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仕事をしていて改めて重要だなと思う、「期待値コントロール」。

顧客は満足を買っている

クライアント先(大手通信企業)に出向してがっつり働いていた20代。毎月の実績を見える化して報告し、一緒に課題に向き合って数年、というプロジェクトを複数進めていました。クライアント先でずっと一緒にいて、時々、その後自社に戻って、社内で方向性を確認したりしていました。

当時ベルシステム24でよく言われていたのは

「期待値どおりのことをしても人は感謝してくれない。期待値を上回るパフォーマンスで初めて人は感謝する」

事前の期待を満たすだけでなく、クライアントが潜在的に持っている真のニーズを満たしてあげることで、はじめて顧客満足を得られるのだと。それは大きなレベルのプレゼンや提案だけでなく、電話やメールの応対レベルでも常に求められます。リピーターとして長く契約いただくために、常にその期待値を上回ることを求められるというわけです。ドラッガーの名言「顧客は満足を買っている」ですね。

期待値の設定に問題がある場合は?

相手の期待値が低いというのはあまりなくて、大抵の場合「期待値が思ったより高い」ことが課題になります。相手の期待値が高いと、それを達成するために努力し続けることになるわけです。それが報酬に対して正当な期待値なのか、もしくはそもそも能力や状況に合った期待値なのか、をよく考える必要があります。

引き受けた限りは仕事はやり遂げなければ信頼を失うことになってしまいますが、その実現のためにオーバーワークを続けるとなれば、かなり問題です。

クライアントからすると
お金払ってるんだから、ここまでやってよ
受注側からすると
いやいや、そんな無理めなリクエストならこんな安価では無理

・・・・あるあるです。

仕事を始める前のステップ

そういう意味で、契約を始める前に業務内容を文章化する、というのは個人事業主や小さい会社では非常に大切ですし、最低限やるべきことです。

何をどこまでやるかの相互理解のもとに、その上で何を期待されているのかを最初にしっかり理解すること。一定規模の企業との契約の場合、その辺りはあまり問題ないのですが、クライアントが小さい法人の場合、その確認を怠るとさらに痛い目にあいます。

✔️仕事だと思って提案書を出したら、まだ仕事始まってなかった(タダ働き
✔️相当なプロセスを経ての結果を求められているのにプロセスのコストが全く想定されていない(プロならできるでしょ?
✔️どこまでが営業の相談でどこから仕事始まってる?どこで仕事終わる?(終わってるのかと思ったら、追加費用なく依頼が来て困惑)

また仕事を外注する場合もその点は留意する必要があります。よくあるWebデザイナーやグラフィックデザイナーが「何度となく修正を求められる」なんていうのは、
✔️何回までの修正であること、それ以上は別途協議
あたりは絶対に定義しておくべきです。

その見積を見て、プロセスを理解せずに「価格が高過ぎる」というクライアントなら、価値に見合ったコストを投入できないという時点で残念ながら仕事を始める前にさよならした方がいいです。持続可能な関係にはなりませんから。

広報PRの場合の期待値コントロール

PRをお願いしたのだから「メディアに取り上げられるはず」という期待値の場合、その困難さをしっかりと理解いただいた方がいいでしょう。

大手企業には担当の記者さんがいて、各社の担当記者さんに毎度リリースを出したり、色々工夫をしてみても、必ずしもメディアに取り上げられるばかりでもありません。他に大きなネタがあれば、一発で吹っ飛びます。

中小企業の場合、そもそもの認知が低いのですから、その難易度はさらに高まります。同じことをやっても、大企業なら注目されることも中小企業だと埋もれがち。そこを工夫するのも広報ですが、広報の手法云々の前にコンテンツの出し方(時期、そのニュースの鮮度)も重要です。

テレビ業界の方の対談では広報についてこのようにまとめられています。

・番組採用打率は100回に1回程度
・状況を見てここぞ、というネタは丁寧に
・番組採用にはニュースバリューとファクトが最重要

広報は正直100本打って1本当たるかどうかの、膨大な量の積み重ねをしているわけです。だから、30本目くらいで「まだ結果が出ない」というのは「期待値コントロール」に問題があります。もしくはそのレベルで結果を求めるなら、正直、大手PR会社にかなりの額を積むほうがいいでしょう。(その場合びっくりするほどお高いですけど笑)

「こんないいことしてる(いいサービス)のだから、取り上げられて当然」
「集客に結びつかないのは広報の問題」

バリューとファクトがわかりにくい(やっている本人たちにはわかる価値もそれを伝える文章と映像がないと伝わらない)のを、いかにわかりやすくするかの翻訳作業も意外とネックです。クライアントによっては、翻訳そのものを嫌がる(自分たちをそのまま知ってほしい気持ちが強過ぎる)ので、受け手が「なぜその情報を欲しいと思うか」に思いが至りません。

「伝えたいんだ」とメディアに言っても、それは片想いに終わります。メディアが欲しがる情報なのか、その先のユーザーにメリットがある情報か、自分たちの都合良く取り上げてもらうというわけにもいきません。それは広報ではなく「広告」です。

ちなみに料金相場はこんな感じ・・・

プレスリリース配信 15〜25万円
メディアプロモート費 15万円〜(別途成果報酬)
戦略立案コンサル費 月額10万円〜

メディアに取り上げられることを「期待値」にすること

PRとはまさにリレーションシップなので、忙しい記者たちがすぐに返信をくれなくても、色々な形でアプローチを続けています。

よく記者の方からはこう言われます。

「1日に1000通とか信じられない量の情報がくるから返信はできないけど、読んでいる。1回、2回掲載されなくても諦めず送り続けてほしい。あ、いつもあの人から情報きてるなと覚えてくると、何か企画が空いた時に、あの人に聞いてみようと思うから。」

だから大手企業は広報部署を設置して、その継続的な対応にコストをかけているわけです。

先日も別のPRの方が、半年前からリリースを打ち、いくつかのメディアと企画を温めていたら、たまたま半年前のリリースを見たメディアが記事にしてしまって、半年間企画を温め続けたメディアのテンションが下がったケースが紹介されて、本当のPRの難しさに共感したところです。

短期で結果が出ない、だからすぐに別の策を考える、そうやって広報担当がとっかえひっかえの会社の場合、ずっとリレーションが確立されません。毎回ゼロベースでリレーションを作ることになるので、得られる効果も限定的です。すごく小さい会社でも「名物広報パーソン」がいる会社、いくつか知っています。そこはやっぱり最低5年スパンですね。うらやましい。






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