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コント「事故物件の作り方」


コントというか戯曲っぽくなりましたね…


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客:(ドアを開ける)

店員:(立ち上がって)いらっしゃいませ

客:(会釈する)

店員:こちらへどうぞ

客:(椅子に座る)

店員:本日はどういったご用件で?

客:家を…

店員:はい?

客:家を探してて…

店員:あっ、物件探しのお客様ですね

客:はい、そうです…そうなんですけど、これなんです(両手を身体の前に垂らす)

店員:(ハッとする)えっ、幽霊……?

客:はい……

店員:(しばらく固まって)……お待ちしておりました! どうぞこちらへ!(奥の特別な部屋へ案内する)

客:失礼します……

店員:もう! 最初から言ってくれればよかったじゃないですか!

客:慣れてないもんで……死んでから少ししか経ってなくて

店員:みなさんそうおっしゃいます! あ、何か飲まれます?

客:いえ、どうせビチャビチャになっちゃうんで

店員:あっ(笑)

客:(笑)

店員:失礼しました。どんな部屋をお探しですか?

客:死ぬ前に住んでた家が忘れられなくて、それに似たところがいいかなと

店員:あーよくいらっしゃいますよ、そういうお客様

客:やっぱり多いですか?

店員:はい。どうせ死んだのなら思い切って別のところに住んだほうがいいと思いますけどね。引っ越ししなくて済むんだから逆にラッキーですよ

客:よくそんなこと言えますね。こっちは引っ越ししたいから死んだわけじゃないんですが

店員:ごめんなさい。どんな家に住んでらっしゃったんですか?

客:自分で言うのもなんですがデザイナーズマンションっていうんですか、ちょっとおしゃれなところで

店員:すごいですね!

客:まぁ

店員:だから今日も決まってるんですか

客:決まってる?

店員:ええ、おしゃれなシースルーですよね

客:お化けだからですね透けてるのは!

店員:あぁすいません

客:わかってたでしょ

店員:いや質のいいレース生地だなと

客:まだ言います?

店員:すいません

客:こうやってあーだこーだ言われるのが嫌で言いたくないんですけど、一応美容師の仕事やってたので私生活もなるべくおしゃれにするように心がけてただけですよ

店員:そうだったんですね。床屋ではなく?

客:めちゃくちゃ失礼ですね

店員:すいません

客:……あの、いいですか、部屋探してもらっても

店員:あぁはいはいはい。ここ、どうですか? 間取りは1LDKでバストイレ別。駅チカの墓地チカです

客:墓地チカ? 墓地が近いんですか?

店員:はい、駅と墓地のちょうど真ん中です

客:嫌な直線で結ばれてますね

店員:まぁ電車は乗らないと思うんで駅チカは関係ないと思いますが、墓地は近くでいいですよね

客:そうですか?

店員:たまに果物とか置いてあるんで食べちゃっていいですよ

客:お供え物ですよそれ! 勝手に食べちゃダメですよ

店員:わかってますよ。ブラックジョークですよ

客:黒すぎですよ。ちなみに家賃はいくらですか?

店員:家賃は11万円ですね

客:あー結構しますね

店員:まぁ墓地チカなんでね

客:それじゃないですよ。普通墓地が近くにあったら安くなると思うんですけどね

店員:そりゃ安くなりますよ! あなたが住んでくれたら!

客:そりゃ事故物件扱いになるからでしょ!

店員:実際にここで死んでないんだから厳密には事故物件にはなりませんよ

客:そうはいっても幽霊が住んでるってなったら、住む人は少なくなるでしょうよ

店員:でも今は安くて良いところに住めるから事故物件は人気なんですよ。だからこうやって幽霊さんに協力してもらって家賃を下げてもらってるんじゃないですか。今、天国も地獄もいっぱいいっぱいなんでしょ?

