2019年邦楽ベストアルバム20枚(20→11)
自分が聞いた2019年リリースのアルバムの中で、良かったと思うものをランキング化しました。20位から11位まで。
ランキングといっても下位だからどうとか上位だから良いみたいなものは一切なく、とりあえず僕の趣向はこんな感じです宜しくお願いします的な意味合いもあるのでほんと軽~く見てもらえると助かります宜しくお願いします。
本記事が新しい音楽との出会いの一助となれば幸いです。
文中に書いてある他のアーティストには動画にリンク(下線がついてるやつ)が貼ってあります。
20. パスピエ「more humor」
結成10周年という節目の年を迎え、メンバーの脱退を経て作成されたフルとしてはおよそ2年半ぶりとなる5thアルバム。
今作は今までの作風とは趣が異なるにもかかわらず、個人的大名盤「演出家出演」の雰囲気を纏っているように思えます。"グラフィティー"や"BTB"などテンション高めのパスピエ流ポップネスとプログレ具合が絶妙に合わさった摩訶不思議感が聞けるのはいつも通りですが、"ONE"は初期に通じる哀愁とパスピエにとっては真新しい要素となるダウナーな世界観が耳に心地よく新鮮に聞けるのも聞きどころで、温故知新という言葉を思い出すほどパスピエの新機軸を打ち出すには十分すぎるほどの力を持ったアルバムでした。
Favorite song: BTB
19. sora tob sakana「World Fragment Tour」
2018年にメジャーデビューし、アニメ「ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうかⅡ」や「ハイスコアガール」シリーズのタイアップ、初の単独ライブツアーなど、破竹の勢いでメインストリームに突き進んでいるアイドルグループ、sora tob sakana(ソラトブサカナ)によるメジャー初アルバム。
インディーズ時代にリリースしたアルバム「sora tob sakana」では複雑に構築されたポストロックを平均年齢15歳程度の女の子たちが歌うという音楽性が、アイドル好き以外の音楽マニアの間でも話題となったことを覚えています。
基本的にバンドサウンドで奏でられる彼女らの楽曲は、以前のソリッドなポストロックと比べると普遍性が増して且つバラエティに富んだ内容となりました。それはメンバーたちの成長と不可分ではなく、思春期の爽やかさが全面にあった前作とは違い、大人になりつつある彼女たちの複雑な心中の思いを反映している内容だとも言えます。
2020年はグループとして6年目という中堅的な存在となるsora tob sakana。これからどんな活躍を見せてくれるのか楽しみです。
Favorite song: WALK
18. クマリデパート「ココデパ!」
ミスiD2016ファイナリストを中心に結成されたアイドルグループ、クマリデパートによるメンバー加入と脱退を経て、4年目にして初めてリリースされた1stアルバム。
コンセプトに「王道アイドル」を掲げている彼女たちの始めてのアルバムとなった本作は、開幕と中途、ラストにデパートアナウンスの小休止を挟みながら、まるで百貨店のフロアが一階ごとに違うコンセプトでレイアウトされているように構成されています。またそのコンセプトに則ったかのように幅広い楽曲が特徴的で、これまでクマリが歩んできた軌跡がそのままアルバムに表れたような内容となっています。
"あれ?ロマンチック" や "サマーニッポン夏サマー" にはこれでもかと電子音が打ち込まれエレクトロ要素がフィーチャーされているし、"あいろにー!" や "セカイケイ" などはWACK的なロックサウンドだし、かと思えば王道アイドルソングも忘れていない。そういった意味ではBiSHの1stアルバム「Brand-new idol SHiT」やベイビーレイズの1stアルバム「自虎紹介」に非常に近しいものを感じます。つまり集大成としての、そしてここから彼女らを知ることのできる挨拶代わりの一枚となっています。
Favorite song: セカイケイ
17. Suchmos「THE ANYMAL」
2016年に"STAY TUNE"が大ヒットし、一般的知名度を上げた神奈川出身のロックバンド、Suchmos(サチモス)の3rdアルバム。
一聴すればわかるとおり、ここに収録されている曲は1st「THE BAY」や2nd「THE KIDS」とは異なる音像を読み取ることができます。
以前のSuchmosはソウル、ファンク、ジャズ的なグルーヴを主体のリズムに置きながらも、表層では現代的なアプローチ(英語と日本語のフレーズを歌詞に頻繁に使っているのも意図的にそうしていると思っていて、そうすれば聞き心地がよく根底にあるハネるリズムもより映えるからです)を仕掛けており、新旧の融合性が高かった印象でした。
楽曲要素としてのリズムと言語的なリズム、そして従来のポップ性の再構築を図ったような近年のシティポップムーブメントが盛り上がっていた時勢にピタリと一致した結果が"STAY TUNE"の大ヒットに繋がったと考えているのですが、時代の寵児となったSuchmosはそのステージに留まることをせず、さらに自分たちのやりたい方向へ舵を切ったのではないでしょうか。
「THE ANYMAL」の内容がファンに称賛と戸惑いを持って迎えられるというのは一番彼らがわかっていることだし、そこに関しては何も言うことは無いと思います。ただ一つ言えることは、アルバムとしての説得力は今までよりも強く、彼らが表現者としての進化/深化をする過程としてこの変化は必然なのではないかという感慨を覚えずにはいられません。
Favorite song: Hit Me, Thunder
16. Dos Monos「Dos City」
日本人初のアメリカ、LAのレーベル「Deathbomb Arc」と契約し話題となった、荘子it、TAITAN MAN、没の3人によるヒップホップユニット、Dos Monos(ドスモノス)による1stアルバム。
