがある。

「お別れした恋人を忘れることができない」

「忘れる必要はないと思います」

わかりやすい例かと思いあげたが、「忘れよう」とすればするほど忘れられないのである。
本来、「忘れる」というのは人間に、当たり前に搭載されている機能なのだ。
忘れようとするのは、「忘れられない」(あるいは「忘れたくない」)という自らの感情を否定(ジャッジ)していることそのものであり、より高い視点(長い目)で見れば、「忘れる」到達点へ向かうにあたり、遠回りをしていることになってしまう。

マインドフルネス、瞑想もこの10年位のうちに随分メジャーなセルフケアの仲間入りを果たしているが、起源となっている瞑想の基本は、『自らの感情をフラットに見つめかえし、その感情の存在を認める』ことなのだ。

同僚や友人に嫉妬してしまった場面があったとしよう。通常わたしたちは道徳的観念により、『このような事は思ってはいけない』と自制するだろう。だが、感情は雲なのである。
煙に例えてもいい。
火を焚いたとしよう。煙を解放せずに閉じ込めたらどうなるだろうか。

解放すること。
それが一見、どんなにおどろしいような黒い感情や負の感情であっても、発生したのならそれを『認めて』あげる。
大切なことである。

日本ではあまり普及を果たしていない文化であるが、優れた臨床心理士やカウンセラーがまず行うことは、感情の整理と確認作業である。
まるで地縛霊(そんなのいるの?って感じだけれど笑)のように、感情も、認めて解放してあげれば『成仏』するのである。


催眠療法というものもある。
過去のトラウマを再体験することによって、その時に感じた負の感情を抱え込んでいた状態を解放することによって、現状を是正、修正できると考えられている。
なぜそのようなロジックが成立するのかは明確には解明されていない。にも拘らずこの療法が推奨されているケースが現在する、このあたりは実に科学的な点であるが、この療法によって著しく状態が改善される患者が多いという「成果」によって認められた療法である。

もし、この文章に触れてくださった方が今、何かにつまづいていると感じていることがあったならば、騙されたと思って一度以下の事を試してみてほしい。

ほんの数分でも効果はあるが、15〜20分の間、ご自身の楽な姿勢でゆっくりと呼吸をする。こう書くと、真面目な方ほど「ゆっくりと」に集中してしまい身体に力が入ってしまうので注意してほしい。
ゆっくりと、ご自身が安心できるテンポで呼吸を続けていると、血液が酸素を身体中に運び巡らす感覚を感じられる。
現在気にかかっている事、その事にまつわる感情もまた同時に頭を巡るだろう。
それをそのまま、呼吸と同じように静観してみてほしい。
職場で苦手な上司の顔が浮かぶ時、体のどこかに力が入るだろう。それを確認し、そのこわばった部分をほぐすようにイメージしながら細くゆっくりと息を吐く。その時間に、あなたが『本来であれば手放したいのに』手放せずにいる不要な感情を解放できる。


感情は雲なのだ。
それらは(その感情が善きにつけ悪きにつけどちらにせよ)いずれ霧散し、その後には晴れ晴れとした澄み切った空が広がるのだ。


感情に善悪や是非はない。




2023.05.08  完

※この記事は認定カウンセラーの書いた記事であり、医療資格を有する者の記事ではありません。あらかじめご了承の上、ご参考になさってみてください。

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