2021/1/2 晴れ
同居人の10ヶ月赤子の泣き声で目を覚ます。が、わたしは爆睡。妻がリビングに連れて行ってくれる。ありがとう。朧げな意識の耳にガッキーの声がうすらぼんやりと届く。妻が逃げ恥の再放送を観ている。朝の6時から再放送なんて誰が見るのか、と思っていたらそれが配偶者だった。今晩のスペシャルでは平匡とみくりの間に子供が産まれるらしい。思えば逃げ恥リアルタイムの頃は東京にもいなければ、結婚も子供も自分とは関係がない事柄のように感じていた。最終回。システムからはみ出す=鳥小屋の外=青空市でのハグシーン。登場人物の呪いからの解放も重ねられている。百合ちゃんのオレンジのダッフルコート。小沢健二の幻影。ドアをノックするのは誰だ。
昼前に起きてお節の残りを食べる。昨日のアルコールが少しまだ残っている気がする。ゆったりと流れる時間に積ん読の山に手を伸ばす。まずはカンパニー社から発刊された『日本フリージャス・レコード図説』。菊池雅章、冨樫雅彦、佐藤充彦、高柳昌行、etc…昨年はじめて触れた彼らの素晴らしい演奏の数々。ジャズに対する苦手意識やコンプレックスはまだ残る(例えば、僕は優れたジャズというものを頭でなく耳で理解できているのか?とか)けれど、聴取の楽しみ方はちょっと分かってきたみたい。そのきっかけも同じくカンパニー社から発刊された『フリー・インプロヴィゼーション聴取の手引き』だった。こちらは図説≠ディスクガイドであり、扱われているレコードのコメントは最低限であり、その代わりに発売年月日とクレジットは充実している。「クレジットを隅々まで読み込めば他のレコードとの関係を把握できる。そうすれば必然的にある程度の音楽的内容は想像できる」という信念が貫かれている。ハードコア。リストの中には小杉武久の超レア盤(吉村弘も参加)なんかも含まれており、いくつかは(多くは?)ネット上でも音源が見当たらない。『なめらかな世界と、その敵』の著者である伴名練が編んだ『日本SFの臨界点[怪奇篇]』も半分ほど読んだ。こちらもある意味で『日本フリージャス・レコード図説』と同じくガイド的な役割も果たしてくれるが、各話の前に設けられた伴名氏による作品紹介は反対に個人的思い入れに満ちており読み応えがある。「すこし・ふしぎ」などSFの定義は数あれど、「馬鹿話である」という定義は僕には新しく感じられた。怪文書ものやボーイ・ミーツ・ガールものしか碌に読んでこなかったからです。なるほど、まるで落語な田中哲也「大阪ヌル計画」やゲラゲラ笑いながら読んだ津原泰水「ちまみれ家族」など実に馬鹿馬鹿しい。光波耀子「黄金珊瑚」は特に素晴らしかった。ネット上にもこの作家のまとまった情報は乏しく、作家紹介文込みで暫定ベスト。ベランダに出る。冬の晴れた日に吸う煙草がいちばん美味しいと思いませんか。とても静かな昼間。KOOL MILDのグリーンが映える空気感だ。うまいなあ。ニコチンが抜けてから娘とベッドに向かう。寝ミリに落ちる瞬間の彼女を動画に収めて満足する。新年最初に聞いたのはAvalanches 『We Will Always Love You』でした。耳に全く痛くない優しい音で乳児の睡眠も邪魔しない。前2作に比べたら冗長だし所謂傑作ではないと思うが、コズミックかつアットホームでとても愛おしい。レコードも買ってしまった。明日娘と聞こうと思う。
お節も残りわずかになり、夜ご飯はラーメンにする。キャベツともやしを塩胡椒で炒め、野菜たっぷり出前一丁いっちょあがり。激烈にうまい。出前一丁の麺が一番好きだ。ごまラー油の瓶詰めを発売してくれたら絶対に買う。そんなこんなで逃げ恥新春SPが始まる。真剣に見るために娘を少し早めにベビーベッドに連行する。感想は一連のツイートに纏めた通り。震災後もそうだったけれど、巨大な災害についてマス相手に描こうとすれば雑になるのは致し方ないし、逃げ恥が背負うものも以前より重かっただろう。お疲れ様でした。ところで、あの新生児はどこから借りてきたんだろう。我が家も亜河ちゃんと数日違いの出産であり、4月には義実家に母娘共に避難したこともあり、後半のコロナパートは自分たちに重ね合わせない方が困難なぐらいだった。妻は全く違う重ね合わせ方をしたのか、娘の成長にセンチメンタルになり、誇張ではなく滝のように涙を流していた。松本人志の母が燃え尽き症候群になって人形を購入した話を教えてあげる。「めっちゃ気持ちわかる」と泣きながらベッドで向かっており、実にチャーミングである。時計はもう12時を回っている。サウナ始めをまだ済ませてないではないか。ダウンを着込んでホームサウナに急ぐ。貸し切りだと思ったけれど、そうでもなかった。お節の塩分とアルコールでむくんだ身体から余計な水分を取り除く。3セットでしっかり整う。帰りに温かいお茶を買って、煙草を吸う。道路の真ん中に立つ。両端まで遠く見渡せる。身体の芯はポカポカに熱く、表面に冷気を纏っている。家に帰ると妻は泣き疲れて眠っている。次の日、妻は風邪をひく。人間泣きすぎると免疫力が下がることを僕は初めて知った。
今日の1曲/The Avalanches「The Devine Chord」
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