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役所のダイバーシティは採用からでは?

こんにちは。ひとりPR会社を起業した植田聡子です。

都知事が当時「3つのシティ」という政策を掲げた時、都庁内でもツッコミ入りました。Diversityって、シティ(city)じゃないですから(笑)カタカナなら同じなんでしょうけど。

ダイバーシティは「di:バラバラの、離れた」「verse:向きを変える」という
ラテン語が語源。

余談ですが、航空会社の若かりし頃「ひー、千歳行きの最終便が着陸できずにダイバートだって(涙)」のような懐かしい光景を思い出します。

都庁組織のダイバーシティ

私は都庁がダイバーシティを政策に掲げた時、スペル問題はさておき、「自分の組織ができてないことを人に求めるのか」という、ざらっとした違和感はありました。新卒一括採用で40年近く働く、柔軟性に欠ける硬直した組織だという認識でした。

新卒の試験科目から言っても、採用区分(事務、技術など)の数で言ったら圧倒的に法学部もしくはその方面に強い人材が過半。ここでもう少しダイバーシティに配慮して、色々なスキルの人材を確保しておかないと、なかなかクローズドなダイバーシティにしかならない気がします。

実際、都庁の人事委員会で働いた経験はないので、最終的な内定者のセレクトにどんな詳細な戦略があるのかはさておき、20年以上働いた肌感(個人のイメージ)が以下のような図になります。今後の姿はあくまで個人的希望です。

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<従来の採用>
✔️まず法律の理解が何より重要
✔️その上で、会計やその他の思考がプラスオンされていく
→結果として、法学部などの文系思考の職員比率が圧倒的に高くなる

<今後の採用>
✔️採用段階の専攻などから既にダイバーシティを意識して、ITや会計など法律ベースでない人材を意識して一定数採用
✔️法律の知識については後からプラスオン

法律ベース思考はリスクの防衛能力が高い

IT人材など特定の知識、スキルを持った人材は専門人材の採用という形で中途採用をしています。即戦力ではありますが、圧倒的少数ですし、プロパーの抵抗圧力が高いのは容易に想像がつきます。

長年「法律をベースにした判断」に慣れた人材ばかりがいる組織において、DX、トランスフォーメンション(=変革)を図る労力といったら、並大抵ではありません。
また法律ベースの人材はリスクマネジメントに長けているのですが、いかにリスクを生じさせないか、という防衛思考が優位に立ち、柔軟な発想の妨げにもなっています。そこもまたダイバーシティから離れた「融通が効かない」「お堅い」というあるある形容詞を使われがちです。

事務、っていう概念がもう違う気がします。もちろん事務能力というのは当然あって然るべき能力なのですが、そのようなスキルは後付けでも良いと思います。

役人に求められるスキルはいまなお作文能力なのか

役人といえば、「作文」能力だよね

議会の答弁作成などで、本当によく聞く言葉でした。一定のお作法による作文能力によって、他ではあまり使い所のないスキルばかりがどんどん長けていきます。

一方、専門的な知識やスキルは自己啓発頼みです。アートにしろ、福祉にしろ、ITにしろ。

自分が都庁のウェブサイトの担当になった時、外部委託の仕様書を書くのに本当に大変でした。民間企業でインターネットプロバイダーのカスタマーサポートの部署にもいて、一定の知識はあったにもかかわらず、それを役所のお作法に合わせて書くのは一苦労。かつ入札となれば、仕様書の隙をついて、質が下がっていきがちです。そうならないようにひたすら書き直す、という冬でした。

世の中のテクノロジーがどんどん進んでいるのに、予算に縛られ、入札金額によって、どんどん劣化するなんて本末転倒なのですが、法律重視の人々の中では「単年度会計ですから」「昨年度入札金額以上の予算執行は認められません」というそこからの戦いになってしまいます。

日進月歩のIT世界なのに、組織として、そのようなスキルは特段求められておらず、どんどん外注していきます。内容もわからず外注する姿勢ということには疑問が残ります。今後、デジタル庁設立に伴い、都庁にも近しい組織ができていますが、ITゼネコンのカモになるのではないかという疑念も囁かれています。

(最近、都庁は中途採用で採用が進み、すごく良いことだと思っていますが、本来ならそれは新卒採用で行ってほしい・・・)

現在の感染症対策についても、しかり。何か事が起こった時に、専門人材による委員会を開催してご意見を求めるより、元々ダイバーシティを意識した採用をしていれば、平時においてのリスクヘッジを専門的視点でどのように行うかを準備しておくこともできます。

自治体も国も議会や国会対策が最重要の任務となっており、「作文能力」に長けた人材が出世していく、という世界ですが、もうそういう時代ではないと思います。作文だけが得意ではなく、もっと別のスキルを持っている人材を一定数おいて、多様な視点で議論し、政策を立案してこそのダイバーシティではないかと思っています。

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