彼らを初めて聞いたときに空恐ろしさを感じたのを覚えています。
攻撃的で人を食ったようなサブカル表現が満載なのに何故か心地良いリリック、それを空気に乗せ世界に発射するのに最適な声質や超絶的なラップスキル、金管楽器やピアノなどのストリングスを大胆不敵にリミックスしたサンプリング。
ヒップホップが一般にも十分認知された今こそ放たれるべき90年代のジャパニーズヒップホップの混沌とした黎明期を令和という新時代にアップデートするなら、という問いに対する正しい答えのような気がします。
意図的にズラされた不安感を煽るビートが心臓の奥底に響いてくるような、ひたすらダーティーに魅力を湛えた怪作だと思います。
Favorite song: Clean Ya Nerves
15. CYNHN「タブラチュア」
でんぱ組.incや虹のコンキスタドールが所属するディアステージに籍を置くボーカルグループ、CYNHN(スウィーニー)による1stアルバム。
名前を挙げた上記2組より本格的なボーカルグループという印象が強いCYNHN。アイドルとして聞くよりも単純にポップスとしてのクオリティが高く、歌モノとして人気が出てもよさそう。特に歌謡曲的なベタなメロディが絶妙なハーモニーで歌われているのでより幅広い世代にウケそうな印象。
群雄割拠のアイドル界でもド正統のビジュアルと楽曲なので、アイドルファンの中でもライト層やあまりアイドルを聞いていない人たちに向けてリトグリみたいな売れ方をしてほしいなぁ…と思ったり。
Favorite song: はりぼて
14. tipToe.「daydream」
2016年12月に結成された、「青春」をコンセプトに活動するtipToe.(ティップトウ)による2ndアルバム。
そのコンセプト通り、歌声の端々からほとばしるエネルギッシュな若さの残像が青春の面影を色濃く映し出しています。決して上手いと手放しで言える歌声ではないのですが、その不器用だけど一生懸命に歌う姿が脳裏に浮かび、多くの人々の琴線に触れることでしょう。
感情に直接訴えてくるエモエモな楽曲が並ぶのはもちろんのこと、特に "はやく夜が明けて、おはよう。が言いたい。" からの "blue moon." の流れは、一種の純文学作品を読んでいるような感覚になります。特に玲瓏なピアノの旋律から流れるようにドビュッシーの"月の光"をフィーチャーしたメロディに移行する様は、人生のうちで一瞬限りの輝きを放つ青春のすばらしさと儚さと表現しているようで胸が熱くなります。
Favorite song: blue moon.
13. パソコン音楽クラブ「Night Flow」
その名の通りパソコンで音楽を作る人たち、パソコン音楽クラブ。終わり。
……とは流石に乱暴すぎるのでちゃんと紹介すると、1990年代に流行した電子機器を使用した懐かしさ溢れる電子音サウンドを軸に現代的アプローチを繰り出すテクノポップユニットによる2ndアルバム。
夜~明け方の日が変わるまでの推移していく時間帯をトラックごとに表現し展開していく本作は、1曲目からラスト "hikari" に至るまで一時間ごとに進んでいく時間に浮かぶそれぞれの色――例えば闇に落ちていくにつれ人気の無くなるいつもの日常の光景だったり、もしかしたら世界に自分ただ一人だけしかいなくなってしまったかのような深夜帯だったり、雲間から覗く一条の朝日により闇が晴れて新たな一日が始まるときだったり――が絶妙に描かれていて、夜の散歩だったりふと物思いに耽りたいときに軽くBGMをかけるようなときだったりにマジでぴたりとハマります。
Favorite song: reiji no machi
12. あいみょん「瞬間的シックスセンス」
ティーンエイジャーの新たな代弁者となったあいみょんの2ndアルバム。
過去曲ではドがつくほどラディカルな詩表現を赤裸々に歌ってきた彼女ですが、それと比べると今作では大衆性とポップ性はそのままに彼女なりの優しさが全面に出ておりバランスが非常にいい。単純にポップスアルバムとして名盤だと思うし、売れるのも必然だという気がしてきます。
彼女を取り巻く環境がここ最近で大きく変化したことにもよりますが、芯の部分はブレずに表現されており、表面を見れば「丸くなった」だとか言われてしまうこともありますが、アルバム全体を聞けばちゃんと従来のあいみょん節とも言える表現者としてのあいみょんがしっかり見えてくるのもうまいなぁと思います。"ひかりもの"などのバラード曲も素晴らしい。メロディラインは往年の90年代ポップスのそれであり、"夢追いベンガル"はandymoriへのアンサーとなっているなど彼女のルーツが垣間見えます。
Favorite song: ひかりもの
11. サカナクション「834.194」
現代日本を代表するバンド、サカナクションによる7thアルバム。
前作「sakanaction」からおよそ6年ぶり(ベスト盤を除く)なので待ちくたびれたファンも多いと思います。タイトルの数字は東京と地元である札幌との距離、2枚のディスクそれぞれで東京、札幌とテーマが分かれています。
東京のディスクはアップテンポな曲が多く、一聴してわかる弾けるポップネスと歌謡曲×ダンスミュージックの融合、コーラスと山口氏の発する言葉の気持ちよさに自然と身体が動いてしまいます。
札幌のディスクはムーディで内省的な曲が多数あり、雄大な大地への愛と自分の為すべきことへの焦燥が感じられます。二つの様相を見ることができるアルバムに、僕は一瞬どちらが本当のサカナクションなのか?と疑問に思ってしまいましたが、単純に割り切れないのが表現というもので二元論で語られるべきことでもありません。そのどちらもがサカナクションであり、彼らの音楽にはどちらも決して無くてはならないものなのです。
東京で地元のことを想い、札幌で大都市への憧れを抱いたことを全18曲に封じ込めたこの作品は彼らの新たなマスターピースとなったのではないでようか。
Favorite song: モス
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