客:まぁ、そうですけど

店員:じゃあいいじゃないですか! あっちの世界に空きが出るまでしばらくこの世でフラフラしててください

客:言い方ひどいな

店員:あぁそうだ、ここ、家賃はちょっとお高めですけど、でも敷金礼金ゼロですよ

客:まぁそれはいいですね

店員:あ、礼金って幽霊の霊じゃないですよ

客:わかってますよ

店員:ブラックジョークですって

客:さっきから失礼なんだよな

店員:まぁまぁまぁ怒らないで。じゃあここなんてどうですか? 5階建てのオートロック付きマンションの3階。窓は南向きで日当たり良好、バストイレ別、1DKの1OHDです。

客:な、なんですか? OHD?

店員:はい、おふだです

客:ダメです

店員:そうですか?

客:はい

店員:1枚だけなんですけどね

客:それでもダメなんですよ

店員:2枚ならレッドカードで強制退場ですね(笑)

客:なにが面白いんですか!

店員:すいません、バカにしちゃいました

客:怖いもの知らずですねあなた

店員:まぁ慣れてるんで。ん~他に家賃下げてもらいたいところは……

客:もう私の条件は考慮してくれないんですね

店員:してますしてます。えーと、1DKで家賃8万円、バストイレ別で東向き、4階建ての4階ですね

客:なんかよさそうですね

店員:これ僕の家ですね

客:あなたの家!?

店員:安くしてくださいよー!

客:知らないですよ!

店員:変なことが起きれば大家さんまけてくれると思うんだけどなー

客:めっちゃ自分のことに使うじゃないですか

店員:だってもうほんとお金がなくて。結婚資金とか親の介護代とか車の修理代とか最近なにかと入り用が増えちゃって

客:知らないですよ

店員:だからほんとに! 住んでください! 毎日の金縛りにも耐えますから!

客:やらないですよ!

店員:ほんとにほんとに! 家賃2万くらいが理想です

客:私どんだけ暴れなくちゃならないんですか!

店員:第二の俊雄くん狙いましょうよ

客:そこは貞子でしょ。そこはってのもおかしいですけど

店員:いいじゃないですか。お世話しますよ

客:結構です。節約すればいいじゃないですか

店員:無理ですよ。今まではなんとかなってましたけど、急な出費はマジでつらいです

客:こっちが相談受けてるみたいになっててめんどくさいんですが

店員:だってなんであんなとこで事故るかなー! おかげで修理代さまさまですよ

客:はぁ

店員:この前の日曜にキャンプへ出かけたんですよ。その帰りに車で山を下りてたら、急になにかにぶつかって。ドンッ!てめっちゃ響いてびっくりしました。帰ってそのあとバンパー見たら血がついてて、シカでもぶつかったんじゃないかって

客:……日曜日って何日前でしたっけ

店員:3日前です

客:私が死んだ日ですね

店員:……

客:私も山登りが趣味でね、休日は決まってハイキングに行くんです。ただその日は初めて登る山だったので帰るときにちょっと迷っちゃって

店員:……

客:後ろから車の走る音が聞こえてきたので振り向いたんです。そしたら目の前にヘッドライトの眩しい光があって

店員:……あの、

客:おかしいですよね。私の目の前にライトがあったのなら、運転していた人ならば振り返る前から気付けていたはずです。そこに人間がいたって

店員:……ま、まさか

客:……はい。嘘です

店員:だよねーーー!!!! あーーーびっくりしたーーーー!!! だってあれ絶対シカだったもーん!!!!!

客:すいません、咄嗟に思い付いちゃって(笑)

店員:ビビらせないでくださいよー!! 僕、怖い話苦手なんですよ!!!

客:自分のとこ事故物件にしようとしてたでしょ

店員:どこまでが嘘ですか!? ハイキングが趣味ってのは?

客:それは本当です

店員:この前の休日に行ったっていうのは……あ、そうか

客:はい、火曜日ですよ。美容師なんで

店員:(笑)

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